青年とオオカミ
アルファポリスで連載しているものをこちらに載せています。
不定期です。
昔々、あるところに一人の青年がいました。
青年は誰よりも正直で、誰よりも真面目で、誰よりも優しいので、周りの人々は皆青年が大好きでした。
そんなある日、青年は森で一頭の狼を拾いました。
狼は最初、青年を警戒していましたが、献身的な看病を受けるうちに青年を大好きになりました。
やがて、元気になった狼は言いました。
『お前はいつか、すごい人になるだろう。
全てを愛するお前は、きっと多くの者に愛される。
やがてお前は多くの者に望まれる存在になるだろう。
だが、お前はあまりにも弱い。私の爪と牙に掛かれば一瞬で死んでしまうぐらいには。
多くに愛されるお前を良く思わない者も、いつか出てくるだろう。
……いや、お前のことだ。そういう者さえ、おそらく受け入れてしまうだろう?何せお前は優しいからな。
しかし、それでは私も具合が悪い。恩人に死なれては困るし。私はお前が大好きだ。
だから、私はお前に力をやろう。
私の全てを、愛するお前に捧げよう。
これから私の力がお前の子々孫々を守っていく盾になる』
やがて、青年は人々を導く王様になりました。王様は狼の言った通り、全てを愛し、多くの者に愛されるようになりました。
しかし、王様はある日、森の中に消えてしまいました。
人々は驚き慌てましたが、王様はそれから一年ほどして帰ってきました。
王様が帰ってきて、人々は大変喜びました。
そのとき王様の腕の中には、金の瞳の赤子が笑っていましたとさ──。
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