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11話

時間は1日ほど前に遡る。人気のない森林で1人の少女が目を覚ました。

「本当に異世界ってあるんだ」

少女は物珍しげに当たりを見回している。格好はというと真っ白なガウンにやや和弓よりの弓を持っているが矢筒は持っていない。そして何より人と違うのは背後に真っ白な羽が生えている。

「本当に私は天使になったんだ。あのゲームに似ているって本当のことだったんだ。未だになんか信じられない。ステータス」

如月希海

レベル75

年齢 17歳

職業 演奏家

種族 権天使ハミエル

称号 転移者


攻撃 2000

防御 7500

速さ 3500

知力8200

魔力 12000

体力 7500


装備 天界のガウン・梓弓


スキル 聖弓術(精神統一・マルチショット・ドレインアロー)演奏(付与(エンチャント)【演奏記号】・天使の歌(エンジェルソング)


「はーココ最近お世話になってる村の依頼とかで魔物の討伐してるとかなりレベルが上がるし天使の特性で経験値が多く貰えるからな」

今日も依頼で魔物を倒してきた。討伐証明部位と魔石を持って帰る。最初は戸惑ってたが今では慣れた手つきである。村に戻ると村人たちが労って暮れる。村人達は全員が美男美女で長い耳を持っている。俗にゆうエルフという種族である。たまたま森林を歩いている時に見つけて色々あってからここに滞在するのを許された。

「村長、依頼の品です」

村長の家のテーブルの上にいくつかの薬草を並べていく。何でも薬品の材料なのだという。

「毎度毎度すまんな。これは報酬の銀貨6枚じゃ」

そう言って袋から銀貨を6枚渡してくれる。

「別にいいんですよ。私もお世話になっているんですから」

「いやいや、ここはしっかりしないとダメなところじゃよ」

そう言って有無を言わさずに渡してきた。何度やってもこの人にはかなわない。今日も1日無事に過ごして村長の家に泊まる。ここに来てからはずっと村長にお世話になりっぱなしだ。その後村長の奥さんと娘さんと一緒に夕食を食べた。娘さんも私に懐いてきてくれてとても可愛い。


次の日起きると朝からいつもと何かが違う感じがした。何か不吉なことが起こりそうな感じがする。ただの女の感だが元の世界では的中りつ高かったから多分当たるだろう。元の世界の友達程の精度は無いけどなんだかんだ当たってたからな。いつものように村長の家で朝食を食べる。用意する時に村長の娘さんがお茶碗を割ってしまった。やはり演技が悪い。今日の狩りは慎重にした方がいいかもな。

「村長、行ってきます」

今回はエルフの人と一緒に入る。

「いやー、嬉しいです。なんと行っても如月さんとご一緒出来るとは、友達に今度自慢したいですよ!」

一緒に行くのはエルフの青年で村でも片手の指に入るほどの実力者だという。その後世間話をしながらも辺りに変な気配がしないか確かめながら歩く。今のところ特に何も無い。気配が分かる範囲では魔物ではなく動物しかいない。しかしそれはかなり異常だ。ここまで全く魔物に遭遇していない。いつもなら十回はエンカウントする。

「なんか薄気味悪いすっね。一切魔物に会いませんよ」

エルフの青年も気づいたらしくよりいっそう緊張がはしる。

その後も歩き進めると異常な程魔物に出会い始める。多種多様な魔物と次々に 遭遇していく。ゴブリンにコボルトにオークと3、4匹ずつ遭遇する。難なく弓や剣などで討伐してるが少し怪しい。

「本当に気味が悪いですね。もう少し進んでみましょうか」

「分かりました。俺もついて行きますよ」

更に進むと少しずつ地鳴りがし始めた。そしてかなりの数の魔物がこちらに向かっている。数は500はいそうだ。

「君、今から急いで村にこの事を伝えてくれ。私はここで時間を稼ぐ」

「で、でもそれでは...」

青年の言葉を申し訳ないが途中で遮り

「君は村を救いたくないのか。この事を誰かに伝えないと手遅れになるぞ。急いで!」

やはり今朝のあれは予想通りだったか。

この武器でよかった。これじゃないと矢が尽きて戦えなくなる。ゲーム時代の仲間が作ってくれた弓で魔力を矢にする。しかも1発1発はそこまで魔力を使わない便利アイテムだ。

前に迫ってくるゴブリン軍団をマルチショットで複数体同時に倒す。イメージ的には拡散弾に近い感じである。そのため1発の威力は低めである。しかし弓ではあまり大軍を倒すのには向いていない。少しずつ後退しながら数を削る。残り数体になって来たところでオーガが出てきた。オーガは鬼のような種族で硬い皮膚とその巨体から繰り出されるパワーが厄介だ。魔力の弓ではあまりつき刺さらない。

付与(エンチャント)アクセント」

アクセントを付与することで次の一撃の威力が跳ね上がる。付与した状態でオーガの顔面を射ると頭が爆散した。同じようにオーガを倒していく。ようやくすべての魔物を倒しきった。しかしすべての魔物を倒すと空中に亀裂が走り中から更に魔物が現れて来る。数は2000程だ。

「さっきまでの4倍か...仕方ないあの子達のために頑張るしかないか」

村の子供たちの笑顔を守るために。

先程より魔物のレベルが上がったように感じる。連携をとり始めて動きが早くなっている。そこにエルフの村から数人が走ってきた。

「水の精霊さんお願い。アクアジャベリン」

「雷の精霊さんお願い。サンダーアロー」

「風の精霊さんお願い。ウィンドカッター」

「火の精霊さんお願い。フレイムバレット」

「闇の精霊さんお願い。ダークボール」

村のそれぞれの精霊魔法の使い手が応援に来てくれた。

「大丈夫ですか?」

「応援に来ました」

「ありがとう。みんな今から付与するから。付与アレグロ」

アレグロは一時的に速さを上げる効果がある。これでだいぶ戦いやすくなった。本当は楽器を使うが今はないので贅沢は言えないから声で付与をする。

お陰でかなりの数の魔物が減った。

「魔物が減ったみたいだからみんなで分散して殲滅戦に移ろう」

「「「「「分かりました」」」」」

それぞればらけてすべての魔物を駆逐していく。すべての魔物を倒し終えようとした時にさらに大きな亀裂が空に浮かんだ。そこからは大型のモンスターとその配下らしきものたちが出てくる。その数約5000体。

「もう魔力なんてないのに」

「あぁ終わりだ。どうしようもない」

「みんな早く逃げて私が少しでも時間を稼ぐから避難先に逃げてみんなが逃げたら私も行くから」

5人が走って行くのを見届けてから改めて魔物を見る。ゴブリンエンペラーにコボルト将軍、オークキング、ギガントオーガなどの上位種もいる。

「私の2度目の人生(天生?)もここまでかな?」

ふと頭をよぎる元の世界の思い出。

「諦めなければ大抵のことは何とか出来るさ。全部騙して誤魔化せば何とかなるもんだよ」と笑いながらいつもすれすれのところで生きてた友達がいたな。この世界には居ないかもしれないが頑張るのも粋なもんだろ。

「付与フォルティッシモ。天使の歌」

天使の歌は1日に1回しか使えないが体力と魔力を全回復して一定時間体力を回復してくれる。フォルティッシモはすべてのステータスを1.5倍にするが効果が切れると動けなくなるリスキーなものである。

「これで決めなきゃ」

襲ってくる魔物たちを弓で射抜きながら進む。スキルを併用しながら倒すが数が多すぎて少しずつ被弾が増えていく。付与の効果も残り僅かで切れてしまう。まだ1000体も倒していない。今目の前のゴブリンを倒した。そこで膝が崩れ落ちる。どんなに立とうとしても足に力が入らない。

「もうダメなのかな?」

すると茂みの方が揺れる。そこからオークが三匹出てくる。こちらに気づき少しずつ歩いてくる。動けないと分かったのか、舐めるようにこちらを見てくる。あまりにも気持ち悪すぎてその1匹の目に最後の力を振り絞って矢を突き刺す。そのオークは痛みに悶えていたが起こったのか手に持った斧を振り上げて殺そうとしてくる。少しずつ自分の目から涙が溢れてくる。

「ま、まだ死にたくないよ。もっとこっちでもいろんなやりたいことあったのに。こんな死に方嫌だよ。だ、誰か助けてよ」

叫んだって誰も来ないだろう。こんな森の中に助けが来るはずがない。オークの斧が振り下ろされると同時に目をつぶる。

しかしいつまで経っても衝撃が来ない。恐る恐る目を開くとそこにはオークの斧を素手で止めながら笑ってる人がいた。

「久しぶりだな、希海。ほら、何とかなっただろ」

ニヤニヤと笑いかけるその顔は元の世界でもよく見た顔だった。

「陽くん。どうしてここに?」

「まぁ成り行きだよ。いつものように主人公補正があっただけだよ」

そう言って背中に背負っている鎌を手に取り一閃すると三匹のオークの首が地面に落ちる。

「さぁ、第2ラウンドの始まりかな?」


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