10話
遅くなりすみません。
朝起きるとやはり隣に刹那が寝ていた。よく眠っているようで起こすのはしのびなかったので先に降りて食堂で待つことにする。いつもの黒づくめの格好で足音に気をつけながら降りていく。冒険者は朝早くから行動を開始する。朝イチの冒険者ギルドは殺伐とする。なぜなら良い依頼からどんどん無くなって仕舞うので冒険者からしたらとても死活問題なのである。しばらくしてから、ようやく刹那が食堂に降りてきた。
「陽早かったね。結構待たせちゃった?」
「全然さっき起きたところだし全く待ってないから気にしなくて良いよ」
今日はパンとスープのセットが朝食だった。それを2人でゆっくり食べてからギルドに向かった。
ギルドの中は少し時間が遅いため今日は休みにする人や寝坊した人がちらほらいるぐらいだった。ギルドで掲示板に貼られている余ったものでもやろうと刹那と一緒に移動した。やはり少し時間が遅いため残っているのは常時依頼のものと街の中で初心者がやる雑用だけだった。
「陽くんに刹那ちゃんちょっと良いかな?」
僕達を読んだのはリースさんだった。刹那と顔を見合わせてからリースさんの方に行く。
「どうしたんですか?何か僕達にご用でしょうか?」
特に呼ばれる心当たりがないので素直に聞いてみる。刹那を見ても特に心当たりは無さそうだ。
「この辺境の街の周りには森林が広がってるのは陽くん分かるよね?でそこで出てくる時に襲われてる女の子を助けたの覚えてる?」
俺はそう言われて一旦記憶を探る。.....確かに来る途中に女の子を助けたな。
「ハイ、助けましたがその子がどうかしたんですか?」
一瞬リースさんの顔が引きつったように見えたが気のせいだろう。
「その子なんだけど、実はこの辺境の領主さんの娘さんなんだよね。だからお礼がしたいので領主の家まで来ていただきたいとおっしゃってました。」
「分かりました。今から時間があるので行きたいと思うけど刹那良いよね?」
「私は良いけど…...私何もしてないよ?」
刹那はその時まだ封印されていて助けた現場には実際にはいなかったことを気にしているのだろう。
「その事はご安心ください。お連れの人も連れてきて構わないそうです。またダンジョンの件についても話があるのでむしろ来て欲しいと言ってましたよ」
領主様は以外と気配りが上手なようだ。その後リースさんに領主様の屋敷の場所を聴く。幸いそこまで遠くないそうなので刹那と歩いていく。道中少しばかり周りの視線に恐怖が混じっていたのは刹那の昨日の事件のせいだろうな。今日は翌日ということもあってか誰も絡んで来ないのでスムーズに進むことが出来た。屋敷の前では衛兵が立っていたが名前を言うとすぐさま通された。
屋敷は大きかったが周りの町並みと比べてであってそこまで大豪邸という訳ではなかった。リースさんによると豪邸を作るぐらいならこの街が安全になるようにと投資しているらしい。この屋敷も街の人がそれじゃ格好がつかないということで造ったものだという。なかなか印象の良さそうなThe貴族様という感じではないらしい。
屋敷のドアの前で立っているとドアが空き中からメイドさんが迎えにきた。思わずまじまじと眺めてしまった。隣の刹那に脇腹を抓られて元に戻る。横からジト目をされている気がするがしょうがない。こっちに来てから初めてのケモミミだったのだから。
「初めましてこの屋敷のメイド帳を務めさせていただいています、メルンと言います。以後お見知りおきを。黒鷺さんに朱雀さんですね、こちらへどうぞ」
そのまま屋敷に通されて応接室に連れていかれた。そしてお茶を俺たち2人分入れて出ていった。応接室もこれまた華美ではなく質素な感じで領主の人柄が伺える。そのまましばらく待つと遠くからバタバタと慌てた足音がしてきた。そしてガタンとドアが開く。
「遅くなって済まない。この街の領主をしているクラーク・アリシアだ。この度は娘を救って暮れてなおかつ先祖代々手を焼いていていつ爆発するか分からないようなダンジョンを攻略して頂きありがとうございました」
一息に話されてなおかつ目が血走っていてとても怖い。俺も刹那も何も言えず固まって閉まっている。応接室がカオスな状態になってしまい手のつけようがなくなってしまった。するとカチャと音がしたかと思うとスパーンと音がした。そちらをみると今しがた領主の頭を叩いたであろうハリセンらしきものを手に持った女の子が立っている。今更ながら森の出口でこの娘を助けたことを思い出す。
「どうもエミリアです。エミリーとお呼びくださいませ。先程は父が申し訳ありませんでした。感謝のあまり壊れた様です。しばらくすれば元に戻るのでお待ちください」
十分もすれば落ち着きを取り戻したようでようやく場が落ち着いた。
「黒鷺陽です。異世界者で冒険者をやっています」
「朱雀刹那です。私も異世界者で訳あってダンジョンの最奥に封印されてました」
2人の顔が封印されていたと聞いて少しばかり顔が引きったのが分かった。
「でも安心してください。昔は勇者と呼ばれていましたから」
更にダメ押しの一言でまた静まっていた場が慌ただしくなってしまった。
閑話休題
「改めましてこの度は多くのことについて感謝しています。褒美としてなにか与えたいのですが、何せかなりのものとなるので少々お待ちいただきたいのですが…...」
「別に僕達は褒美が欲しくてそんなことをした訳ではないのでその分は街の発展にでも回してください」
「しかしそれでは...」
なおも渋る領主刹那も
「ほら当事者がこう言ってるから気にしなくていいんですよ。この街への投資ですから」
その後も少し悩んでいたが諦めて褒美はなくなった。そろそろ領主の館を出ようとした時にいきなり兵士が走って応接室に飛び込んできた。
「どうした、そんなに慌てて」
兵士は息も絶え絶えに報告をおこなう。
「北の森林で魔物の大氾濫が起きました。後十数分後にエルフの村に到着予定です。現在ギルドにて冒険者を編成中ですが間に合いそうにありません」
その報告を聞いたクラークさんは頭を抱えた後すぐにこちらを見た。
「すまぬが大氾濫をどうにか出来ぬか?勝手とは思うがエルフの村を救って欲しい」
「いいですよ。では刹那と行ってきます」
「ほら早く行こう陽。どっちが先に着くか勝負ね」
言うとすぐにかドアを開けて飛び出ていった。相変わらずそそっかしいやつだ。まぁ勝負には負けたくないから新しいスキルを使おうかな。
「影渡り」
影を入口として入りその後遠くまで行くことのできるスキルでかなり速く移動することが出来る。




