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ゲーム世界に召喚された俺は、闇堕ちして魔王をはじめました  作者: ひしゃまる
第一章 魔王、新生
5/22

魔法

魔王城を取り囲む《ベランガリアの森》をいく。

南洋の植物みたいのがうねるように繁茂するそこは、不気味なジャングルである。


空では太陽が燦々と輝いているのか森の中は蒸し暑く、噴き出した汗でインナーが肌にはりついて、不快だった。

アーリュを肩に担いで馬で走っていると、親指ほどもある羽虫の群れが、顔にぶつかってくる。


木々の上からはやっぱり巨大な山ヒルがボトボトと落ちてきて、「ぎゃー」とか「やぁー」とか「ひーん」とか、不運なる姫君は、悲鳴を上げっぱなしだった。


確信する。

やはりこれは、ゲームじゃない。


少なくとも、プレイヤーの射幸心を煽るためにつくられた、仮想世界ではない。


ジタバタともがくアーリュの身体から伝わってくる体温、流れる汗、ヒルが落ちた首筋に浮かぶ、エグいほどの赤い血。


出会った時は感動した少女の生の温もりも、こう暑苦しい環境ではありがたみの欠片も感じられない。


おまけに、暴れる。


バカだの誘拐魔だのエロエルフだのと、やかましく叫び続ける。


「うるせぇ」


「だったらおうちにかえしてよもーっ」

「そういうわけにはいかん」

「鬼畜ーっ! 鬼ーっ! 悪魔ーっ!」


いや、魔王だし……。


なんか黙らせるものはないだろうか? 手綱を握る手で、俺はスマートフォンを操作する。


「あ、ながら見の乗馬はいけないのよ! 王国の法律で裁かれるんだから」


なんだその法律。


「俺はもう魔王だからな。国の法律を守ってなどいられん」


大体、「ながら見」のなにがいけないというのか。

アニメを見ながらゲーム三本と読書を並行してやれる俺には、まったく理解ができない。

俺は再び自分のステータス画面を開いた。

おぼえている魔法とスキルを表示する。


スキル

【サーチ】

【ホーミング】

【魔法耐性 大】

【物理耐性 大】

【ブレインウォッシュ Lv.1】


魔法

【サイレント】【パワーチャージ】【ガードアップ】【ライトヒール】【ルミナス】【ダークネス】【ファイヤ】【ブリザード】【サンダー】【ストーン】【ウインド】【パラライズ】【デス】【スリブル】【ポイズン】【フレア】



「ほぅ……」

ジョブレベル0の状態で、すべての属性の初期魔法を扱えるのか。


なかなかにチートですよ、職業【魔王】


「サイレント」

俺は、魔法封じの効果を持つ、相手の言葉を封じる呪文を唱えてみた。

指先から放たれた光が、肩に担いだアーリュの身体を包みこむ。


「はむぐーっ」


お、どうやら成功したらしい。


「んーっ! んーっ!」


言葉を発することのできなくなったアーリュは、俺の肩でジタバタともがいていたが、それもつかれたようで、ぐったりした。


「静かにするなら、解いてやる」


こくこく。

素直に首を縦にふる。

「よし、サイレント解除」


しょわわわーんと、光がアーリュを包みこんだ。

「ギャー助けてーっ! さらわれるーっ! 犯されるーっ!」


「サイレント」


「んーっ!」

まったく、アホの子はかわいいな。こんなところで助けを呼んでも誰も来ないだろうに。


ぽんぽんと頭をあやすようになでてやると、ヒルに噛まれた首筋の傷痕が目についた。

赤々とした血が滲んでいて、なんとも痛々しい。


「ライトヒール」


呪文を唱えると、再び俺の手のひらから、あたたかみのある光が発して、アーリュの首の傷を照らした。

血はみるみるうちにかたまり、傷口はかさぶたができてふさがって、そのかさぶたも、すぐに見えなくなってしまう。

ライトヒールは、治癒力を高める系の回復魔法だったんだな。



「は、はひはほ」


ありがと、といっているのだろうが、ここはちょっと意地悪をすることにする。

「なんていってるのかわからん」

「んーっ」

ぽかぽかっ。

ハッハッハ、痛くも痒くもないね。


とりあえず、魔法の使い方はわかった。


次はスキルを試してみようか。

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