チホの学園生活
私がチホとして勇者召喚されてから一ヶ月が経った。私は東堂、じゃなくてレンヤくんが王城を出て行ってしまった事を今でも気にしている。シオリちゃんも時折りボーッとしている事が増えたように思う。
だが、他の人たちはまるでそんな奴いなかった、と扱うような態度だ。カイくんなんかもよくレンヤくんと話していたのにむしろ喜んでいるように見える。
私たちは召喚されてから一週間くらいで戦い方を学ぶために学園に入学させられた。みんな、自分が勇者なのをいい事に気に入らないことがあれば徹底的に潰すのだ。貴族たちは自分たちの命運をかける存在を否定するわけにもいかず、むしろ保護している。
私はそんな学園生活に、そして何もできない私に悲しい思いしかない。唯一私と同じに思えるシオリちゃんにだけ相談したりしている。シオリちゃんも同じことを考えているようでお互いに支え合っている状態だ。
学園に通い始めて3週間とちょっと経った日、次の週に闘技大会があると担任から報告された。私は回復職だからケガ人の治療を担当し、大会に参加はしない。シオリちゃんは武術系統のトーナメントに出場できるらしい。
闘技大会は学園外からも20歳未満なら参加できるらしい。私はシオリちゃんと勇者の鼻を折ってくれる人が現れればいいねという話をしていた。
それから数日経ち、翌日に闘技大会を控えた日の事だ。私とシオリちゃんは希望を見出した。それは朝の週一である全校集会での学園長の話だ。
「みんなこの学校に元からいた生徒は勇者の入学に戸惑っただろう。勇者は着実に力をつけているだろう。恐らく元々いた生徒では叶わないほどに。しかし、明日から闘技大会がある。この大会には腕に覚えのある同世代の子が来るだろう。そこで自分たちの力を試すのも良いだろう。日頃負けているからひと泡吹かせるというのもいいだろう。精一杯やりなさい。ところで、闘技大会では賭けが行われるのは知っているだろうか?」
今まで退屈そうに聞いてたクラスメイトたちはこの言葉に興味を持ち始めた。私やシオリちゃんなど何人かは無反応だが。
「そして、ワシが誰に賭けたか教えてやろう。」
これには元々いた生徒たちも驚いている。勇者たちはやっぱり俺でしょ?みたいな視線を送っている。
「ワシが賭けたのは全系統のトーナメントにとある冒険者に賭けた。流石に名前は教えられんが十分じゃろう?」
学園長がそう言うとクラスメイトたちは何言ってんだと少しイラついているようだ。
私はシオリちゃんともしかしたらと胸を膨らませていた。