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大学入学準備や引っ越しの準備で遅れていまいました。

なんとか週一更新ペースを継続したいと思います。




訂正しました。

「ここまで酷いとは思っていなかった。社会主義思想を多く労働者階級の若者がもっているのも不思議ではないな。」


藤伊は新聞を見て独り言をボソボソ言っていた。


新聞には農民の借金が増加していること、多くの若者達が政府の批判集会や演説会に参加していること、財政難であるのに軍部が軍拡予算を増加しようとしていることなど政府が国民に対して何も対策しず、派閥争いばかりをしている批判の記事が大半だった。


特に今の日本が財政難の理由は政府が無能であったからだ、と遠回しに一番最後に書いてあった。


横須賀から新橋に向かう汽車の中読んでいた新聞紙を空いている隣の窓側席に置き、腕を組み、目を瞑って、今の状況を分析し始めた。


【新聞に書いてあることが全て正しくはないが8割ほど正しい。今の内閣(第二次桂太郎内閣1908年7月14日~)は日本国家の視点で見ると良い人(韓国併合、大逆事件による社会主義者弾圧、関税自主権の回復による不平等条約改正の業績を残す)、国民の視点で見ると悪い人(国民のためになる政策を行わない)になるからなあ。

俺は他人から見れば桂太郎首相を嫌ってる国民側の人間かな。だって彼は元陸軍将校で陸軍優先に予算を組むからだよ。日本は島国だぞ。普通に考えて海軍優先に予算を組むだろう。】

 

【日露戦争に勝利し、領土が増えたけど、借金も増えた。ホントに戦争して得したのは主に軍部だよな。経済界はソロバン勘定が合わないから元々乗り気ではなかったし…。なんか、軍隊の発言力強化のため戦争だったみたい。】


日露戦争で日本が必要とした戦費のほとんどを外貨に頼っていた。外国への戦費により発生した借金返済を政府は今行っている。戦争後のポーツマス条約でロシアから賠償金を得られたなら日本政府が財政難に陥ることは無かっただろう。


国民には戦時中の増税をし、男性たちを軍隊に徴兵していた。国民はロシアとの戦争中政府がむちゃくちゃな要求をしても皆で耐えた。


理由は、、(国家存亡の危機である)、、であると国民に政府が宣伝していた。それと日清戦争に勝利し下関条約で得た遼東半島をロシアが主となり、フランス、ドイツと共に清国に遼東半島を返還させられた事件(三国干渉)で国民の対露感情が悪化したことも関係する。


国民のほとんど(労働者階級達、貧しい農民達)が、、(ロシアに勝利すれば賠償金が手に入り生活が豊かになる)、、と思っていた。ポーツマス条約では賠償金が手に入らなかった。国民に、、(自分たち暮らしが豊かになる望みが消えた)、、という考えが浮かぶだろう。よって政府に大きな不満を持つようになる。


今の状態である。ロシアから入ってきた社会主義思想(皆平等である)に多くの労働者階級の若者達が興味を持ってしまうことは避けられない。なぜなら、彼らは親の失敗(政府に期待すること)を見て、今の大日本帝国政府に失望しているからである。


「あんたは社会主義の考えを持っていないのか。」


男性は藤伊に興味があるような様子で話しかけてきた。


藤伊の斜め左前の窓側に座る中年サラリーマン姿の男性に声を掛けられたことに藤伊は驚いていた。


藤伊の客車は座席がボックスシートタイプ(向い合せの座席)であるため、藤伊が読んでいた新聞の内容も中年サラリーマン姿の男性が見ることができるし、独り言を聞くこともできること知っていたがまさか話しかけられると思ってもいなかったからだ。


「興味はないよ。」

 

【こいつ俺のことを観察してたのか。趣味悪いな。】


藤伊は話しかけて来た男性を観察し、彼が社会主義関係の組織に関わっていると判断して、関わらないように葉を選んで話した。


なぜなら、1910年5月の大逆事件(明治天皇暗殺を計画した理由で各地の多数の社会主義者、無政府主義者が検挙された。


翌年1月に26名の被告が処刑その他の重い刑に課せられた事件)の影響で、その後社会主義者、無政府主義者達の勢力が著しく減少しているのに今現在(1912年6月)社会主義組織、無政府主義組織に所属している連中は危険性が高い人物であるからだ。


「一度この本を読ん見ないか。」


「自分はただ社会主義思想に興味がないだけです。」


【こいつ、俺が横須賀から乗いるの知らないのか。普通に考えて横須賀から乗っているなら海軍関係者だろ。あ、そうか。俺は途中の駅で汽車を乗り換えた。それで俺が海軍関係者でないと考えて話しかけたのか。もっと注意しろよ。俺が私服を着ている海軍関係者だと思わないのか。】


本当にその話題に興味がないように言い、藤伊は隣の席に置いた新聞紙を取って再び読み始めた。


軍人が軍服を着て歩くことは普通であるため、軍服を着て歩かないのはラフな格好が好きな藤伊ぐらいであった。


多くの軍人達が軍服を着るのは、、(自分は命を懸けて大日本帝国を守っている。だから自分は偉いのだ。国民達よ、軍人を尊敬しなさい、、)みたいな自己アピールのためである。軍隊組織の高官になるとこの自己アピールがますます強くなって私利私欲的な行動しかできなるパターンが多くなってしまう。







その頃、海軍省のある会議室で斎藤実海軍大臣、海軍人事局局長土屋保海軍少将、海軍艦政本部長松本和海軍中将、海軍軍令部長伊集院五郎海軍大将の海軍上層部と海軍大佐、海軍中佐ら合計14人で今後の方針について話し合いが行われていた。


「だから、何度も繰り返し言っておるだろうが。六・六艦隊計画の継続予算を組むべきだ。」


松本和海軍中将が怒鳴るようにして言った。斎藤実海軍大臣がそもそもこの計画(六・六艦隊計画)に賛成であったため年下である松本中将は大きな態度を取れたのだ。


六・六艦隊計画の継続予算を組むことに賛成である者は、斎藤実海軍大臣、海軍艦政本部長松本和海軍中将であった。逆に反対である者は海軍軍令部長伊集院五郎海軍大将、海軍人事局局長土屋保海軍少将であった。


賛成側の理由としては、、(海軍の軍拡をこの日本海海戦(東郷平八郎海軍大将率いる日本の連合艦隊がロシアバルチック艦隊を破った戦い)の勝利で地位が上昇している今やらなければ、無期限延長になってしまうかもしれないと恐れていた)、、からである。


反対側は、、(海軍予算が不足しているのは日本自体の財政難の影響であるため。そのため莫大な資金を使用する計画を見直す必要がある)、、という理由だ。


「仮想敵国であるロシアがいなくなったのになぜ軍拡をする必要があるのだ。今は内閣に歩調を合わせる時ではないのか。」


土屋は短期で精神論の考えをもつ松本を説得することに嫌気が指しながらと思っていたも表情に出さずにいた。


「仮想敵国はアメリカだ。あの国はいつの日か我が国に侵攻してくるに違いない。それともう一つ日本の海軍力を世界の国々にアピールが出来るため我らも列強の一員として世界から見られることだ。そんな事も考えられんのですか、少将殿。」


この会議でまだ一度も意見を言ってない土屋に松本は反論されたので土屋を睨み付けた。


土屋が海軍上層部の中で高評価のことに大きな不満を松本が持っていることに気づいていたため斎藤海軍大臣は松本の土屋に対する態度の悪さをスルーした。


「儂を追い抜くことができたから調子に乗っておると今川義元のようになるぞ。」


土屋は笑みを浮かべながら松本に言った。


「少将の身分で上官の中将に口答えするな。それに織田信長が海軍内部にいるとは思えない。なんせ部下達は上官に媚びを売って取り入ってもらうことに必死だろうからな。自分も昔同じようなことをやったからな。あなたもやっていたでしょ?」


土屋の意見をはっきり否定するように松本は言い、右横に座る斎藤に目で、、(土屋を退場させてください)、、と訴えた。


「土屋少将、松本中将。冷静になってくれ。それに二人とも言い過ぎだ。だが、今川義元とは少し度が過ぎると思うよ、土屋少将。少し頭を冷やしてきたらどうだ。決定事項は追って報告する。」


斎藤は土屋が目障りになってきたため彼に言った。周りに味方がいないことを悟って会議室を土屋は出た。


「海軍に織田信長はいないかもしれないが智将竹中半兵衛はおるよ。」


人事局に向かいながら誰もいない廊下でポツリと呟いた。




 


「藤伊、何か素晴らしい功績を三年以内出せ。そうしたら将来海軍大将になれぞ」


土屋は松本に一杯喰わせてやりたい気持ちであったため人事局内にいた藤伊を見つけて彼に鬼の顔をして言った。人事局職員たちは、、(しめしめ藤伊大尉の困った顔が見れる)、、と期待していた。


「わかりました。それと海軍上層部に人事局の急な鎮守府同市の技術者交換の説明は大幅に延期されると思っています。自分の予想では早くて一年後かと。」


藤伊はニコニコしながらある大きな茶封筒を渡した。


 「そうか、わかった。」


土屋は藤伊の答えを聞き満足気に頷いた。それ以上何も言わず土屋は藤伊から手渡された大きな茶封筒の中をちょっと見た。中身を見て苦笑いをしながら局長室に入った。





藤伊から手渡された大きな茶封筒の中身にはイギリスのヴィッカースが建造中の大日本帝国海軍の最新艦(金剛型戦艦一番艦、金剛)関係の書類が入っていた。



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