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小さな変化

少しずつ変化していきます。

俺、塩沢、山本、吉田で呉鎮守府の近くの料亭で集まった。


「軍部を抑えていた政界の老人(伊藤博文)が暗殺されていなくなったから、軍部が暴走しそうで怖い。」


「お前もそう思うか、藤伊。儂も暴走はするだろうと思っている。特に陸軍が心配だ。」


【塩沢、結構色々観察してるな。俺も陸軍が特にヤバイこともわかる。だって山県有朋がいるからな。】


彼の経歴見てみると最悪だ。穏健派で政界の老人(伊藤博文)と結構政治的問題で衝突していた。藩閥政治を維持し、政党勢力抑制のために軍部大臣現役武官制の公布。この軍部大臣現役武官制が一番最悪。

 

戦前の日本には陸軍省、海軍省の2つ軍事関係組織があった。省とであるため内閣の国務大臣のメンバーには軍人もしくは元軍人たちが陸軍大臣、海軍大臣になった。元軍人ならどこの政府組織に所属していないため軍隊に有利になるような政策をする必要がないので内閣の政策を妨げようとしない。


でもこの制度の影響で現役の軍人でボス(中将、大将)クラスしか就任することができなくなってしまう。つまり、現役軍人しかなれなくなると陸軍省、海軍省に有利な政策でないと入閣を拒否して内閣を倒そうとしてしまう。


例えば、1912年西園寺公望内閣(政党内閣)に対して軍部大臣現役武官制を利用し軍部大臣の入閣の拒否をして倒してしまう。利用した理由はこの時の内閣が軍備縮小政策を行う予定でいたからだ。軍人たちからすれば、この政策は気に食わない。でも、内閣は軍縮で得た予算を国内のインフラに回そうとしていた。





「皆、あれ見よ。憲兵の奴らだ。まさか吾輩達を見張りに来たのか。吾輩は細心の注意を払って来た。皆も細心の注意を払って来たか。」


「吉田、夏目漱石のファンであることは知ってるがその吾輩って・・・。まあいいや。話を戻そう。憲兵たちの目的は俺らじゃないと思う。今日、呉海軍鎮守府には海軍のお偉いさんが来てるだろう。海軍の動向を探るために陸軍が憲兵は多数派遣したと考えるべきだ。」


【その・・吾輩・・坊主頭の若者が言う台詞じゃない。絶対そうだ。】


実際に藤伊の予想は当たっていた。国民的英雄東郷平八郎海軍大将が政界に出てくることを陸軍は恐れていたのだった。東郷平八郎海軍大将が政界に出てくると陸軍中心の政治ができなくなる危険性がある。そのため今日、呉に訪問に来ている東郷平八郎を監視する必要があった。


「陸軍の子分である憲兵に24時間監視されるのには疲れた。こっちの行動はおかげですべて陸軍に筒抜けだ。でも、今日は監視がいないからいい。好きなこと話せる。おい。ちょっとまて、呉で集まったのは我々から憲兵達を引き離すためか。そうだろう、藤伊。お前が場所と時間を指定したからな。」


山本がポロっと本音を言った。


「正解だよ。憲兵がいない方がいいと思ったからだよ。」


【おおお、山本が気づいた。気づかないと思っていた奴が気づいた。ビックリだ。】


最近になって山本に憲兵隊の監視がついたことを藤伊は知っていた。理由は簡単だ。遊び心で山本に悪戯をしてやろうと後ろからこっそりついて行ったら、なんと藤伊の前に山本の後ろを完全装備の兵士が歩いていたからだ。最初は護衛かと思っていた。しかし、山本を監視している感じ見て、憲兵だと確信していた。







「なあ、藤伊。呉に訪問予定の上官の人数多くないか。お前何か知っているか。」


【それにしてもホントによく観察してるよ。塩沢、お前。そうだよ。俺が関係してるよ。俺の今の配属先は海軍人事局である。そして、海軍人事局局長秘書だ。】


配属されて驚いたことは派閥争いが人事局内で激化していたことだ。藤伊は出勤初日に局内の二大勢力の軍備増強派と軍備縮小派にスカウトされた。理由は藤伊を履歴書で判断するとスーパーエリートになるからである。藤伊が三笠勤務の時に履歴書に細工したからだ。


藤伊は人をバカにしない性格が気に入られて、ただのお飾り状態だった局長の秘書になったのだ。局長の土屋保少将は人事について疎い人。それで藤伊が海軍内の人事について助言しているの状態である。局長も信頼してくているため藤伊がやりたいように人事異動させていた。


一番初めに人事局の職員も使える人材にかえることにした。軍備増強派には精神論バカが多すぎるからだ。軍備増強派たちには本人たちが満足できるポストに変更して追い出した。空席になったポストに現実的な考えができる者を置いた。だから今、人事局内では軍備縮小派と親藤伊派がほとんどであった。


まだ問題児達がいる。軍備縮小派の中で上司たちが曲者だ。ライバルたちがいなくなったから好き勝手に行動するから困り始めていた。軍備増強派たちの上司は艦隊の参謀や艦長、海軍省にポストを手配すると皆さん喜んで承諾してくれた。これからは地道にコツコツと1人ずつ追い出していくしかないのであった


「俺は今、海軍人事局局長秘書。」


【やってることが他人に知られるのも困るし、勤務内容は他人にあまり言いたくない。最低限の情報だけで察してくれるよね。】


塩沢はにやついていた。何かに気付いたみたいだった。





にやけながら塩沢は藤伊を見た。


【まったくとんでもないことをやってるな、藤伊は。今日のこともあいつが仕組んだに違いない。それに儂をいれて5人の周りの部下に精神論バカはいない。】

 

【前から気に入らないと思っていた奴が台湾に左遷された時からずっとおかしいと思っていた。その時藤伊から・・・忙しくなるから手紙を読む時間が不足する。なるべく手紙を返信するから。・・・という手紙がおくられてきたなあ。あの時から動いていたのか。】

 

【大尉で秘書ができるのは局長の土屋保少将の評価が海軍内部で上昇しているためだろう。】


【今のところ人事局に対する不満は聞いたことがないから横槍について今は大丈夫だろう。】


【味方であると頼もし奴だ。儂は絶対、あいつの敵になりたくない。】





 

 


「なあ、皆。俺さ、そろそろ国民が動くと思うぜ。」


【憲兵も山本を探し始める頃だろうか。30分後には見つかる確率が高くなるから、これから起こりそうな事態に備えてもらうために早く言うべきだな。】


栄一がニコニコしながら言った。


「「「どういう意味だ」」」


「Wow!」


【あ、はもった。顔、近いよ。ねえ、ねえ。さらに近づこうとするな。

来るなよ、来ーーーーるーーーーなーーーー。男が3人で俺に近寄って来るな。】


男3人が1人の男に迫っていく光景は第三者からみると異常である。周りからの視線を気にしないで、そんな事ができるのはある意味才能かもしれない。

 

4人が食事しているテーブル席は個室でないため料亭の店員や客も呆然と栄一達をみている。海軍の軍服を着ず、4人共私服のため海軍の評判を落とし兼ねないスキャンダルにはならないことが幸いだった。

 

「順を追って説明するから落ち着け。予想だけどスキャンダル事件の発生により日本政府全体が国民の敵になる可能性が高い。その後、事件により国民感情が爆発。

次に国民の超大規模暴動に発展。武力のみの鎮圧が不可能と気づいたその時の内閣は国民に対して大きな譲歩をしなくてはならなくなる。この意味が分かるか。政府が国民を軽視できなくなる。

藩閥政治が終わって政党政治が始まる。本当の民主主義が開始される可能性が高くなると言うことだ。」


【日本史はよく知らんけど最近の状況みたら国民の暴動が起きそうな感じだよ、今の日本は。国民が暴動を起こすなんていまの日本陸軍の奴らはほとんど考えていないと思う。たぶんこいつらもそんな事は考えてないだろう。堀君や嶋田は自力でなんとか道を摸索して解決できそうだから大丈夫だろう。】


【こいつらは心配だよ。周りに流されやすいから。】


藤伊が忠告する様に言った。


「欧米のような政治体制になるのか。楽しみだ。」


山本の勝手に想像することが始まった。結構大変なものだ。欧米の政治体制はボロがでるとマスコミにすっぱ抜かれて政治生命終了になってしまう。


その時は軍人批判の嵐になるだろう。藤伊の人事局秘書の立場を利用して六人を観戦武官に任命してしまうことにすれば被害がないだろう。


「はぁ。」


【うーーん、護憲運動が発生するのいつだ。発生時期さえしっかりとわかっていたらよかったのに。誰か俺に教えて。】


ため息をついた藤伊の思いがわからんでもない。


【話をしたから3人も一応、備えてくれるだろう。この料亭での集まりである《友と監視の目を欺いて話をする》目的を果たすことができた。】


 



 

 

「さて、帰るか。お、外が騒がしくなってきた。憲兵が探しているかも。」


【憲兵隊もおかしいよね。なぜに海軍大尉である山本に付きまとうのだか。もっと偉い人に付きまとえよ。人員増やし過ぎて海軍大尉までもマークする仕事を与えなければならないほど憲兵がいるのか。そうだったら、予算の使い過ぎだぞ。海軍に回せ。】


栄一は知らなかったが山本が陸軍の不正予算を発見し、陸軍が海軍に譲歩しなければならなかった裏事件があった。史実なら見つからなかった陸軍不正予算も栄一の書類処理能力に関心して、山本自身も努力し書類処理能力が史実より向上していたため発見することができたのだ。


そのため陸軍内部から山本は要注意人物としてマークする必要が生じた。栄一以外の堀、塩沢、吉田、嶋田は、なぜ山本を憲兵が監視しているかを知っていたのだった。皆、栄一が知っているものだと思っていたので、教えなかった。


少し訂正しました

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