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ヒンデンブルクの遺産(1933年1月29日)

ドイツです。

結構、無茶振りがありますがそこはスルーでお願いしたいです。

ネタが無かったので勝手に作りました。


1933年1月29日


「なんだ!この協定は!」


ナチスの党首の書斎でヒトラーが朝刊を握り潰していた。ドイツワイマール政府、日本政府、イタリア政府、ノルウェー政府、スウェーデン政府の5つの国で協定が締結された。フランクフルトを特別自治区にする。ドイツ以外の4ヶ国がフランクフルトに経済支援をして、まずはフランクフルトだけでも経済立て直す。ドイツ経済は、世界恐慌後からとても不安定になり、失業者が日に日に増加していた。


経済支援の対価としてフランクフルトを自治区にする。日本、イタリア、ノルウェー、スウェーデンの役人らで構成される委員会が自治区の行政を監視する。自治区のトップはドイツ人であるから住民感情の問題ないと判断されていた。


「朝刊に掲載されている以上事実です。写真にヒンデンブルク大統領が写されているので、大統領が極秘に進めていた可能性があります。」


ゲッペルスが言った。協定調印する瞬間のヒンデンブルク大統領の写真だった。ゲッペルスは後の宣伝大臣になり、ドイツ国民の心をつかむ男である。ヒトラーの重鎮だ。


「あの、老いぼれめ!さっさと死ねばいいものを!私が首相になったらこの協定を破棄できないか?」


「難しいと考えられます。協定違反になりますと四ヶ国からの軍事介入が行われてしまいます。」


協定違反の場合には邦人保護を名目に軍事介入があるとゲッペルスは考えていた。軍事介入これは避けなければならない。ドイツ軍の軍事能力はひくい。ヴェルサイユ条約で軍備制限があるからだ。兵士の数が少ない。陸軍は10万人ほどだ。日本の陸上自衛隊は約15万人だ。島国でこの数なのに、今の大陸国家のドイツ軍は自国の防衛もままならない。


装備の面にも幾つか問題がある。国の経済立て直しが優先のため軍事予算は少ない。よって旧式の装備が前線の部隊に配備されている。


ドイツ周辺の協定参加国はイタリア、ノルウェー、スウェーデンだけだ。協定違反しても日本軍がわざわざヨーロッパまで出兵してくるとは考えにくい。ノルウェー、スウェーデンは単独で軍事介入する可能性が低い。軍備保有が制限がされていないが第一次世界大戦直前の軍事能力はドイツより劣っていたからだ。それに戦争を嫌う両国の国民が黙っていないだろう。


警戒するべき国はイタリアである。イタリアはムッソリーニが事実上独裁政治を行っている。国民の意見をある程度なら押さえつけることが出来るからだ。イタリアと日本は密接な関係にある。日本の要請を受けて介入してくる可能性も大いにある。


イタリア軍の軍事能力は現在のドイツ軍の数倍以上あることだ。イタリアは戦勝国だ。軍事的な制限はない。五大国であり、世界第五位の陸軍、海軍能力を保有する。貧弱なドイツ海軍ではイタリア海軍の相手にならないだろう。イタリア陸軍は数年前から近代化装備の変更が開始されている為、武器テストなどを考えて軍事介入してくるかもしれない。


「そんなことではない!なぜ、イタリア軍がフランクフルトに駐屯するかだ!」


「詳しくことはわかりませんが、監視強化だと思います。」


「まるで我がドイツの国内に外国が出来たみたいではないか!!」


「ですが、期間は5年間なのでその後取り込めばよいと考えます。」


フランクフルトは5年間のドイツ軍の駐屯禁止でそれにともないイタリア陸軍が駐屯することになった。これは、、(四ヶ国主体でフランクフルト経済立て直しをするからドイツ政府は邪魔するな)、、と言っているものだ。国際社会から協定の評価はよかった。特にフランス政府、イギリス政府が支持した。ドイツの矛先がイタリアに向いたからだ。


イタリア国民からは事実上フランクフルトを植民地と出来たと感じ、ムッソリーニの支持率が上がった。イタリアは石油開発という事業がある為、世界中から資金が集まっていた。石油はこれからに欠かせない資源だ。数年後には莫大な利益を生むからだ。


「我が突撃隊や親衛隊が騒ぎ起こせば、人が抗えない圧倒的な暴力を持つ本物の軍隊が出動する........。フランクフルトが目障り連中の逃げ場となってしまうぞ!」


ヒトラーの私的武装集団の突撃隊、親衛隊はナチスドイツ政府誕生に深く関わった。敵対勢力への暴力的な攻撃を行ってきた。フランクフルトでも彼らは暴力的な活動をしてきた。しかし、今日からは出来ない。武装集団と軍隊。レベルが違う。職業軍人達は国家の命令で動く。イタリア政府は数日前からイタリア国民に敵対する勢力の排除命令を発表している。まるで数日前からフランクフルト自治区の成立を知っている対応だ。


「フランクフルトまでの道に検問所を作って取り締まればよろしいのでは?」


「ダメだ。委員会からの招集要請書を持っていればこちらは手出し出来ない。それに邪魔な男が日本大使館にいるからな!」


邪魔な男。いつも、姑息な手段で表舞台でいろんな意味で名を残した多くの歴史的な人物達の共通の敵。藤伊栄一伯爵。今は駐独大日本帝国全権大使としてドイツ首都ベルリンの日本大使館にいた。


ドイツ海軍上層部に数多くの友人を持つ大日本帝国の重鎮。世界で唯一、近代戦艦の生みの親であるフィッシャー提督の自論、、(速度こそ最大の防御)、、を実行したユトランドの名将、アドミラル土屋の参謀。指一つで一個艦隊を動かせる人物。ドイツ人からの評価は様々だった。纏めると藤伊栄一伯爵になんらかの問題が発生すると世界第三位の海軍保有国家の艦隊が攻めてくる。ただ、これだけだった。


フランクフルトの委員会からの招集要請書を保持している事は四ヶ国政府の保護対象に選ばれたことだ。委員会から意見を求められている。一ヶ月以内にフランクフルトへ来る事が義務付けられていた。四ヶ国政府の保護対象に手を出してイタリア陸軍に対応する実力は今のドイツ政府にない。招集要請書は一種のビザとされていた。


「今は耐える時です。」


「そうか........。」


ヒトラーは鉤十字の旗を見ていた。











「ご決断ありがとうございます。」


「ああ、決断しないトップはクズだからな。」


ドイツ大統領室に二人の男がいた。ドイツワイマール共和国大統領パウル・フォン・ヒンデンブルク。駐独大日本帝国全権大使藤伊栄一伯爵。タンネンベルクの戦いで劣勢にもかかわらず、ロシア軍を追い払った英雄ヒンデンブルクは大統領と言う肩書きの存在になっていた。1日のうち寝たきり状態が半分以上になってしまうほど健康状態が悪化していた。ヒトラーが大統領になる事を阻止する為に大統領の席を確保しているだけだ。政治は側近達に任せきりだった。


ヒンデンブルクは大統領だ。ワイマール憲法では大統領が皇帝の様な存在として書かれている。だから、大統領の命令は首相よりも上だ。そして、1933年1月29日はドイツ首相がいない。昨日に総辞職したからだ。明日、ヒトラー内閣が誕生する。


だから、協定締結を29日にしたのだ。ヒンデンブルクはヒトラーやナチスを毛嫌いしている。世論は彼と反対にヒトラーを支持し始めている。1920年代のヒンデンブルクは保守派の象徴的な存在だった。共和国派からはあまり好かれていなかった。ヒンデンブルクは穏健な行動しかしなかった。1930年以降では保守派の支持が失われつつあったが、共和国派からの支持率が上がったので2回目の大統領選挙でも対抗馬のヒトラーに勝利する事が出来た。彼自身は共和国派から支持されている事を好ましく思っていなかった。


側近達からヒトラーを首相に指名するように説得された。ヒンデンブルクは正常な判断が出来る状態から遠のいていた。側近からの説得される事に疲れてしまったのかもしれない。結局、ヒトラー内閣の許可してしまう。


「儂の周りには信用できる者がとても少ない。皆は忘れておる。儂は大統領だ。」


「ええ、この協定締結はドイツの闇から守る砦となるでしょうね。」


「お前が予想する10年後未来のドイツの話。妙に説得力があった。本物の天才とは何十年先の未来が見えているのか........。」


ヒンデンブルクはそう言って藤伊に視線を移した。何かを訴えている目だった。


「お約束は守ります。」


「当たり前だ。その条件があるからお前が望む協定を締結したのだ。」


条文には書かれていない約束があった。藤伊栄一伯爵とヒンデンブルク大統領の口約束である。藤伊栄一伯爵の嫡男藤伊幸一の妻はドイツ人女性がなる。ヒンデンブルクが望んだ条件だ。どちらにせよ、ドイツ陸軍元帥になったヒンデンブルクはドイツが戦争の回避する方法を持ち合わせていないことに気づいていた。


戦争の指導者にヒトラーがなる事をヒンデンブルクは認めている。一党独裁体制の方が戦争では良いと考えていた。一党独裁体制が破滅に向かってしまう事も感じていた。強力なストッパーが必要。フランクフルトを提供するだけでは足りない。軍事面は対抗出来るかもしれない。


各国の経済界に太いパイプを持つ藤伊伯爵家は味方陣営に引き込みたい。だから、次期当主藤伊幸一の妻のポジションにドイツ人女性がなれば、敵対勢力にならないだろう。一般階級の女性が藤伊伯爵夫人になれるとは思っていない。名門貴族令嬢、資産家令嬢、経済界の大物の令嬢などがなると思っている。


金持ち嫌いのヒトラーが彼らと衝突する可能性は高い。その為、彼らには日本海軍と繋がりが深いドイツ海軍へ協定する様に促そうと考えていた。理由が無ければ、海軍への協定はあり得ない。だから、理由をつくったのだ。


ドイツ海軍へ協力すれば、日本海軍とのパイプがつくれる


日本海軍の一部の将校、士官は異質であった。日本海軍で一番資産を保有していると言われる藤伊伯爵家当主の藤伊栄一海軍中将。欧米で暮らしても富裕層言われる、古賀峯一少将、角田覚治大佐、宇垣纏大佐、藤本喜久雄中佐、山口多聞少佐。


藤伊達の息子達の妻の座になれば、自らの権益を守れるかもしれない。ドイツ政府が海軍国家大日本帝国の海軍軍人と繋がりのある者たちに強引な対応が出来ないだろう。


「まあ、息子の幸一が同意しなければ、伯爵夫人にはなれないと思います。」


「お前の息子は日本の女性との距離感がわからんと思う。欧州で幼い頃を過ごせば、必然的に好みの女性がゲルマン民族の女性となるだろう。」


藤伊の指摘をあっさりと否定するヒンデンブルクも中々、いい根性している。


「ゲルマン民族の女性ですか........。」


「そうだ。ドイツ人からゲルマン民族に許容範囲を広げたのだ。ふん。嘘だ。ドイツ人女性でいい。心配はしていない。お前の息子は我が国の幼い女の子達からも大人気になると思う。」


「はぁ。コロコロ変わりますね。」


「死に行く老人の戯言だと思ってくればよい。疲れたからもう寝るぞ。我が国の中継ぎは任せた。」


これからの15年間は激動の時代となる。ヒンデンブルクのいるベットの前に立つ男が世界引っ張る。この男が敷いたレールに世界が乗り始めていることに気づいているのが自分でよかったとヒンデンブルクは思っていた。この男の息子は見た事がない。だが、未来を見通す頭脳は受け継がれているだろう。


15年間の激動の時代が終わったまでの中継ぎ。ヒンデンブルクはそう思っていたのだ。日本とドイツが乗り越えれば、潜在的な力がありながら使えない体制を構築した世界が崩壊する。日本とドイツがさらなる飛躍が出来る時代を迎える為には、藤伊の力がいると思っていた。藤伊は次の時代への中継ぎだと位置づけられている。


「わかっています。」


ヒンデンブルクは藤伊の返事を聞いて満足な様子だった。肩の荷が下りた顔色だった。だが、彼の遺産がこれから大きな影響を与える。彼はヒンデンブルク陸軍元帥として名が残るでなく、ヒンデンブルク大統領して後世で知られるようになる。


ナチスドイツ政権の暴走をギリギリ押し留め、ドイツ民主主義に導いた功績として。


21世紀のフランクフルト市にヒンデンブルクの銅像が立っていることをこの時代の人間は誰も知らない。







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