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社会主義国家(1918年6月20日)

更新です!


塹壕戦は、長いのでカットしました。すいません。



1918年6月20日


「革命なんて終わってみれば、随分呆気ないものだった。」


「何が終わってみればだ。最初から予想できたお前が言う台詞か?」


陸軍少佐で特別在仏武官の永田鉄山が言った。相沢事件で犠牲となる人物だ。


「わが国が、旧ロシア帝国領北樺太を占領する噂が国内で囁かれていたことは、知っていたが......。まさか、本当だとは思わなかったぞ。」


「マジかよ。噂になっていたのか......。」


藤伊は、ため息を吐いた。海軍では、徹底的な体制の下で北樺太侵攻作戦が管理されていた。珍しく、東郷元帥が、この作戦に反対せず中立の立場をとった。


これにより、海軍上層部の潜在的な作戦反対者も中立となり、作戦賛同者だけで詳細な作戦内容が、考えられたからだ。


「ああ、皇族や貴族出身の陸軍軍人が、新聞社に漏らしたらしい。政府は、作戦自体がないと対応していたぞ。」


永田は、大戦初期からフランスに滞在していたから国内の大体の情報しかわかっていなかった。


「レーニンと言う人物中心の社会主義国家がロシアに出来るとは、すごいな。みんな平等な社会を理想としているのだろう。日本でも、社会主義者の取り締まりを行う必要があるな。」


「そうだね。でも、革命なんてやっても貧乏人が裕福になれるとは、限らないよ。」


藤伊は、パリのエッフェル塔を見ながら言った。1789年に発生したフランス革命でさえ、裕福になった貧困層は、ごく僅かだった。結局、革命を指導した者が裕福になるだけである、と藤伊は考えていた。


「革命の街パリでその発言は止めておけ。」


永田は、周りを気にしながら言った。二人は、フランスの首都パリにいた。


口うるさい日本の観戦武官を連合国前線司令官達が嫌ったからだ。


「わかったよ。」


「そうそう、北樺太に侵攻する時、海軍陸戦隊を別地点から上陸させたんだろう。戦果は、どうだった?」


海軍陸戦隊を別地点から上陸させることは、陸軍にも知らされていた。


「上手くいったよ。艦砲射撃の嵐の後に上陸したからな。」


扶桑型戦艦2番艦山城、伊勢型戦艦1番艦伊勢による艦砲射撃の後に海軍陸戦隊が上陸した。上陸地点の敵は、壊滅的な被害を被っていたので、少ない被害で上陸地点占領出来た。


「私が偉くなり、海軍の支援を要請したら、藤伊は、支援してくれるか?」


永田は、恐る恐る聞いた。陸軍と海軍は、頗る仲が悪い。


「はぁー、友の頼みなら聞くのが当然だろう。信頼出来る奴の部隊を送ってやるさ。」


藤伊は、当然のように言った。陸軍と海軍の協力がなければ、第二次世界大戦に勝利出来ないからだ。


「ありがとう。」


永田は、ホッとした顔をした。藤伊がすぐに返答したためだ。










「年功序列制度の見直しを本当に行うのですか?」


山本五十六少佐は、不思議そうに言った。


「行うべきであろう。北樺太侵攻作戦で浮き彫りとなった問題だ。海軍高官たちを海上から、観戦させるべきではなかったな。」


東郷平八郎海軍元帥が、不満気に言った。北樺太侵攻作戦の海軍前線部隊海軍特別陸戦隊の指揮官は、海軍少将だった。


海軍少将が、指揮官に選ばれたのは、年配の中将、大将たちが、前線で指揮を執ることが体力的に難しいと判断されたからだ。


これにより、後方で何もせず、金剛型巡洋戦艦4番艦霧島にいる海軍中将と大将たちが、個々に命令していた。


指揮官の海軍少将も様々な命令により混乱し、予定侵攻時間が大幅に遅れた。


この作戦後から、東郷元帥は、命令系統混乱防止のため海軍大将を連合艦隊司令長官、軍令部長のみとする考えに賛同していた。


アメリカ海軍も似たような命令系統であったので、多くの兵達も理解できた。反対派も英雄東郷元帥が積極的に推す事例のため反対出来ないと感じていたかもしれない。


「閣下は、この考えを藤伊中佐から聞いたのですか?」


「ああ、前から、海軍大将の特別化を考えていることは、知っていた。まあ、海軍大将がたくさんいなくとも海軍中将が多くいれば、関係ないからね。」


東郷元帥は、苦笑いをした。


「最後の仕事というわけですか?」


山本少佐は、苦笑いした意味を的確に捉えていた。


「最後の仕事だ。それをやって、君の様な若い奴らに席を譲ろう。」


「ですか、退役された将校や階級だけの将校たちが、反発する可能性があります。それに陸軍が大反対すると思います。」


山本の懸念は、最もだった。主に皇族軍人達が反対すると予測出来た。多くは、皇族という名だけで高い階級にいることがほとんどだった。


「陸軍が大反対する理由がわからん。陸軍には、関係ないことだろう?」


「もし、海軍が年功序列制度の一部の見直しをして今までの様な横やりが出来なると、前線指揮官の陸軍軍人が声を上げ始め、見直しせざる得ない状況に追い込まれます。」


海軍の改正した制度が成功を収めると、陸軍でも同様に制度改正を求める者達が大多数になり、制度改正がさせられると考えられる。


マジで優秀な人物のみ、海軍大将になれる。要は、1番と2番しか軍令部長、連合艦隊司令長官になれない。軍令部長、連合艦隊司令長官は、海軍大将がなるのが一般的だ。


目障りな海軍士官、将校達を退役、予備役に編入させるシステムとも言える。


この制度が導入されると海軍大将は2人。海軍中将、海軍少将になれる人数は、大体決まっている。よって、海軍大佐、海軍中佐から昇格出来ないで定年を迎える者が増加する。


海軍としても、60歳の定年まで海軍大佐、海軍中佐から昇格出来ない奴に給料を払いたくないから、強制的に退役、予備役に編入させるだろう。


「山本少佐は、見直しに反対なのかね?さっきから聞いているが、批判的な意見しか言っていないぞ。」


東郷元帥は、やや不満気に言った。


「欧州派遣艦隊が帰国してから行うべきだと思います。東郷元帥と第二派遣艦隊長官の土屋大将が意見の食い違いで対立してしまったら、絶対に人が死にます。」


山本は、必死の顔で訴えた。


「西郷隆盛公と大久保利通公の様になってしまう事を恐れているのか......。」


明治維新の功労者である西郷隆盛、大久保利通は、敵同士となり戦争まで発展した。西南戦争だ。


大久保利通が政府側の事実上トップ。

西郷隆盛が鹿児島の反政府派の士族側のトップ。


西郷隆盛は、西南戦争に敗れて自害した。


そもそもの原因は、大久保利通達が、欧米視察中に西郷隆盛らが征韓論を唱えて、帰国した大久保利通らが、反対して怒った西郷隆盛が政府を去ったことだ。


山本は、内戦を近い状態となることを恐れていたのだ。


「下準備だけにしておきましょう。派遣艦隊が帰国してから、見直し案を調整してから一気に改正することが好ましいと思います。」


「なるほど、なら天皇陛下に前もって言う必要がある。統帥権干犯問題などにされてはたまらんからな。」


統帥権干犯問題にされると年功序列制度の見直しを先送りするしかなくなってしまう。


「最悪、内務省に協力を要請すれば、強引に出来ますが......。」


海軍最大の派閥の土屋大将派、第三の派閥の東郷元帥派が、協力すれば見直しが出来るだろう。



軍部の天敵である内務省と協力すれば、出来るだろう。法律の力を利用する国内の治安維持組織である警察。警察の属する組織である内務省。


「内務省棟梁の藤伊一郎内務大臣に海軍が呑み込まれるぞ。ちょっとまて。そうか!息子の藤伊栄一を海軍の将校に早くして対抗するのがいいな。」


「藤伊栄一を早く将校にさせるのですか?他の士官たちからの反対が、多くなりそうですが......。」


「山本少佐、心配無用だ。伏見宮少将のライバルとしても昇格させてやればよい。」


伏見宮少将のライバルとして昇格させれば、仮に藤伊栄一の昇格に不満があっても、皇族伏見宮少将にも不満があることを意味するからだ。


皇族に対して不満を言えるものは、ほとんどいないだろう。だが、利用するものはいるかもしれない。


だから、東郷元帥は、伏見宮少将を利用しようとしているのだ。


「......そうですか......。」


山本は、ガッカリした顔だった。


「君は、彼の同期生としてサポートしてほしい。まあ、彼に釣り合う階級は、与えるがね。」


東郷元帥は、山本をフォローした。山本が、反藤伊派になることを恐れたからだ。


「はい。ご期待に添えるよう頑張ります。」


山本は、機嫌よく返事をした。











『なんだと!日本が、宣戦布告もなしに北樺太とウラジオストクを占領しただと!ウラジオストクの海軍部隊も全滅したのか?』


革命の指導者レーニンは、椅子から飛び上がった。彼は、ソビエト社会主義共和国連邦をつくった男だ。そして、現最高指導者であった。


ウラジオストクは、太平洋に面している不凍港である。そのため、小規模だが、海軍部隊がいた。


『はい。全滅したようです。』


ヨシフ・スターリン共産党書記長が、素っ気なく言った。


『日本に抗議しましたが、正当な政府でないとして交渉の席に座りません。』


ロシア共和国外務人民委員のレフ・トロツキーが言った。


『準備が良すぎる。情報が漏れていたな。』


レーニンは、独り言を呟いた。彼からしても8月以降から各国が動くと思っていたからだ。日本の北樺太とウラジオストク侵攻は、1918年6月に行われた。


『見て見ぬふりをしましょう。下手に刺激するのは、好ましくないです。日本も、北樺太とウラジオストク占領後から目立った動きはないですから。』


『スターリン書記長の言う通りです。英国にいる日本艦隊が脅威です。バルト海に面している不凍港ペトログラードを攻撃されたら、深刻なダメージになります。』


スターリンとトロツキーは、日本より、国内制度の整備が優先だと考えていた。ソ連は、誕生して間もない。国内が混乱しているのだ。


『ウラジオストクは、奪還したい。それに欧米列強は、日本の大陸侵攻の足がかりとなるかもしれない侵攻を許すのか?』


レーニンは、中国の市場を求めるアメリカが、無関心であることが疑問だった。


『アメリカは、不干渉政策のモンロー主義により、なかなか意見の一致が出来ずに手をこまねいています。』


スターリンは、アメリカにいる諜報員からの情報を伝えた。


アメリカ国民は、悲劇を生んだ第一次世界大戦に嫌気がさしていた。もう、戦争が懲り懲りという声が若者の間で大きくなっており、政界も無視出来ないくらいになっていた。


これは、新聞社が新聞に戦場写真を載せたからだ。この写真を撮ったのは、日本の軍人たちであった。


観戦武官という立場で、写真を撮っていたのだ。このような写真を大量にアメリカやヨーロッパ諸国新聞社に流していた。


目的は、アメリカやイギリスなどのシベリア出兵の時期を遅らせるためだった。各国がのんびりとしいる間に単独で、邦人保護のため、軍隊で北樺太とウラジオストクに侵攻するからだ。


シベリア出兵時には、ウラジオストクでの日本占領地の基礎を築いている必要があった。革命政権の防波堤である都市とアピールするためだ。


よって、ウラジオストクには、日本政府が積極的に支援した。これにより、朝鮮半島のインフラ整備費が、莫大に減らされてしまったが......。


『シベリア鉄道を利用して、ウラジオストクには、大量の反対勢力が向かっているとのことです。』


トロツキーが付け加えた。


『モスクワやペトログラードで、そいつらを逮捕してしまえばいい。』


レーニンが怒鳴った。彼の考えは、最もだった。藤伊は、そんなことも対策済みであった。


『出来ません。それをしたら、ペトログラードが火の海に変わります。』


スターリンは、宥めるように言った。本当にレーニンが実行しそうだったからだ。


『どうしてだ?』


静かな言い方だが、レーニンの目は怒りの炎で燃えているようだった。


『何度も言いますが、英国にいる日本艦隊が脅威です。海洋国家の海軍に対抗できる艦艇は、我が国ありません。』


スターリンは、旧ロシア海軍艦艇の資料を見せつけながら言った。日本海軍欧州派遣艦隊は、欧州で一種の独立部隊とされていた。


なぜなら、英国海軍の無線から派遣艦隊の情報が得られないためだ。どこから攻撃してくるかわからない。これは、脅威であった。


よって、迎撃などの対策が出来ない。


『日本軍の諜報員達が秘密裏に逃がしているからです。こちらの諜報員達が大量に暗殺されて、不足状態となってる今では、対処することが困難です。』


トロツキーは、レーニンと目を合わせないで言った。


これは、藤伊の耳であるデニス達が行っていることだ。


『くっ!わかった。日本に警告だけしておけ!行動はするな!』


レーニンは、なんとか落ち着きながら言った。


『いえ、日本からこれ以上の侵攻は、過剰となるので我が国単独で行わない、と言っています。』


スターリンはメモを渡しながら言った。


それは、連合軍としての再侵攻があると言っているようなことだった。


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