準備の大切さ
ちょっと少ないけど
少し追加しました。
3日ほど投稿できないから
訂正完了。少し手当てになってしまいました。すいません
「アリエナーーーイ。」
配属先は装甲巡洋艦「日進」で少尉候補生として乗船だと外国配属じゃないのか。】
配属先の通知を見てる藤伊がいた。
「アリエナーーーイ。」
【いかん、周りから変な目で見られているかもしれない。あ、もっとやばいかも。教官と上司いたわ。】
藤伊は眉間に皺を寄せた上官が歩いてくるのが見えた。
「黙っとれ。五月蠅い。大きな声で叫ぶな!」
上官は藤伊の頭にゲンコツを落とした。
「う......。すいません。」
【 痛い、痛い。やりやがった。】
海軍兵学校の教官に加減なしの海軍兵学校時代から受けているゲンコツを藤伊は頭に喰らっていた。
1905年5月27日
【なんか今日上司たち緊張してるな、なぜ。1905年5月26日だっけか今日。そろそろ日本海海戦かな、良く分からんわ。】
日本海海戦は日本海軍がバルチック艦隊を破った戦いだ。
「美味しい食べ物が食べたい......。戦闘食美味しくない......。」
【俺、世界史選択者だから日本史の細かい部分なんてはっきり言って知らん。出来れば内地での配属がよかったなあ。悔しい。】
21世紀の料理の味を覚えている藤伊は、艦内の食事が美味しくなかった。インスタントラーメンもないこの時代は食事の視点から見れば嫌いだった。
カレーで喜んでいる他の水兵達みたいに藤伊は喜べなかった。カレーなら前世でたらふく食べたことがあるからだ。
洋風のレストランは高い。安くてもコロッケとかトンカツなどがほとんどだから興味がない。
結局、自分で色々料理を作っていた。
「藤伊、さぼるな。」
高野五十六が不意に横から言った。
「なんだ。食事の時間ではないのか......。」
【食事の時間以外俺を呼ぶなよ。あと、汗だく状態で近よるな。臭いぞ高野五十六。】
食事のことで頭がいっぱいな藤伊にとって高野五十六の言葉が脳に届くことはなかった。藤伊は戦争よりも食事だった。
高野五十六は砲術担当部署所属のため、肌が透けて見えるくらい汗をかいていた。
「おい!聞いているのか?食事の時間ではないぞ。」
長年一緒にいれば藤伊の考えている事くらいわかるようになっていた。藤伊の脳内は食事、お金、サボるのどれかだからでもある。
「わかってる。自分の仕事はやったから、艦内をお忍びで探検中だ。」
【我ながら何を言っているのかわからん。】
お忍びで探索しなければならないほど上官たちに目をつけられていた藤伊であった。少尉候補生であっても艦内の上官達に名前と顔を覚えられ人物はほとんどいないだろう。
藤伊の履歴書には監視が必要な問題児とされていたから仕方がない。
「お前の仕事はなんだ?」
「船員達にご飯を作る仕事。」
【 なんで、将来エリートになるかもしれないエリートの卵の少尉候補生にこんな仕事をさせるのだ!意味わからん!】
藤伊は素っ気なく言った。
藤伊は、上官たちに嫌われているから雑用が主な仕事であった。
「おい、藤伊起きろ。戦闘配備だ!お前は飯の準備をしないといかんだろう。」
「なに!わかった。起こしてくれてありがとう、高野。」
旗艦三笠を先頭に単縦陣で日本海を大日本帝国海軍が突き進んでいた。見張りの艦艇から敵艦隊の情報が得られたからだ。
「なに。気にすることでない。お前には少し同情するよ。海軍兵学校卒の少尉候補生なのに飯係だからな。
死ぬなよ。」
誰だって同情するだろう。将来を期待されるはずの少尉候補生が飯を作っているのだから。
「おう!あ当たり前だ。死んでたまるか。山本、お前も死ぬなよ。」
【死は全て無駄にする。戦争に栄光などない。生き残った者が勝者なのだ。】
藤伊は外道と呼ばれようが生き残るつもりであった。
少尉候補生で装甲巡洋艦「日進」に乗艦しているのは山本や藤伊を含めて約5人ほどだった。上官達に一番嫌われているであろう藤伊に皆同情して色々気をつかってくれていたのである。
【艦内が騒がしくなってきたから敵と遂に戦うのか。見てみたい。でも俺は飯を作る係だからムリか。】
半分諦めている様子であったが一応邪魔にならないようにこっそりと甲板に藤伊は出ていた。
「空母機動部隊の凄さがわかるかもしれんなぁ。」
【遥か彼方から強力な刃が飛んでくるもんなぁ。戦艦の時代はここから始まって、第二次世界大戦直前までだろう。】
藤伊は艦内をくまなく探索して誘爆に巻き込まれない場所にさり気なく移動していた。藤伊の背中には浮き輪が括り付けてあった。
ヤバくなってら海に飛び込みするからだ。浮き輪があるば、溺死する確率は低下する。
ドーーーン。
「ウァー!」
【この音近すぎないか。いや、振動もさっきまでのとは違う。聞いてみるか。】
地震が来たようだった。藤伊は床に叩きつけられた。日進が大きく左右に揺れていた。周りの者達も同じように床に叩きつけられたいた。
立っている者はいなかった。
「中尉、今の爆音は異常です。様子を見てきます。」
【煙が上がっているあそこは砲身あたりだな。高野五十六の持ち場じゃないか!】
藤伊は近くにいた上官を見つけて言った。藤伊は高野五十六が心配だった。珍しく藤伊が必死な顔をしていた。
「なんだと!うっ!......。よし見てこい。......包丁をしまえよ。」
中尉は藤伊の顔を見て一瞬怖気づいた。鬼がいた。明らかにいつもヘラヘラした藤伊はいなかった。人が変わったようだった。
ヘラヘラしている人物が真面目になると一瞬驚く。まあ、中尉が鬼と感じたのも無理がなかった。
藤伊の右手には刃渡15cmほど包丁があった。料理用の包丁である。藤伊が叩きつけられた時に落ちてしまい、それを拾って右手に持ったままだった。
藤伊は、急いで爆発のあった場所に向かった。
「いかんな。」
【うあーー。酷い、砲身が根元で断裂している。ポッキリ折れてるよ。怪我人救助だな。高野は無事か?】
藤伊はそう言いながら怪我人の手当てを始めた。
「藤伊少尉候補生、助太刀感謝する。」
怪我人の手当てをしていた1人が言った。
「高野五十六少尉候補生はどこですか。」
【上司どもは命令するだけで自分は手伝わんのか、呆れる。ここら辺は山本の配置場所だったはず。】
藤伊は高野が死ぬを想像したくなかった。高野五十六がいなくなるからだ。
「彼は医務室に連れてかれたよ。怪我が酷かったから。」
「ありがとうございます。」
【まじかよ。】
藤伊は一応、即死でないことに安堵していた。
高野五十六は医務室のベットに血の付いた海軍軍人の制服を着て横になっていた。見るからに結構な重傷だったためか一人の軍医が山本に付きっきりで傷の手当をしていた。
「元気だせよ。エリートは長生きしろ。」
【効果はないかもしれん。......。高野五十六は真珠湾攻撃まで生きるのだろう!】
藤伊は、褒めれば体の自然回復力がアップすると思っていた。余命宣告するよりも、まだ、大丈夫と言われた方がいいと考えていたからだ。
「疲れた。」
【 色々大変だった。高野の怪我を堀君、嶋田、塩沢、吉田に伝えるのが。】
この時代に携帯電話が無いから手紙を書くことになってしまった。内容はほとんど省略して書いた。
・・・・高野が大怪我をした。見舞いに来い。・・・・
藤伊の召集で主なメンバーが集まった。堀、嶋田、塩沢だった。
「藤伊、高野の状態はどうなんだ。」
嶋田が胸倉掴んできて言い放った。
「高野は命に危険も無いが、指を数本失った。教官に聞いた話だと砲身爆発。いわゆる整備不良の確率が高いそうだ。俺は別の所に居たから無傷だった。」
【金魚のフンのくせに力だけではあるのか......。よし、俺のボディーガードとして将来側に置いておこう。】
理由を話したら嶋田は放してくれると思っていた藤伊は嶋田に掴み続けられながらも淡々に言った。
それで嶋田は放してくれたがなぜか藤伊に泣きながら抱きついてきた。
「お前の思考回路は壊れているぞ!これは女性の特権だ!」
【俺の服、男の涙で濡れていくですけど…。】
藤伊は嶋田に抱きしめられていた。男同士が抱き合っている光景は意外に見れないため周りはじっと見ていた。
「嶋田そろそろ放したらどうだ。藤伊が辛そうだぞ。」
塩沢は藤伊が本気で嫌がっているのを感じて言った。
「Dankeschön 」
【塩沢、お前たまにいいこと言うな。うん。】
藤伊は嶋田から解放されてホッとしていた。
1905年9月20日
ロシアで血の日曜日事件が発生した。その影響でロシアと終戦できた。
【史実通りだ。条約地は確かアメリカのポーツマスのはず。】
藤伊は手に取った新聞を見た。
【お、新聞にも掲載されてた。俺の世界史知識は役に立ちそうだ。】
日露戦争終わったし、のんびりするのが一番と思っていたのだが……。乗艦していた装甲巡洋艦を修理することになってしまった。その影響により、戦艦「敷島」配属で少尉候補生から正式に海軍少尉になった。
【海軍砲術学校普通科学生、海軍水雷学校普通科学生を艦の勤務と並行して、行う必要があるから素直にHAPPYになれない。】
「藤伊少尉、通信機器の点検終わりました。」
【通信員は最高だね。座って作業が出来る!】
座って作業が出来ることは恵まれていることだ。問題児の藤伊は江戸時代生まれの上官達が苦手とする通信課に配属された。
通信課の上官達も専門的な知識がなかったため藤伊に任せっきりだった。一応、海軍少尉だからだ。
「ごくろうさまです。今から訓練を行います。配置についてください。艦長、通信係準備出来ました。」
【藤伊少尉って呼ばれてるけど俺はそんなに偉くないと思うけど。あいつは海軍兵曹で年上。】
年配で部下の海軍兵曹に報告されることがまだ慣れていないため藤伊はいつも彼を上司と思って扱っていた。
そのため部下を大切にする礼儀正しい人のキャラとしてみられるようになり、結構艦内の部下達からの信頼は高いものであった。