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警察

藤伊栄一の父親登場です。

1911年7月30日



【イギリスで建造中の新型巡洋戦艦の建造費は230万7100ポンド(日本円でおよそ2265万7500円)か。高いね。値切りの交渉はしたのだろうか。建造中の新型艦は後の金剛型戦艦一番艦、金剛に違いない。そうすると、金剛型は4隻あったはずだから、そろそろ2、3、4番艦の建造が開始されるだろう。】


「今、日本国内で新型戦艦を建造する計画はあるか?あるならすぐに俺に教えろ。」


新型戦艦を建造するには大量の金がいる。そのため、少しぐらいなら横領してもほとんどばれないからだ。


「わかりました。明日までに建造中の海軍納入予定船舶のリストを作っておきます。」


そう言って角田は局長室を出て行った。





その夜、東京のある料亭に藤伊親子が来ていた。


「お前の評価は聞いている。相変わらず張り切っているようだな。親としても誇らしいぞ。」


藤伊栄一の父、藤伊一郎警保局長が58歳の老いてきた体に負担をかけないように藤伊のテーブルを挟んだ反対側に座った。栄一の父の藤伊一郎は現在日本の警察のボスである警保局長であった。


「親父か。えらく早く来たな。予定では30分後に来るはずだったのでないか?」


「疲れたから家に帰ると言ったら早めに会議を終了して私が帰宅できるように部下達が協力してくれたぞ。お前が私を呼び出すなんて久しぶりだからな。それにゆっくり息子と話すこともいいと思ってな。まあ、お前が私を呼び出すなんてよほど重要な案件だろう?見張りはいないぞ。私が追い払っておいた。だからもったいぶらず早く話せ。」


一郎はせかすように言った。父、一郎と息子である栄一は立場上会う機会が少なくなっていた。そのため一郎は息子と会うという理由で周りを説得して今日一日休日にしていた。よって先ほど一郎が早く来た理由はまったくの嘘である。息子に久しぶり会うから休日をもらったとは口が裂けても言えなかった。


「親父の権力を使って警察特別要人警護課、警察治安部隊課のふたつの新しい部署を設立してほしい。伊藤博文公みたいに暗殺され日本の政治が一時的に混乱してしまうのを避けることが活動目的だ。


治安部隊は対テロ部隊という理由で創ってもらうがそれは建前で本当の目的が軍部から武力という圧力に対抗する政治家たち武器になってもらうことだ。政界の中でも政党所属の国会議員勢力が藩閥や軍部たちからも無視できない存在になりかけている。後15年ぐらいで政党所属議員が内閣となるだろう。


その内閣は国民中心の政策をするために予算確保のため大規模な軍縮をしようとするに違いない。当然軍部は反対するだろうが結局政党側が有利のため軍縮が決定する。軍部の中から不満を持った者たちがクーデターでも起こそうとするだろう。予期せぬ時に起こってしまうから反乱部隊を海軍や陸軍の鎮圧部隊が応援に来るまでの時間で政府高官、大臣達は殺されてしまうだろう。


その海軍や陸軍の鎮圧部隊が来るまでの時間稼ぎのために治安部隊が必要だ。治安部隊の戦力は陸軍歩兵部隊並みの強さにすればいいと思う。」


「軍人でないから軍隊内部事情についてよくわからんが海軍は大丈夫なのか?陸軍が暴走しかけていることはこちらも知っている。警察特別要人警護課はすぐに許可が下りるだろう。だが警察治安部隊課については許可が下りにくいぞ。

いろいろなところから批判されてしまうな。あ、そうだ。社会主義者の暴動を鎮圧するための予備治安部隊課とすれば通る可能性があるかもしれん。」


藤伊一郎は警察を軽視する軍隊が以前より気に食わないと思っていたためすぐに実行しようとしたのだった。警察特別要人警護課は多くの政治家たちは賛成するだろう。


戦前の日本は政治家への暗殺、暴行、脅しがよくあったからだ。よからぬ奴らから警察が守ってくれることなんて彼らからすればとてもうれしいことであるからだ。軍部は脅しなどができなくなるかもしれないから反対だが表立って警察特別要人警護課設置の反対派になってしまうと自分が政治家に脅しなどをした犯人と宣伝するようなものであった。そのため、軍部は一応形だけの賛成を取らざるを得なかった。


「海軍は今のところ大丈夫。俺が潜在的危険分子は朝鮮半島、北海道、四国、東北、沖縄、台湾や海軍の重要な場所でないどこかに飛ばしているから。彼らの人事異動は2年ごとにあるから結束力が強くなる心配なし。今、人事局の事実上のナンバー2だからこんなこと簡単にできる。」


栄一は周りを気にして小声で言った。


「ふむ。栄一、これはひとつ貸しだな。12月までには警察特別要人警護課の方はなんとかしよう。警察治安部隊課は来年になると思う。私は1913年12月までしかこの椅子には座っとれん。その後は貴族院勅選議員だ。要するに貴族院議員になる。必要なら議員たちとコンタクトが取れるようにしてやる。それまでに海軍中佐になっておれ。それが条件だ。」


「わかった。」


藤伊栄一はまるで小さな子供がサンタクロースからプレゼントをもらった時の笑顔になっていた。その笑顔が見れただけでも一郎は来た意味があったと思っていた。









1911年9月27日



「へぇー、8月中に約40万円貯まったか。簡単に大金を稼げるから愛国心が無い輩は海軍内にいないとでも思っているのか?でなければ、こんなに簡単にできないぞ。それにしても横領が多いな。呆れるよ。これ以上短期間で横領金を稼ぐのは一時的に止めよう。欲を出しすぎると失敗するから。」


【ロンドンの口座の金は俺がヨーロッパに行った時に使おう。でも、ヨーロッパに行けなかったら最悪。あ、その時は私費で行けばいいや。】


藤伊は小さな秘書室で上半身T-シャツ1枚でだらしない格好でヨーロッパの観光案内書を見ながら旅行プラン作成していた。角田も軍服を脱ぎたかったが少尉候補生というクラスであるため海軍大尉の藤伊をうらやましい目で見ていた。


「海軍内でも横領金のことが噂になっては困ります。後やっと第二次桂内閣から第二次西園寺内閣にバトンタッチしました。内閣総理大臣が軍隊関係者でないため陸軍と海軍が対等になったのでこれで国会議員に賄賂を贈りやすくなりました。


議員を買収して軍事費を削るようにさせれば、八・八計画が中止となり、士官の海外留学費に回されるはずです。削減した予算は警察予算の増額にされる予定です。警察増額予算案が議会を通過すれば警察力強化となります。陸軍を帝都東京で暴走させない抑止力になると考えております。うまくいけば20年後には陸軍を出し抜けるかもしれません。」


「まったく難しいことをさらっと言ってくれるな。陸軍をどうやって説得しようか?国会で軍事費削減案が通過すると血の気の多い青年士官たちが議員たちを殺害しようとする可能性がでてくるから警察特別要人警護課の設置するべきと斉藤実海軍大臣に言ったら冷や汗掻きながら同意してくれたけど…。陸軍大臣はどうしよう?まあ、陸軍大臣の同意なんていらないから無視だな。」


警察特別要人警護課については第二次西園寺公望内閣のメンバーはほとんど賛成だった。石本新六陸軍大臣、斉藤実海軍大臣の2名が強固に反対していたのだった。


陸軍は2個師団増設、海軍は八・八計画ため軍備費削減を反対したためであった。2人とも陸軍、海軍という暴力組織のメンバーであるため誰から襲われる心配がないので断固として反対できたのだ。


だが内閣成立の8月30日から反対していた斉藤の海外口座9月の中旬に面識も無く知り合いでもないイギリス人から約2万円振り込まれていたのだった。数日後斉藤の家にお金を振り込んだイギリス人からだと思われる国際郵便があった。郵便物の中には手紙が入っていた。


手紙には、、(10月中に中国で革命が起こる可能性があるため中国への攻撃、侵攻は絶対に避けるべき。この情報を信じるか、信じないかは君の自由だ。ああ、振り込んだ金は対策用資金とでも思って好きに使ってくれ。名も無き友人より。)、、と書いてあった。


友人の日銀総裁高橋是清にも同じ手紙が届いていたため2人混乱していたが、藤伊栄一の父、藤伊一郎警保局長が差出人のイギリス人の友人だと独自で調べた結果わかった。得体の知れない友人を持つ一郎に逆らうことは好ましくないと判断し2人とも協力することになった。それで斉藤海軍大臣は反対意見を取り下げたのであった。


「陸軍は無視してよろしいのですか?自分も頑固な人物は好みませんが…。一時的な感情の影響で決定なさるのですか?」


感情的な決定はほとんどしない藤伊がこのような決定をすることが角田に納得できなかったのだ。その影響で角田も感情的な決定は好ましくない考えを持ち始めていたからでもある。


「これは感情で決定した訳ではないから。親父と俺で陸軍は無視して計画を進めることが決定していたからさ。陸軍の意見を聞いていたら計画が予定通りに進まないと判断したからでもある。原敬内務大臣も親父のことすごく信頼してるみたいだから推し進めるなら今しかないと思っているらしいよ。


俺らに今の段階で火の粉は降りかからないから大丈夫だって。俺たちは活動資金を集めることが最優先だ。ああ、それと建造中の戦艦について新たな情報でも仕入れたか?」


「はい。それとご存知かもしれませんが、現在日本で建造中の戦艦は使い物になりそうにない一応最新鋭の薩摩型戦艦2隻、河内型戦艦2隻です。4隻の内1隻は標的艦に改造されるという情報をリークしました。1912年3月中旬より呉海軍工廠で日本海軍最初の超弩級戦艦《第三号戦艦》が起工される予定と聞きました。イギリス海軍の最新戦艦ドレットノート発表の影響だと思われます。」


「速力はどれくらいだ?もっと細かい説明をしなさい。角田君、俺は詳細なデータが欲しいのだよ。それと、イギリス海軍のドレットノートのことなら駐日ドイツ大使から数年前に聞いたよ。情報が古すぎるぞ。」


「すいません。1912年3月中旬より呉海軍工廠で建造予定の戦艦の速力は予定では21kn。排水量29,330t、全長192m(630フィート)、全幅28.68m(94フィート)、兵装・主砲35.6cm(45口径)連装6基12門・副砲15cm(50口径)単装16基16門・53cm水中魚雷発射管6門、機関4万馬力です。自分の予想ですが速力は約22knだと思います。」


「あああ、わかった。ありがとう。」


藤伊は角田に落ち込んだ声で返事をした。


【はあ、速力が約21kn~22knかよ。第一次世界大戦の時の戦艦だって速力約25knなのに…。これでは太平洋戦争の時には使えないただの鉄の塊になるのか!イギリスで建造中の巡洋戦艦金剛だって速力約27.5knあるのになぁ~。太平洋戦争時には金剛型戦艦か1930年以降の戦艦しか乗艦しないように書類に手を加えるべきだな。うん!これは決定事項だな。】


「藤伊大尉、できれば自分も休日をもらいたいのですが。よろしいですか?」


「嘘をつけ。休日なら週1回やっとるだろうが。普通なら休みの日なんて無いぞ。毎日出勤だ。俺は偶に休むがほぼ毎日出勤しとる。もう少しマシな嘘をつけ。お前は小細工が苦手そうだな。将来は良い攻撃型前線指揮官になるかもな。」


何か閃いた藤伊の様子を見ていた角田は、、(また自分が振り回されるのだろう)、、と思っていた。そのためなんとかして避けようと本人は必死で考えたかもしれないが他人から見ればバレバレの手を打ってしまったため藤伊にもバレてしまったのだった。


そもそも角田は史実で空母部隊を率いる長官になる大物である。その戦い方は積極的な攻撃作戦であった。それで小細工が元々苦手だったのである。


「あの、その、お手柔らかにお願いします。」


「ははは、そんなに構えるなよ。別に無理な事柄を頼むつもりは無いさ。お前ができると思った範囲までのことのみ頼むから。普通にいつも道理にやればいいのさ。じゃあ、この書類を片付けようか。終わったら飯でも奢ってやるよ。さあ、がんばろう。」


机の上にある高さ10cmほどまで詰まれた書類を指で指して藤伊は言った。角田は飯のためならと思って書類を処理し始めた。

5000字ほど書くの疲れますね。新人だからでしょうか?

でも文字数はこれくらいがちょうどいいのかな?


もっと多くするべきでしょうか?

それとも現状維持?

少なくても良い?


作者はわかりません。

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