シー ソー
灰色の世界。
濃淡だけで描かれている。
味なんか、ありゃしない。
草臥れた公園。
錆び付いた遊具。
触れたら壊れそうだ。
閑散とした日常。
闊歩し続ける絶望。
止まらない時間の連鎖。
風は薙ぐ。
「……おにいさん」
影のある少女が来た。
黒よりの灰色が来た。
「どうしたの?」
「……あれ、したい。」
灰色が指差す先。
錆び付いたシーソー。
草臥れたこの公園の象徴。
「壊れそうだね。」
「うん。
だから、したいの。
壊れる前に、したいの。」
泣きそうな灰色。
泣きたいのは僕の方さ。
……君に言ったって、
分からないだろうけど。
「しよっか?」
「……うん。」
ギーコ、ギーコ。
腐りかけた木が軋む。
今にも壊れそうだ。
いつまでするんだろうか。
ギーコ、ギーコ。
不協和音が奏でられる。
そろそろいいだろうか。
灰色も満足……、……あれ?
ギーコ、ギーコ。
灰色に色が付いていく。
桃色、肌色、赤色、黄色。
どんどんどんどん付いていく。
「おにいさん、」
「……えっ?」
「楽しいねっ。」
ギーコ、ギーコ。
世界に色が満ちていく。
青色、茶色、緑色。
どんどんどんどん満ちていく。
ギーコ、ギー……。
不協和音は無くなった。
世界に色が満ち足りた。
蒼穹がやけに、眩しかった。
「楽しかったっ。」
「……そう、だね。」
「また遊ぼうねっ。」
色彩が帰っていく。
彩られた世界を駆けて。
楽しそうに帰っていく。
風が凪ぐ。
時間の連鎖は止まらない。
闊歩する絶望は消えない。
けれど色彩も消えず。
絶望への恐怖は薄れた。
……あぁ、そうか。
ようやく分かった。
彼女はとても灰色だった。
彼女はとても色彩豊かだった。
彼女はとても、僕に似ていたんだ。
「ねぇ、あなた?」
「ん?」
「何を思い出してるの?」
「ん。……君と出会った頃、かな」
少年にとっての絶望、
貴方は理解出来ますか?
……理解出来ない方は、
きっと幸せだと思います。
読み終えた貴方様が、
ほっこりとした想いを
胸の中に抱いて頂ければ
筆者も幸いで御座います。