第八話 なんか初クエスト
評価とお気に入り登録してくださった皆さん!
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これからもよろしくお願いします!
ヴィロムスに到着した次の日。
俺はおばちゃんに言われたとおり、『プレブス亭』で朝食をとった。するとおばちゃんが「ほら、かわいいからサービスっ!」と言っておかずを一品増やしてくれる。
あれ? 昨日は泊ってる客にはだれでもサービスするって言ってたような?
と疑問を持ちつつ目の前のテーブルに並ぶ朝食を見る。
この世界の主食は主に固いパンっぽいものらしい。そのパンっぽいやつの上に、こんがりと焼けた何かの肉がジュゥーと音をたててのっている。さらに野菜(レタスっぽいやつにトマトっぽいやつ)っぽいやつをサンドして、サンドウィッチっぽい……ああっ!なんか〝っぽい〟っていうのめんどくさい!
まあとにかく、朝食はそのサンドウィッチと牛乳(?)に、おばちゃんが追加してくれた何かの魚のフライだった。
「う、うまいっ!」
実際あまり期待していなかったのだが、この世界にもおいしいものがあるということを認識させられた日であった。
朝食を済ませた俺は、早速昨日登録した冒険者ギルドへ向かう。
俺がヴィロムスでわざわざギルド登録したのはほかでもない、ついでに護衛のクエストでも受けて王都に乗り込んでしまおうと考えたからだ。つまり今日は護衛の仕事を探すために来たのであった。
カランカラン
ドアベルを鳴らしながらギルドに入る。朝はもっと込んでいると思っていたが、あまり冒険者の姿はなかった。
「あ、コウイチ様。いらっしゃいませ」
俺が入ってきたことに気付いたセナーレが声を掛けてきた。
「こんにちわ、セナーレさん。今日は随分とすいてるんだね?」
昨日知り合いになったので少し軽めの口調にしてみる。
「いえ、この時間帯はいつもこんな感じですよ? 冒険者の皆さんは朝は準備を整えて、昼からクエストを受ける人がほとんどですから」
「へぇ~、そんなんだ」
「コウイチ様は、今日はクエスト受注ですか?」
「ああ、そんなんだ。ちょっと護衛の仕事はないかなと思ってね」
「護衛ですか。……Fランクでは護衛のクエストはないかもですね」
「えっ!? そうなの?」
そうなのか。でもよく考えれば新人のFランクの人に護衛されてもアレだよな。
しょぼんとうなだれている俺を見てかわいそうになったのか、あわてた様子でセナーレが話しかけてくる。
「あっ! そ、そういえばランク無制限の護衛クエストがありました」
「本当っ!? 行先は?」
「えっと、……行先は、王都ですね。王都ノルンです」
おおっ! それはまさしく俺のために用意されたクエストじゃないかっ!
「その依頼書、見せて!」
「は、はい。どうぞ」
セナーレは俺を見て若干ひいているが、興奮している俺は気付かない。
依頼書にはこう書かれていた。
依頼書
依頼主 :リリス・フィレンツ
種類 :護衛
報酬金 :金貨5
依頼対象 :ランク無制限 人数4人~5人
依頼完了期日 :7日~10日
依頼内容
ヴィロムスからノルンまでの護衛。
こちらに従者が3人います。馬車での移動になりますので、馬を貸し出します。
「これ受けます、セナーレさん!」
「え!? あ、あの勧めておいてなんですけど、依頼主はフィレンツ家の長女リリス様の護衛で危険が伴うというか、責任が伴うというか…………」
「あ、大丈夫。僕、補助魔法使いだし」
「そ、そうなんです……か?」
何が大丈夫なんだろう? という感じで首をかしげながらもセナーレは依頼書を持ってくる。
「依頼の決行は明日の10時です。その時間になりましたら中央の広場までお越しくださいとのことです」
「分かりました。ありがとう、セナーレさん」
セナーレさんにお礼を言うと俺はギルドを後にして宿屋に戻り、この街を出る準備をした。
翌日、俺は言われたとおり街の中央の広場へやってきた。旅に必要なものは昨日買ったし、宿屋のおばちゃんに王都に行く旨も話した。おばちゃんは「そうかい、残念だねぇ~。気をつけるんだよ~お譲ちゃん」と言って見送ってくれた。
ありがとうございます。でも俺は男です、おばちゃん。
まだ約束の時間ではなかったが、広場には2人の従者に囲まれて立っている少女と、冒険者らしき人物が2人いた。冒険者は1人が女で1人が男であった。
「こんにちは。依頼を受けた冒険者のコウイチ・イマジョウです」
俺は依頼主と思われる、従者に囲まれた少女に話しかける。ちなみにこの世界で名前を名乗る時は、名前が先で、家名が後になる。
「ああ、私が依頼主のリリス・フィレンツだ。よろしく頼む」
少女は16か17歳くらいだろうか。おそらく俺と同じくらいの年齢で、ワインレッドの情熱的な髪色。髪は後ろで結んでいてポニーテイルのようになっていた。整った顔立ちに、髪と同じ色のきつい眼が印象的な美少女だった。
少女は動きやすさを重視した最低限のところしか覆われていない鎧と、腰に2本の長剣を挿していた。
「あなたなんでフードなんかかぶってるのよっ! カッコつけたいわけ?」
俺が依頼主のリリスと挨拶していると、割り込むようにして女の冒険者の一人が話しかけてきた。栗色の短いショートヘアーに、眼はツンとしているがかわいらしい顔をしていた。レザーの鎧に背中に大剣を背負っている。
「どうも、コウイチ・イマジョウです。よろしくお願いします」
「さっき聞こえてたわよ! 私はCランク冒険者ラナ・ビスマス。それで? あんたランクは?」
「昨日入ったばかりでして……Fです」
「はぁ? あんた護衛なめてるわけ? 護衛っていうのは最低Dランクの冒険者が受けるものよ!」
「いや、ランク無制限と書かれていたので……」
「それでも身の程ってのをわきまえたらどうなの?」
フンっっと顔を逸らすラナ。
なんだよ、こいつ。俺は相手にするのが面倒なのでもう一人の男の冒険者に声をかける。
「よろしくお願いします。コウイチ・イマジョウです」
「ラング・マルテル。ランクはC、よろしく」
ラングと名乗ったその冒険者は、重そうな金属の鎧にバスタードソードを背負っている。顔はキリッとしていて、鍛えられた筋肉が鎧の隙間から見えていた。挨拶も素っ気なかったことから、おそらく〝男は背中で語る〟系の人間なんだろう。
頼れそうな人だがなんか話しかけずらい……。あのラナって女は論外だし、リリスは従者に囲まれてるし、なんか気まずいな。
「すいませぇ~ん。遅くなりましたっ――うわぁあっ」
コテンッ
俺がそんな人間観察をしていると、何やら気の抜けた声の少女がやってきた。
あ、転びそうだな、と思ったら案の定転んで「うぅ…痛いですぅ」と言ってこちらへ歩いてくる。
「あ、あのっ! 依頼受けましたDランクのミレイヤ・ホリスですっ! 後衛担当で弓使えますっ! よろしくお願いしますっ!」
ペコッと頭を下げるミレイヤ。ミレイヤは癖のあるピンク色巻き毛を肩まで伸ばした、おっとりとした垂れ目の少女であった。年齢はおそらく俺より下か同い年くらいだろう。
おおっ! こういうキャラ待ってたぜ! 俺はミレイヤと仲良くなるべく話しかける。
「はじめましてミレイヤちゃん、僕はコウイチ・イマジョウ。よろしく」
「あ、はいっ! こちらこそよろしくですっ!」
再度ペコッとお辞儀するミレイヤ。
なかなか話しやすそうな人だ。これなら道中気まずくならなくて済みそうである。
「それじゃあ、パーティー組むわよ」
俺とミレイヤが挨拶をしていると、ギルドカードを出しながらラナがそういった。
パーティーとは一種の契約魔法で、この魔法が利いている限り、討伐した魔物の記録をパーティー全員に反映させたり、報酬金の分割の時の証明になったりするのだ。
「――汝に問う 契約の神ヴァルナ名の下に ともに戦いともに助け合うことを誓うか」
ラナがパーティー編成の魔法の詠唱を唱える。するとギルドカードの上に白い魔法陣が現れる。
「誓う」
「誓います」
「誓うですっ!」
俺を含めたほかの3人も同じようにギルドカードを出して、お互いに重ね合わせながら魔力を流す。するとカードが淡く光り、自分のほかの3人の名前が刻まれた。これでパーティーを組んだことになる。
「コウイチといったかしら? 足手まといにはならないでよね!」
「はいはい、了解です」
俺はラナに適当に返事をする。
「全員そろったようだな。馬と馬車は門のほうにつないである。移動するぞ。」
リリスがそういうと、俺たちは門のほうへ移動する。するとそこには質素な馬車と、乗馬用の馬があり、リリスの従者が一人待っていた。
「あんた馬乗れるの?」
ラナがバカにしたように話しかけてくる。いちいち絡んでくるなこいつ。
「ええ、問題ありません」
俺も馬ぐらい乗ったことある。馬具もついてない野性の暴れ馬だったけど。
「よろしくね。ロナウド5世っ!」
横を見るとミレイヤが馬に向かって話しかけていた。
「ロナウド5世って……その馬?」
「はいっ! ウチが今名づけましたっ! もはやロナウド5世とウチは竹馬の友なのですっ」
「そうか~。よかったね」
うん、竹馬って本物の馬だけどね。それに借りた馬に勝手に名前つけないようにね。そしていきなり5世なんだ。
など言いたがったが、ミレイヤが楽しそうなのであえて言わないことにする。
「皆さん準備ができたようなら出発しますが、どうですか?」
リリスの従者の一人、馬車の馬の手綱を握っている従者が確認のため俺たちに声を掛けてきた。
「大丈夫よ」
「問題ない」
「大丈夫です」
「準備できましたっ!」
4人の冒険者がそれぞれ返事をすると、護衛対象一団と、冒険者たちは王都ノルンへ向かって出発したのであった。
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編集 もふもさん めぐおさん 黄金拍車さん アデリーさん ありがとうございました!