第五話 なんか夢を見た
gdgdですいません;;
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――――キーンコーンカーンコーン
聞きなれたチャイムの音がする。俺は伏せた顔をゆっくりと持ち上げて大きく伸びをした。
どうやら授業の途中で寝てしまっていたらしい。最近、窓側の席になったせいか、日当たり良好でつい眠ってしまうことが多い。それに5時間目の国語のじいさん先生は、ムニャムニャと滑舌の悪い朗読するのでさらに眠くなってしまう。
俺は大きな欠伸をすると、ふとおかしなことに気付く。
今、教室では休み時間になると聞こえてくる特有の騒がしい活気がなく、シンと静まり返っている。
俺は周りをぐるりと見渡してみる。
「誰もいない……?」
さらにおかしなことに、窓の外が真っ暗で何も見えないし、教室にあるものすべてが白色になっていた。
「あーこれは、アレだな」
人が消えた白色の教室。真っ暗闇の窓の外。授業が終わった記憶無いし、帰りのSHRで起こされなかった。
それに俺は……もうここには帰ってこられないじゃないか。
うん、そうだ。これはつまり……
「寝すぎて夜になったか」
「なんでやねんっ!」
誰もいないと思っていた教室の俺の後ろから、関西風の鋭い突っ込みが入る。
振り向いてみるとそこには、絹のようなきれいな金髪でロングヘアー、純白の肌に純白の衣をはおり、幼げではあるが芸術的な美しさの顔を持つ、身長160cmほどの女(の子?)が立っていた。
その超絶美少女が俺の正面へ歩いてくる。
「帰ってこられないって意識してるのになんでそうなるの!? あなたはアルマータに転生したんでしょ!?」
「だからそれは夢だろ?」
「あなた……10年も暮らしたくせにまだ夢だと思ってるの?」
「基本的に俺は嫌な現実からはできるだけ逃避することにしている(キリッ」
「それって胸張って言うことじゃないと思う……」
はぁー、とため息をこぼし呆れ顔の美少女。
「とにかく、ここはあなたが住んでた世界じゃない。それに今あなたは夢を見てるのよ」
「なんだ夢か……。夢なら何で日常の学校が出てくるんだよ~。どうせなら〝美人巨乳の金髪女性〟とか出してほしかったぜ」
「あんたそれ、私に喧嘩売ってるのかな?」
額にピキピキと怒りマークを張りつけた美少女は、ない胸を張って俺の前に仁王立ちする。
「……寝る」
「寝るなぁっ! 悪かったわね小さくて! ってか、もうちょっとこの神秘的な状況に驚いたらどうなの!?」
「なんだよ、寝かせろよ。俺は昨日変なお告げやら、ばあさんやら、ばあさんやら、さらにばあさんやらで疲れてんだよ」
「ほとんどばあさんじゃない! あんた昨日のこと覚えてるじゃないの! それにあんたはもう寝てるんだってば!」
「はぁ? 何言ってんだ君。 寝ながら君と話せるわけがないじゃないか」
「だからここはあんたの夢の中なんだってばぁぁっ!」
ゼィゼィと肩で息をする美少女。何興奮してんだこの人。
「ふーん……。で? きみ誰?」
「今頃!? それって最初に登場したときに言うセリフじゃない!?」
あ、涙目になり始めてる。そろそろおふざけはやめるか。
「まあ、落ちつけって。君、ペルセフォネだろ? 俺にふざけたお告げを送り付けた」
「あなた……わざとやったわね……」
「仕返しです」
あースッキリした。昨日俺をあんなにイライラさせたんだ、報いはちゃんと受けてもらった。
「仕返しって……確かに急に転生させちゃったのは謝るけど。でもそうしなきゃあなた死んでたのよ?」
「別に転生はいいんだが、俺が怒ってるのはあのお告げの書き方だ」
「お告げの書き方? ……あ、それ書いたの私じゃないわよ?」
「へ?」
「あなたの世界のことをよく知ってるって言う私の友達の女神に任せたの。なんか変だったかしら?」
あー……。
それを聞いた俺はゆっくりと席から立ち、キョトンとしているペルセフォネの正面に行く。
「すいませんでしたぁぁぁぁぁぁあああ!」
そして全力で土下座した。
「なにっ!? どうしたのいきなり!」
「いやホントっ! あのお告げの文面に頭にきてしまって、ついあんな失礼なことをっ! 調子のってましたぁぁぁ!」
やばいやばいやばい! 女神様に喧嘩を売ってしまったかもしれない! あんなタメ口な上に、嫌がらせしたなんてっ!
「ちょっと! 落ちつきなさいっ! 分かった、分かったからっ!」
「どうか! どうか命だけはご勘弁を!」
「あんた私をなんだと思ってるのっ!?」
「…………ごく普通の高校生を魔王のもとへ送りこもうとしている人」
「あながち間違いじゃないから言い返せないっ!?」
それから10分ほど女神さまに許しを請うた俺はようやく落ち着つき、ペルセフォネにお告げの内容を話した。
「あの子に任せた私がバカだったわ……」
そういって女神なのに天を仰ぐペルセフォネ。俺はその友人とやらを闇討ちしようと心に決めた。
「本当にごめんなさい。あなたが怒るのも無理ないわ、その感じじゃ」
「いえ、こちらこそ。いろいろと失礼なことをしてしまって申し訳ないです」
再度ペコっと頭を下げる俺。
転生する前の俺は厄介事を避けるため、中学の時の失敗を繰り返さないためにも自分の身の程をわきまえた行動を行うようにしていた。だから自分の間違いを認めたらすぐに謝る、これが俺のルールだ。
「まあいいわ。それとその敬語もやめてくれる? 私敬われるとか好きじゃないのよ」
この発言には驚いた。
え? 神ってそういう存在じゃないの? 信仰され敬われて力を得るものじゃないの?
俺が驚いていることに気付いたのか、ペルセフォネは続ける。
「あんたの思っている通り、神は信仰されて力を得るわ。でも私は…………」
そこでペルセフォネは一瞬、怒っているような泣いているような顔をした。なんか地雷分じまったか?
「……まあ、それは置いといて。お告げにも〝一応〟書いてあった通り、あなたにこの世界でやってもらいたいことを話すわ」
しかしすぐに元の微笑に戻ると、明るい声色になった。
あまり深入りしないほうがいいだろう。そう思った俺は小さく頷くとペルセフォネの言葉に耳を傾ける。
「まず、この世界の説明はもういらないわよね? 魔物がどのようにして生まれてくるかも分かる?」
「ああ、一応。なんか『ダスト』っていうのから生まれるんだろ?」
俺は言われた通り、口調を普段のものに戻した。
「ええ、『ダスト』はこの世界の神が与えている加護の一つなのよ。
この世界にはあなたたちの世界とは違って、エルフやドワーフなどの人間とは違う種族の知的生命体が存在しているのは知ってるわね? そのため力の弱い人族たちを救うために、あなたたちの世界とは比べ物にならないほど神が干渉しているの。その一つが自然魔力の『ダスト』よ。
なぜ人族を救うのかというと、人族とは違う種族の者たちは自分たちを作り出した一つの神だけを信仰するからなの。人族はいろいろな神を信仰しているうえに数も多い。それで世界のバランスが崩れるのを防ぐため、人族を救うことにしたの。
だけど皮肉なことにそれは、この世界自体を破壊しかけない結果になったわ。」
さっきのふざけたムードから、真剣な表情になるペルセフォネ。
ペルセフォネはさらに続ける。
「自然魔力『ダスト』の暴走による魔王の誕生。これは神々の誰一人予想にしていなかったことだったわ。『ダスト』から魔物が生まれてくることまでは予想済みだったんだけどね」
「それで……魔王ってのは他の魔物と何が違うんだ?」
俺は恐る恐る尋ねる。
「魔王はものすごく優れた知能と力を持っている。他の魔物とは比べ物にならないほどにね。そしてさらに厄介なのが、他の魔物を急激に進化させてしまうことなのよね。そして進化した魔物は知能を持ち、武器や魔法を扱って魔王のもとに軍隊となる。どの種族よりも力があり数も多い最強軍団が出来上がってしまえばこの世界は崩壊の一途をだどるわ」
「えっと…………その魔王を俺が倒すの?」
「できれば」
「できるかっ!」
無理っす。一秒で負ける自信があるっす、はい。
「で、でもあなたは神の干渉がほとんどない世界の人間だから、力や魔力はこの世界の人間とはけた違いなはずよっ! そ、それにあなた一人では戦わせないわ。ちゃんとこの世界をめぐって強い仲間を作ってから魔王に挑めばきっと勝てるはずよっ! たぶんっ!」
「『ばず』とか『きっと』とか『たぶん』とか混じって全然説得力無いんだけど……。それに、俺がこの世界を救う義理がないんだが?」
「うっ……それを言われると正直きつい。たしかにあなたにはこの世界を救う義理も責任もないわ。それを承知の上で私はお願いしているの。コウイチ、この世界を助けてっ!」
そう言って頭を下げるペルセフォネ。
何をやっているんだこの人は……いや、この神様は。神様がこんな一人間に頭を下げてお願いするなんて。よほどこの世界が好きなんだろうな。
俺は頭を下げるペルセフォネを見ながらそんなことを考える。
「もちろん断ってくれても構わないし、まだ答えを出してくれなくてもいいわ。でも魔王軍が力をつけて対処できなくなる前にもう一度お願いするから、その時に答えを聞かせて。それに私はあなたに私のできるだけの事をするつもりよ」
「……分かった、一応返事は保留するよ。でもその前に一つ言いたいことがあるんだ」
そう、これだけは伝えないといけない。
もしかしたら失望させてしまうかもしれないけど。
俺はペルセフォネににっこりと笑いかけながらこう言い放つ。
「俺、なんか補助魔法しか使えないんだよね」
次で小屋脱出です!
やっと動いてくれる物語……。
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