第四話 なんか神のお告げっぽい
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というわけで5歳から5年がたち、現在俺は10歳になった。
最近、俺はあることを考えている。
森の魔物はすべて一人で狩れるようになったし、街にある冒険者ギルドは身分証明書なしでも登録することができるらしいので、お金にも困ることはないだろう。
いつまでもアデーレばあさんに迷惑をかけるわけにもいかないし、そろそろ独立してここから離れた方がいいんじゃないかと。
そんなことを考えていたある日のこと。
小屋の掃除と着物の洗濯を終えた俺は、アデーレばあさんの部屋に招かれ一枚の封書を渡された。
「ほれ、コウイチ宛の封書じゃよ」
「僕宛てに?」
俺は怪訝な顔で首をかしげる。
俺はこの小屋から出たことがなかったので(森以外)、俺当てに封書が届くことはない。それに今日は郵便配達用の使い魔の姿を見ていない。
ちなみにこういった封書や手紙は、国家が運営している郵便ギルドから輸送される。訓練されたカラスのような使い魔や、フクロウのような使い魔が運んできてくれるのだが、一度その様子を見て某魔法使い映画を連想してしまったのは仕方がない。
「いいから中身を見ていなさい」
アデーレばあさんはにやにやとした顔でこっちを見ている。
嫌な予感がする……。いや、嫌な予感しかしない。
俺はゴクリとつばを飲み込みながら、恐る恐る中身を出す。
そして最初のこの一文が俺の目に飛び込んできた。
『神のお告げ』
神のお告げ……。
そうかぁ、神のお告げかぁ~。アハハハハハ…………ええええぇぇっ!?
ちょっ! なに!? アデーレばあさんが言ってた神のお告げってこれ!? 普通に手紙でくんの!?
俺が驚いてあたふたしていると、アデーレばあさんは「そろそろコウイチにも見せておいたほうがええと思ってのぅ」と言って、神のお告げについて語り始める。
※※※
アデーレばあさんの元にこの『お告げメール』が届いたのはちょうど10年前。俺の体の持ち主が生まれた年だった。
アデーレばあさんは最初この封書が届いたとき、間違いかと思ったそうだ。なにせ宛先が見たことも聞いたこともない名前、『今城 幸一』となっていたからだ。
しかしその夜、アデーレばあさんの夢の中に、金のロングヘアーと芸術的美しさを持つ幼げな顔、そして薄い白衣を纏ったいかにも女神様ですよ的な人が現れたらしい。
アデーレばあさんはその女神さまに、「この世界のために『今城 幸一』という者を異世界から転生させて欲しい」とお願いされたそうだ。
「断ってくれてもかまわない」とその女神さまは言ったらしいが、人のいい(面白いこと好き)アデーレばあさんは快くこれを承諾。女神さま直々に転生の術を教えてもらい、その術を死亡した赤ん坊に行使したらしい。
※※※
そして俺はこの世界に無事転生、現在に至る。
「わしはまだその封書の中身は見ておらん。コウイチ宛てだったからのぅ。そしてコウイチはこの世界で生きていくための術を身に付けた。そろそろこれを渡してもいい時期だと思ったんじゃ」
とアデーレばあさん。その話を聞いた俺は、頬を引きつらせ焦りまくる。
な、なんか予想外に大変なことに巻きこまれてない? 俺。
転生したとき女神さまが出てほしいなどと思った昔の自分を殴り飛ばしたい。
嫌な予感に嫌な予感を重ね合わせた悪寒が、お告げの続きを封書から引き出そうとする手にブレーキをかける。
待て待て落ち付け、俺。
大丈夫、俺は主人公とは無関係なごく普通の高校生。世界のために俺が必要とか何かの間違いに違いない。
おそらくこれは「人違いでした~」みたいなわびの手紙に違いない! きっとそうだ! たぶん! そうだといいなぁ~。
俺は冷や汗でぐっしょりと濡れた額を袖で拭い、深く深呼吸をしてゆっくりとお告げの続きを引き出す。そこにはこう記されていた。
『 神のお告げ
いきなり呼び出してごめんねぇ~幸一君。
死んだら異世界で赤ん坊になってたなんてビックリしたよね? でもそれには、もうそれわ深ぁ~いワケがあるのだよッ!
実は、現在アルマータわ~滅亡の危機なんだよねぇ~。
なんかぁ~魔王っぽいのが現れてさぁ~マジ最悪って感じ? ぷんぷんッ!
だけどだけど、神わこの世界に直接干渉できないし~、私の管轄の世界が滅びるのもいやだからさ、何とかしないとなと思ったわけよ~マジで。
んで、私はある名案を思いついたわけだよ! この世界より神の干渉が薄い世界の人にまかせてみよう! 面白そうだしッテネ。
それでちょうどコロッと死んでくれたのが君なんだよ~。マジナイスタイミングって感じだよね~。
てなわけで~この世界をコウイチに託したッ! なんちッて~。
追記
あ、もしかしたら夢とかで現れるかもだから、その時詳しく話すね~。
それと、あまりに私が美人だからッて発情しないように~。以上っ!
女神ペルセフォネより 』
一時、小屋の中に静寂が訪れる。
俺はお告げを何回も読み返し、やっとのことで機能停止した脳がお告げの内容を理解する。
「神適当すぎるだろおおおぉぉっ!!」
お告げを読み終わった俺は、一心不乱に封書を引き裂き投げ捨てる。粉々になった紙きれがひらひらと木の葉のごとく舞う。
急に叫びだした俺にアデーレばあさんはビクッと驚く。
「ど、どうしたんじゃ急に」
「どうしたもくそもあるかぁぁああ! 何がお告げだっ! 丸投げじゃんっ! 世界守れなくなったから俺に丸投げしてるだけじゃんっ! 魔王っぽいのって何!? なんでそんな凶悪そうなもの平凡な高校生に押し付けてるの!? バカなの!? ねぇ、バカなの!?」
俺はどこに居るのかも分からないふざけた女神に向かって、盛大なツッコミを入れる。
「コ、コウイチ、口調が素になってるぞぇ?」
アデーレばあさんの言葉にハッと我に返る。俺としたことがつい冷静さを失ってしまった。
しかしまさか、この世界に呼び出された理由が思った以上に深刻なうえこんな軽いノリだったなんて!
それにこの文の書き方がむかつく。 何このギャルのメールみたいな感じ。軽いよっ! 軽すぎるよっ!
もはやツッコミどころが多すぎて対処しきれないレベルだ。
しかしいつまでもいない相手に向かって怒っていても仕方がない。俺はもう一度深く深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、アデーレばあさんにお告げの内容を話す。
が、これを聞いたアデーレばあさん。
「なんじゃそれだけかぇ?」
と残念そうな顔をする。もっと驚くと思ったんだが。
「それだけって……?」
「わしはもっとこう…………、世界を滅ぼせ的な感じかと思うとった」
ホッホッホと笑うアデーレばあさん。
もうなんか、この人俺をどう見てるんだ?
超テキトー女神とパワフル変人ばあさんを見て、この世界の女性はみんなこうなのかと恐怖する俺であった。