表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
なんか転生した  作者: 名もなき人
第一章  なんか転生した
19/27

第十八話  なんか介入者

前回長くなったので、二つに分けてつづけて投稿しようと思ったのですが、なかなか執筆が続きませんでした;;

遅くなって申し訳ないです。

時間がない、早く魔法を完成させなければ。

おそらく白仮面はフィリティアナ姫との約束は守らないとふんだので、俺はリリスに派手に動かないでほしいと頼んだ。フィリティアナ姫を拘束後、きっと邪魔な連中の排除にかかるはずだ。


俺は目を閉じて意識を集中させる。そして頭の中で思い浮かべた、身体能力強化補助魔法の魔法陣の配列をすべて逆にして展開し始めた。

魔法陣逆展開。

俺はこの魔法陣の展開方法をそう呼んでいる。〝呼んでいる〟というのは、この魔法陣の展開方法がどの書物にも載っていなかったからである。俺が初めて開発したことになるのか、それとも、ただアデーレばあさんの家の書物に、たまたま記載されていなかったのかのどちらかだが、名称がないと使いづらいのでそう呼ぶことにしたのだ。この展開方法を考えついたときに、アデーレばあさんに「むちゃくちゃじゃのぅ……」と言われたので、少なくともアデーレばあさんは知らなかったらしい。


魔法陣逆展開は、その名称から連想できるように、魔法の効果を逆転させる能力がある。つまり身体能力強化の補助魔法を逆展開すると、掛けた相手の身体能力をおとすことができるのだ。

俺がこの展開方法を思いついたのは、前世でやっていたゲーム内の魔法に、敵の攻撃力や防御力を下げる魔法があるのを思い出したからだ。

一通り補助魔法を習った後、こういった能力低下の補助魔法がないことに気付いた俺は、逆に魔法陣を展開すること習得し、この魔法陣逆展開を完成させたのだった。


ただ、この魔法陣を展開するのには、普通の魔法陣展開に比べ結構な時間がかかる。俺は多少焦りながらも、正確に魔法陣を展開していく。

良し、あともう少し……。

あともう少しで魔法陣が完成しようとした時、俺の集中を乱す出来事が起こる。


「なにをしているのです!? 彼女たちには手を出さないと……」


「それはできない相談です」


「なんですって!?」


フィリティアナ姫が白仮面に向かってそう叫ぶ。白仮面の男は、フィリティアナ姫の拘束を確認後、さっそく彼女との約束を破り、何かの魔法でリリスを束縛したのだ。

まずい! 時間がない!

俺はもう一度意識を集中させると、魔法陣の展開を続けようとした。しかし焦れば焦るほど集中は乱れていき、なかなか魔法陣を展開することができない。


「ラングを忍ばせて、内部の戦力を分析するために山賊に襲わせたり、崖に工作をして戦力を削ったりと、なかなか苦労させられましたが、これは最後の仕上げと言うものです」


「……っ! ではコウイチは貴様らのせいでっ!」


「ああ、そういえば一人魔法使いが居ましたね。本当はリリス様を殺害するための罠だったのですが、よくもまあ邪魔してくれたものですよ」


「貴様っ!」


駄目だリリス! 相手を刺激したら……。


「……少々五月蠅うるさいですね。ご自分の立場が分かっておられないようだ……ラング」


「……」


ザンッ

白仮面の命令を受けたラングは、ラナの腕を根元から一気に切り落とした。


「――――っっ!?」


声にならない悲鳴を上げ、辺りに大量の血を吹き散らせながら力なく項垂れたるラナ。その様子を見て泣き叫んでいるフィリティアナ姫と、驚きに呆然としているリリス。

俺はこの状況を見て、頭から緊張や焦りがすべて抜け落ち、展開できなかった魔法陣をすぐさま完成させた。そしてありったけの魔力を、出来上がった魔法陣に注ぐ。

絶対に許さない。

いつもとは違う魔力の流れに、嗚咽感を感じながらも魔法は何とか完成した。あとは対象の絞り込みだけなのだが、敵が思った以上に散らばっているうえに、距離が離れすぎていたため、さらに時間がかかってしまった。

その間にも、白仮面の部下たちがリリスを取り囲み、鎧や衣服を剥ぎ始めていた。

あいつ絶対殺す!


準備ができた俺は、岩陰から出て対象たちに向かって一気に魔力を開放した。


『アンチ・オムネスブースト』


魔法は正常に発動。対象者が次々と倒れていく。

身動き一つできないくらい、ありったけの魔力を込めたのでしばらく動くことはかなわないはずだ。それを合図に鎧を付け直したリリスが、片っ端から賊の殲滅にかかった。ラナを拘束していたラングも力を奪われて、ラナに蹴りを入れられて倒れた。


「なっ……! 何をしているのですか!」


驚きを隠せない白仮面。

だが白仮面が力衰える様子はない。おそらく抵抗レジストの魔法具を持っているのだろう。一番厄介な相手を残してしまったがちょうどいい。


「あいつは俺の手で」


『モノ・オムネスブースト』

『ジ・オムネスブースト』

『トリ・オムネスブースト』


3ランクの身体能力上昇補助魔法を自分の体に掛ける。同じ補助魔法の重ね掛けはできないのだが、ランクが違えば重ね掛けは可能。ただその重ね掛けによる体の負荷に耐えられる、強力な肉体が必要となる。俺はアデーレばあさんに補助魔法の重ね掛けの修行を受けていたので、この負荷には慣れてはいたのだが、使用後かなり疲れてしまうのであまり多用はしたくないのだ。

だけど今はそんなこと関係ない。


『テトラ・オムネスブースト』


魔法の負荷がさらに強まり、ギシギシ全身の骨が悲鳴を上げた。普通ならば急激な筋力の上昇により、骨と筋肉を繋いでいる腱が切れてしまったり、骨自体が砕けてしまってもおかしくはないだろう。だけど俺は骨折はしない、筋肉の断裂も起さない。俺は体中にかかる魔法の負荷に、懐かしさを覚えながら白仮面の男を見据えた。


「ただのFランク魔法使いだと思っていたら、とんだ食わせ者ですね……」


白仮面の男もようやく俺の存在に気付いたようだ。周りの賊たちはリリスがほとんど排除してくれた。あとは俺の役目だな。


「―――ヘカテー 闇は其の制裁をもって罪人に苦なる生を与える―――」


白仮面の男の足元から黒い魔法陣が出現し、どす黒い光がリリスが殺した賊たちに降り注ぐ。するとすでに命が尽きたはずの賊たちが、よろよろと起きだし始めた。その姿はまるでゾンビ。いや、まるでではなく本物のゾンビであった。


「邪魔をしてくれたお礼はたっぷりとさせていただきます」


白仮面が腕を前に着きだすと同時に、生き返った数十体の賊のゾンビたちが一気にこちらに攻めてきた。

速いな……生前とは比べ物にならない。

闇魔法はここまで人を変えてしまうのか。白仮面に操られている賊のゾンビたちは、人間とは思えない走り方や武器の構え方をしている。もはやただの化け物だ。


「……お前たちも災難だったな」


俺はゾンビ化した賊たちを憐れみの眼差しで見つめると、一瞬でゾンビの群れに突っ込んで反撃される間もなく全員の顔面を殴り潰した。なぜ頭を狙ったのかと言うと、よくゾンビものの映画に出てくるゾンビの弱点が頭だったからだが、白仮面の闇魔法に有効かどうかは分からない。

俺は脳髄液やら血やらで汚れた手をそのままに、白仮面を睨みつけた。


「お礼をしたいのはこっちなんだが?」


「……てっきり魔法使いかと思っていましたが、これまた予想外ですね」


「本職は魔法使いだがな」


「……本当、嫌な相手ですね」


白仮面は地面に手をつき、無詠唱で何かの魔法陣を発動させた。


「させるか!」


俺は地面を強く蹴り、一気に白仮面との距離を縮める。だが俺が白仮面に攻撃する直前に、魔法は完成し発動する。そして白仮面の下の地面が割れ、その下から巨大な何かが出現した。


グアアアァァァァァーーー!!

地響きがするほどの爆発的な咆哮に、俺は元いた場所から10メートルほど吹き飛ばされてしまう。

こいつは……。


「クックック……勇者物語にはドラゴンが付き物でしょう?」


白仮面の言う通り、俺の目の前に出現した魔物は全長30メートルほどのドラゴン。闇色に光る鱗で覆われた顔には、地獄で燃える炎のような色をした目が、ギロリにと俺を睨みつけていた。

黒鉄竜シュバルツアイゼン。

黒竜の中で一番の防御力を誇る鱗をもち、吐き出すブレスは煉獄の炎と呼ばれ金属をも溶かすといわれている。主に火山地帯で生息し、鉄鉱石が主食でその強靭な鱗は鉄鉱石によるものではないかと言われている。ギルドの規定からするとランクは。つまりBランク冒険者パーティーもしくはAランク冒険者が討伐推奨者となっている魔物である。


「では、私は出直します。コウイチと言いましたね、顔は覚えましたよ……」


「まてっ!」


グアアアアアアァァァァーーー!!

俺は白仮面を追おうとしたが、黒鉄竜はもう一度咆哮を上げると俺に向かってブレスを放ってきたので、白仮面を追うことはできなかった。

渓谷の崖に囲まれたこの場所は逃げ場が少ない。俺は後ろに飛びブレスを避ける。が、俺が滞空している間に、黒鉄竜は翼を使い低空飛行で俺との間合いを詰めてきた。

速い……っ!


固定化フィクサーション


俺は固定化の魔法を使い足場の空気を固定、そしてそれに乗りさらに上に飛び上がって、俺を噛みつこうとした黒鉄竜の鋭い牙を避ける。


重力付与グラビトン


そして空に噛みついた黒鉄竜に向かって片足を突き出し、自分に重力付与魔法をかけ蹴りを入れる。

ズズーンッ!

俺の重い蹴りをくらった黒鉄竜が、その重さに耐えきれず地面に落下。蹴りを入れた部分の鱗にひびが入った。しかしあまり効いていない様子で、すぐに体を起こすと尻尾で俺を弾いた。


「くはっ!?」


俺は岩壁に叩きつけられ、血と一緒に肺の空気が一気に吐き出された。一瞬意識が飛びそうになったが、気絶している場合ではないので何とか保つ。

くそっ! 片腕が使えないとこんなにきついとは……。

だが俺が体を動かせなかったその隙を突いて、黒鉄竜は再び俺にブレスを吐き出した。

まずいっ!


「『絶対零度アブソリュート・ゼロ』っ!」


その時、とこからともなく魔法を発動させる声が聞こえ、俺に当たる予定だったブレスが目の前で凍った。


この声は……フィリティアナ姫!?

絶対零度アブソリュート・ゼロ』とは、水の派生である氷の上級魔法で、その名の通り対象を絶対零度で凍られる魔法だ。さすが『法の大賢』というべきか、この魔法をこんな短期間で発動させることができるとは……。

と感心している場合ではない。なぜ逃げなかったんだ!


「はあああああああっ!」


その後、『魔装酔いダストクロード』状態のリリスが、俺の攻撃した後頭部のひびの入った鱗の部分に攻撃を入れる。

グァァァァアアアアーー!!

怒り狂った黒鉄竜がリリスを振り落とそうとする。が、リリスは相手の体の動きに合わせて移動しながら、さらに追撃を加えている。


「リリス! フィリティアナ姫様を連れて逃げてっ!」


「それは姫様の意に反する!」


「まだそんなことを……姫様に何かあったらどうするんだ!」


「私を誰だと思っているんだ? あの程度のトカゲに負けはしない」


「……」


まったく、フィリティアナ姫といいリリスといい、サッサと俺を見捨てて逃げればいいものを……。 


「コウイチっ! 鱗の剥げた部分を狙え!」


「……分かった!」


『ジ・オムネスブースト』


俺はリリスに身体能力上昇の補助魔法をかけた後、近くに落ちていた大きな岩石を持ち上げ黒鉄竜の顔面に向かって投げつけた。

ただの岩石といえども、投げるスピードが速いので、黒鉄竜は顔面にヒットした後大きく仰け反った。


「お前の相手は僕だ!」


グアアアアァァァァァァーーーー!

今度は俺に注意を向けた黒鉄竜が、尻尾で俺を潰そうとするが、リリスに鱗の剥げた部分を攻撃され、苦しそうに悶えている。


「『散弾水フラッシュフラッド』っ!」


リリスが黒鉄竜から離れたと同時に、フィリティアナ姫が魔法で追撃する。小さく圧縮された水の粒が、散弾銃のように黒鉄竜に襲い掛かる。そしてその散弾水のいくつかが黒鉄竜の目に着弾。視力を失った黒鉄竜は狂ったように、辺りにブレスを吐いている。

なかなかのコンビネーションだ、なんて感心している場合ではない。


『ペンタ・オムネスブースト』


俺は黒鉄竜にとどめを刺すために、さらに身体能力向上補助魔法を重ね掛けをする。ギチギチと痛む全身をなんとか我慢しながらタイミングを見計い、黒鉄竜の鱗の剥げた部分めがけて走りだす。


「はああああああああああっ!」


ズドンッ!

俺の拳が鱗の剥げた部分に命中。そのまま貫通して頭蓋骨を砕き、脳にまで達する。そしてそれを一気に引き抜く。


ギャアアアァァァオオオーー! ズズンッ

黒鉄竜は鼓膜が破けるかと思うほどの断末魔を上げると、地面に力なく倒れそのままピクリとも動かなくなった。

コウイチは体力も削られていた上に、片腕も負傷したままだったので黒鉄竜に少し苦戦してしまいました。


年末は忙しくなりそうなので、執筆はお休みさせていただきます;;


編集 鳳 紫苑さん 黄金拍車さん ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ