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なんか転生した  作者: 名もなき人
第一章  なんか転生した
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第十五話  なんか裏切られた

前回、リリスの従者を憐れんでくれとの作者のお願いに、たくさんのコメントをいただきましたw

まさかここまでくるとは……従者、お前いい読者様たちに出会えてよかったな;;

きっと従者君(仮)は天国で、この物語の成行きを見守ってくれることでしょうw


たくさんのコメントありがとうございました!

「コウイチーっ!」


リリス様は落岩が起こったところへ向かって、一心にホジョマジョさんの名前を叫んでいます。ウチもホジョマジョさんを探すために、リリス様の後を追いました。

ウチはつい感情が高まってしまって思わず泣いてしまいました。けどリリス様の言葉を聞いて目が覚めました。そうです、ホジョマジョさんが死ぬわけありません!


ウチは知ってます。ホジョマジョさんは魔力制御も完ぺきでしたし、すべての魔法を無詠唱で唱えていました。それに補助魔法とは思えないほどの魔力の質と、いままで見たことない魔法を使ってました。

ウチはあんまり魔法に詳しくないけれど、魔法陣を瞬時に同時発動する魔法使いなんて見たことがありません。


さっき使っていた付与魔法も、あんな数の落石をすべて空中に浮かせることなど本当は不可能なはずです。けれど、ホジョマジョさんはそれをやってのけました。しかもウチらが逃げている間ずっと維持し続けたのです。

だからウチは信じます。そんなすごいホジョマジョさんが死ぬはずがないと。


「コウイチーっ! 返事してくれっ!」


「返事してくださいっ!」


しかし、一向にホジョマジョさんからの返事はありません。それどころか、ホジョマジョさん自体見つけることができませんでした。

それに落石が思った以上に積み上がっていて、探すことができない場所もあります。もしそこで負傷していて動けないのであれば、落石をどかさなければなりません。落石をどかすには多くの人の力が必要です。しかし、おそらくそれでは間に合わないでしょう。


「ホジョマジョさんっ!」


せめて返事だけでもしてくれれば……。

しかし私の思いも空しく、時間だけが刻々と過ぎて行きました。


やっぱりもう……。

一瞬、またさっきのような感情がこみあげてきました。

もしかしたら死んでしまっているかも。もう二度と会えないかもしれない。ウチ達を逃がすために犠牲になった。死んでしまったのはウチらのせいだ。

ウチはいつの間にか、そんな考えで頭がいっぱいになっていきました。


ウチとリリス様がホジョマジョさんの捜索を始めてからしばらくが経ち、ウチは今頃になって、ラナさんとラングさんが来ていないことに気付きました。いままで捜索に必死になっていたせいで、ほかのことに気を回す余裕がなかったからです。


ラナさんは、ウチが混乱して泣いてしまったときにやさしく抱きしめてくれました。あとになって気付きましたが、ラナさんも目を真っ赤にして泣いていました。きっとラナさんも悲しかったんでしょう。

けれどラナさんは、自分が悲しいのも関わらずうちを慰めてくれました。だからきっとウチとリリス様と一緒に捜索に加わってくれると思っていたのですが。


ウチはラナさんが心配になって、ウチらが避難していたほうへ目を向けようとしました。しかし、


「……っ!? 伏せろっ!」


ウチはリリス様のその声を聞いて、振り向くことができずに咄嗟に体を地面に投げたしました。

ど、どうしたんですか!?


ビュンッ

すると私の頬を掠って、何か鋭いものが勢いよく通過して行きました。そしてそのまま岩に突き刺さって止まりました。

これは……弓矢? でもなんで……。


ツツー

ウチは頬から流れる血を袖で拭い、状況確認のためあたりを見渡しました。するとリリス様が5人ほどの顔をフードで隠したものたちに囲まれているのが目に入りました。

まさかこの前ホジョマジョさんが話していた賊なんでしょうか。ウチは攻撃を受けてからやっとその賊たちの気配に気づきました。

つまりそれほど隠密行動に長けているということです。この前襲ってきた山賊とは比べ物にならない威圧感を、その賊たち一人一人から感じます。

なんてタイミングの悪さでしょうか。ウチ達は一刻も早くホジョマジョさんを探さなければいけないのに。


「貴様ら……私は今取り込み中だ、去れ。もし殺されたいのなら後にしてくれ」


スッとリリス様の目の色が変わります。それに伴って、肌で感じられるほどのものすごい殺気を放っています。さすが二つ名の持ち主です。いくらこの賊たちが手強いといっても、リリス様には絶対にかなわないでしょう。


「……」


賊たちは誰一人声をあげません。ただリリス様の一挙一動を警戒しながら、何かを待っているような感じがします。

相手はおそらく殺し専門の賊で誰かに雇われたのでしょう。山賊とは桁違いの統率感があります。だぶんこの賊たちの目的はいリリス様の殺害、もしくは誘拐だと思います。


ウチは敵の動きを警戒しながら、弓を構え矢を抜きます。いつでもリリス様を援護できるように、弓を握る手に力を入れます。


「もう一度言う、去れっ! そして次はない……」


リリス様が腰にさしている剣に手をかけました。


「つれないですね、リリス様。そのような冷たいことを言わずに少し私どもにお付き合い願えませんか?」


すると後からやってきた一人が、リリス様の言葉に答えました。


この人……なに?

その男か女かわからないような声の主は、ほかの賊たちと違っていて、フードで隠した顔は白い仮面で覆われていました。その仮面には穴が空いておらず、色も飾りも窪みもない、そんなものでした。


しかしそれだけが違っているというわけではありませんでした。

ほかの賊たちとは比べ物にならないほどの威圧感。そう、この白仮面が纏っている雰囲気は、今までに感じたことがないようなものでした。

仮面で目は隠れているはずなのに、ウチらのすべてを見据えられているかのような悪寒を感じます。白仮面はただ立っているだけなのに、ウチは戦慄が走って動くこともできなくなりました。


「次はないと言ったはずだが?」


しかしリリス様は、その白仮面に怯むことなく相手を鋭く睨んでいます。そして真っ赤な紅の目が光を宿し、髪からは魔力の粒子がこぼれ始めました。リリス様のスキル『魔装酔いダストクロード』が発動したのです。

ウチはそのリリス様の姿を見て、怯えていた自分を恥じて、自分の心を落ち着かせました。

大丈夫、ウチらは負けないです。早くこの人たちを倒してホジョマジョさんを助けるんです。


私も弓矢を構えて戦闘態勢に入ります。しかし相手の白仮面は、ウチらに少しの警戒もしない様子でまた話しかけてきました。


「まあまあ、落ち着いてください。……でないと、あなたの大切なお仲間が、また一人減ることになりますよ?」


「なんだと!?」


ウチは白仮面が指差した方向を見ました。そしてうちの目に、信じられない光景が映りました。

そこにはバスタードソードを首にあてられ人質にされているラナさんと、ラナさんを人質にしているラングさんがいました。


「なっ!?」


「クックック……なあに、簡単なお話ですよ。ラングは私どもの仲間で、あなたがたはラングに騙され裏切られたのですよ」


「なんだと……」


驚愕の表情を浮かべるリリス様。睨みつけてる先のラングさんは無表情のまま、ただラナを逃がすまいとバスタードソードを構えていました。

ラングさん……なんで……?


「貴様……っ!」


「そう熱くならないで下さい、リリス様。彼は何にも悪くないのですよ? ただ私どもの命令に従っただけ。だから今私が合図一つすれば、一瞬にしてあの小娘の頭を切り落とすでしょう」


「くっ……」


クックック……。

白仮面がこの状況がおもしろいのか、気持ちの悪い声で笑いました。リリス様は悔しそうな顔で、白仮面を睨みつけます。

なんて卑怯なやり方でしょうか。それにまさかラングさんが裏切るなんて……。

衝撃的で残酷な真実に、ウチは怒りを覚えました。

だけどウチにはどうすることもできなくて、それがまた悔しくて。ウチはただことの成行きを見守ることしかできないのでした。


「私が目的なのだろうっ! その子は関係ない!」


「関係ないとは、護衛として雇っておいて今更ですね。 それに何を勘違いしているのか、私どもの目的はあなた様ではありません」


「なんだと!? じゃあ一体何が……」


「クックック……そんなこと決まっているではありませんか。私どもの目的は、そこにいるウルズ王国第一王女フィリティアナ・ウルズ・アルテミス様です」


「……っ!?」


「……え?」


そういって白仮面はウチのほうへ指をさしました。


「な、何を言ってるんですかっ!?」


ウチは何が何だか分からず混乱しています。

この人は何を言っているのでしょう。ウチが第一王女? そんなはずはありません。ウチはミレイヤ・ホリス。ヴィロムスでリリス様の護衛のクエストを受けた、ただの冒険者です。


しかしリリス様は、今までにないほど驚いた顔をしています。まさか白仮面の話を信じてしまったのでしょうか。


「デタラメ言わないでくださいっ! 意味が分かりません!」


ウチは白仮面の男にそう抗議する。


「いいえ、あなたはフィリティアナ姫ですよ。私どもの情報網を甘く見ないでほしいです。……しかしすばらしい擬態ですね。情報がなければ気付きませんでしたよ」


クックック……。

白仮面の男は、また気持の悪い声で笑う。

擬態……? 何のことでしょうか。この白仮面はウチが変装でもしていると思っているのでしょうか。


「違いますっ! ウチは……」


「姿形だけではなく思考や記憶、人格までも完ぺきに擬態する上級魔法。使用者は対象の記憶などのすべての情報を、疑似の人格に植えこめ自らの記憶を内へと閉じ込める」


「……」


「『仮装変格トランス』。擬態魔法の最上位に位置する、高等魔法。ですよね? リリス様」


「くっ……!」


リリス様が悔しそうに唇をかみしめています。

記憶、人格の擬態……自分の記憶を閉じ込める? どういう……ことですか?


「ウチはフィリティアナ姫様ではありません!」


「……では聞きましょうか? あなたはこの依頼を受ける以前。どこで何をしていましたか?」


「それは……」


ウチはなぜか返答することができませんでした。


「クックック……思い出せないでしょう? それが擬態の証拠ですよ」


そう、思い出せないです。白仮面に言われて気付きました。

ウチはあの日クエストを受けたところまでは思い出せますが、その前の記憶が全く思い出せませんでした。何か記憶に霧がかかったようにぼやけて、あやふやになっています。

これはどういうことですか!? ウチが誰なのか、どう育ってきたのかはわかるのに、クエストを受けた周辺の記憶が思い出せません。


「う、ウチは……違います」


「そしてその『仮装変格トランス』魔法は、本人が真実を知ることによって解除されます」


「貴様ぁっ!」


リリス様が何か白仮面に叫んでいるような気がしましたが、ウチはだんだんと意識が遠のいていって、聞き取ることができませんでした。


――――ウチが……フィリティアナ姫様?


「クックック……。そう……あなた様はフィリティアナ姫です」


――――そうね、私はフィリティアナ。フィリティアナ・ウルズ・アルテミス。

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