第十一話 なんか来た
テストが週末をはさむということで、久々にサイトを覗くと……。
「な、なんじゃこりゃぁッ!?」
なんと日間ランキング1位に小説の名前が!?
嬉しさのあまり手が震えていますw
皆さまのおかげです! 本当にありまとうございます!
またご指摘のコメントやご感想等も増えてきています。
これからもよろしくお願いしますっ!
俺は自分の荷物から鍋と瓶を取り出す。脳内では某3分料理番組のテーマソングが流れている。
鍋に瓶の中に入っていた植物性の油を注ぎ焚き火を利用して熱する。この植物性の油というのはチェリオイルといって、『チェリ』と呼ばれる果実から絞ったものらしいのだが、その性質は地球でいうオリーブオイルと酷似している。
そしてこの世界で一般の食用肉である『クロウドバード』という鳥の魔物の肉を適度な大きさに切り、熱した鍋に入れてソテーする。
これと同様に野菜のほうも時間を調節しながらソテーする。もちろん、地球の野菜とは違うので、俺がこの料理に合うのを選んだ。少し食感やら色合いやらは違うが、味は保証できる。
次に俺は荷物からもう一つ瓶を取り出す。この中には何種類ものスパイスをブレンドさせた俺特性スパイスに、調味料などを混ぜ込んだものが入っている。それをもう一つ用意した鍋に入れて熱し、今日の野営場所の近くにあったきれいな湖でとれた水(もちろん煮沸殺菌をしている)を入れながら混ぜて、スープを作る。
軽く煮立ってきたら、先ほど作った肉と野菜のソテーを入れる。そしてしばらく煮込んだら完成だ。
できた茶色の料理から、スパイスのよい香りが辺りを漂い始める。俺が今作った料理はスープカレーもどきである。
このスープカレーもどきを開発するのに俺はどんだけ苦労したことか。
あれは俺がこの世界に転生して10年が経ったころだろうか。せっかく前世の記憶をもってして生まれてきたのだから前世の知識を生かしたい。ということで、俺の趣味である料理作りをしよう思ったのだ。
まず、アデーレばあさんに質問して似ている料理がないか探した。すると衝撃の事実が発覚する。なんとこの世界にはカレーがなかったのだ。
前世の俺は結構料理に凝っていて、俺の唯一の特技といえただろう。その中でも特にカレーは、スパイスから自分でブレンドさせるほどの凝り様だった。だからカレーがないと聞いた時のショックは海よりも深く山よりも高いものだった。
しかしいつまでも落ち込んでても仕方がない、ないなら作ればいいじゃないか!
そして俺は決心した。絶対にカレーを作ってやるぞと。
カレーを作るにあたって、材料である肉や野菜は似ているものを探すだけでよかった。しかしカレー粉はこの世界には存在していないので、一から自分で作らなければならなかった。
俺は街に出るのをなぜかアデーレばあさんに禁止されていたので、アデーレばあさんに頼んで様々な種類の香辛料を買ってきてもらった。
それらを使い、調味料なども研究して、試行錯誤の末で地球のカレーの味に近いものができたのは、なんと2年後のことだった。
そんな期間を掛けてまで馬鹿じゃないの? と第三者がいればそう思うだろうが、それだけ俺のカレーに対する熱意は強かったのだ。
本当はカレーライスを作りたかったのだが、この世界に米がないので仕方がない。
「クンクンクン。ふぇ~、いい匂いですっ! なんですかこれはっ!」
匂いにつられてか、ミレイヤがこっちにやってくる。犬かお前は。
俺以外の冒険者たちは、寝る場所の確保のためあたりに魔物がいないか見回りに行っていたはずだが、どうやらミレイヤが担当した地域は早めに終わったらしい。
「ふっふっふ。僕のオリジナル料理だよ。もうできたからみんな呼んできて」
「了解ですっ! シェフッ!」
なんかまたあだ名をつけられた……。
ミレイヤは相当お腹が空いているようで、ものすごいスピードで森の中へ戻っていった。
「よし、僕はリリスさんを呼んできますかね」
鍋に木でできたふたをかぶせ、リリスと従者がいる馬車の方へ向かった。
するとリリスが従者と何かを話し合っているのが見えた。
「……ではこのまま今までと同じように行動してくれ。ただ、念のためいつ襲撃にあってもいいように準備はしておいてくれ」
「かしこまりました」
どうやら俺が報告した、俺たちをつけてきている賊のことを話し合っていたらしい。
ちなみに今、賊の気配はない。俺たちが移動を中断すると後を引き返していったのだ。しかし諦めたわけではなさそうだ。俺たちが移動しないことを確認して距離をとったのだろう。
「あの、話し終わりましたか?」
話が終ったようだったので、リリスに近づき声をかける。
「コウイチか。今終わったところだが?」
「夕飯の支度が出来たので呼びに来ました」
「そうか。では君たちはいってくれ、私は後でいい。コウイチ、頼む」
そういってリリスは、従者たちを食事にと促す。
今日もか……。
リリスはこの4日間、一度も俺たちと食事をとったことがない。みんなで食べたほうがおいしいのにな。
「それと、賊のことを皆に話してくれ。もちろん周囲に敵がいないか確認してからだ」
「分かりました」
話が終わると、リリスは馬車の中へ入ってしまった。
俺はリリスの従者だけを連れて元の場所に帰る。するとそこには、もうすでに冒険者たちが待機していた。
「何よこの奇妙な物体はっ! これって料理なのっ!?」
「……初めて見る」
「でもいい匂いですぅ~。早く食べましょうっ!」
3人のそれぞれの意見を聞いた後、リリスの従者を合わせた全員に木製の皿とスプーンを配り、スープカレーもどきを注ぐ。
「さあ、食べてください! お残しは許しまへんでぇ?」
某忍者アニメの食堂のおばちゃんの口癖をまねる。一回やってみたかったんだよね。
「いただきまーすっ!」
ミレイヤは俺がそう促した瞬間に、我先にとスープカレーもどきに口をつける。
「ど、どうでしょうか? 『料理評論家のミレイヤ』さん……」
ドキドキと自称『料理評論家のミレイヤ』の言葉を待つ。他の人たちも見たことのない料理に戸惑っているようで、ミレイヤの反応を待っていた。
「……!? な、なんですかこれっ! すごくおいしいですっ! 星7つですっ!」
おおっ! 高評価っぽい? しかし星の上限が気になるな……。
「あれ、ホントだ。少し辛くておいしい……」
「うまい」
続いてラナとラングがスープカレーもどきを口に入れる。
うんうん、カレーが嫌いな子なんていないのさ。それにアウトドアっぽくてちょうどいいし。
「あんた戦闘以外はやるじゃない」
「……戦闘以外ってのは余計だよ」
その後リリスの従者も食べてくれたが、どうやら気に入ってくれたようだった。
料理作戦は大成功で、険悪だった雰囲気も同じ釜の飯を食べたおかげか、和やかなものとなった。
ただ、ここに居ないリリスが気がかりだったが……。
その後、賊のことをみなに話し、警戒するようにと呼び掛けたが、特にあわてる様子もなかった。どうやら俺が、動揺すると心配したのは杞憂だったらしい。
食事が終わると、野営場所にある湖の水で食器を洗い(ちゃんと使った水は地面に捨てた)、それぞれ自分の寝る場所を決めて就寝する。
ちなみに風呂はないので、俺たちは旅の間ずっと風呂に入っていない。そもそもこの世界は風呂に入るという習慣がなく、入るとしても上級貴族が趣味で入るくらいだ。一般の平民は、とてもじゃないけど入ることはできない。
だが、別に不潔だというわけではない。この世界には浄化の魔法というものがあり、体についた塵や埃、汗や老廃物などをきれいに取り払うことができるのだ。この魔法は普通の平民でも使えるほど簡単な魔法であり、この魔法が存在したせいで風呂という文化が発達しなかったのだろう。
もちろん俺も使えるのだが、俺はこの魔法が嫌いである。
なぜって? 風呂がないとポロリがないだろ?
……えー、こほんっ! まあ要するに風呂は必要ないのだが、親に捨てられた孤児や浮浪人のような、地位が平民以下の人々が集まるスラムでは、魔法自体使えるものが少なく衛生がものすごく悪いらしい。
だからアデーレばあさんにスラムにはあまり近づくなと言われた。言われなくても近づかないけどね。
まあ、それはおいといて。
俺は夜警の当番なので、今夜は徹夜である。が、ほかの冒険者は今までちゃんとこなしてきたので、俺も気を抜かないように頑張る。
頑張るとはいっても、眠らないようにするのと、常時身体能力強化の補助魔法をかけるだけだが。
パチパチッ
特にすることがない俺は、料理にも使った焚き火にまた新たな枝を入れ、火力を維持させる。
「そういえば、リリスはスープカレーもどきちゃんと食べてくれたかな?」
食事が終わった後リリスが乗っている馬車に持っていったのだが、受け取った後また馬車の中に入ってしまったので、気に入ってもらえたかは分からない。
「もう寝てるのかな……」
リリスの寝顔をちょっと想像してみる。あんなかわいいのであれば、寝顔もきっとかわいいはずだ。
ちなみにラナは毛布を完全に被っていて見えない。別に見たくはないが、苦しくないんだろうか?
ミレイヤは「みゅ~」と変な寝言を言って自分の背丈ほどにくるんだ布を抱き枕として抱いて寝ている。いつの間にか着替えた水色の寝巻を着て、純粋な天使のような寝顔をしていた。ああ~なんか癒される。
ラングは鎧を装着したまま、木にもたれ掛かって胡座かいて寝てる。相変わらず男らしいな、切りつけたらすぐ目を覚まして白刃取りとかしてきそう……。
リリスはどうなんだろうか?
と、やることがなさ過ぎて変なことを考えてしまう。
「……」
パチパチッ
現在皆さん熟睡中。馬車覗くなら今ですよ、今城さん。
「……まあそんなことしないけどね」
ふっ俺のチキンレベルを侮っては困る。
前世では前を並行している女子を抜くのも躊躇うほどのチキンだったからなっ!(キリッ
「……」
パチパチッ
なんか、虚しくなってきた……。
焚火にくべる木の枝が少なくなってきたので、散歩ついでに集めてこようかなっと考えていた、その時。
「……気配を感じる」
強化された俺の五感が、敵の存在を察知する。
俺たちをつけてきていた奴らか? いやそれにしてはあまりに気配を隠す気がない。それどころか殺気まで放っている。
「チッ、新手か……!」
おそらく旅人を狙った山賊だろう。俺たちをつけていた奴らより力量はかなり劣るだろうが、数は多く20人~25人ほどだった。そいつらが俺たちの野営場所を目指してやってきている。
くそっ焚き火を消しておけばよかった。魔物避けにとそのままにしていたのが、あだになったか。
『隠密念話』
俺は全員に念話の魔法を唱える。
(みんな起きてくれっ! 敵襲だ!)
(了解)
(はやっ!? ラングさん返答はやいよ!?)
早速ラングから念話が返ってくる。絶対白刃取りできるぞこいつ……。
(もうっ! 気持ちよく寝てたのにっ!? ……敵? ぶっコロスッ!)
しばらくしてラナからも返事が返ってくる。
寝起き、怖いですラナさん。なんか盗賊がかわいそうになってきた……。
(私も参戦する。攻撃の合図はコウイチに任せる。皆、寝ているふりをして待機しておいてくれ)
(参戦するってリリスさん、大丈夫なんですか?)
(この程度の輩など問題ない)
リリスから冷静な指示が出される。どうやらリリスも敵が近付いていることに気付いていたらしい。
それに妙に強気だ。腰に双剣をさしていたし、もしかしてリリスは強いのか?
(ふぇ~もう朝ですか? ……って、えぇ!? て、敵ですか!?)
最後にミレイヤからあわてた様子の返事が返ってくる。
うん、これが普通の反応だよ? みんな。
俺の念話に対し、様々な返答が返ってきた。……まったく、頼もしい限りだな。
盗賊か何だか知らないけど、どうやらはずれくじを引いたようだぞ? 俺たちを敵に回したことを後悔するがいいっ!
と戦闘で一番役に立ってない俺が、パチパチと音を立てる焚き火の明かりに照らされながら、一人不敵に笑うのであった。
「どうして詠唱によって発動するのに、魔法に上限があるのか」という質問をいただいたので、説明下手なり説明します^^;
詠唱は魔法陣を発動する時の手助けになるだけであって、詠唱自体で魔法が発動するわけではありません。
魔法陣とはコンピュータでいうプログラムのようなものであって、そのプログラムを頭でイメージすることによって発動します。
詠唱は数学でいう公式のようなもので、言葉に魔力を乗せることによって、頭でイメージするプログラムの量を減らすことができます。
しかし詠唱は時間を取られてしまう上に、自分がどの魔法を使うのかがばれてしまうデメリットがあります。
そして魔法陣に魔力を注ぐことによって魔法が発動します。
魔法を発動するためには魔法陣に書きいれるプログラムを暗記しなければならないので、習得数にだいたいの制限があるという感じです。
無詠唱とは魔法を使いなれたころ、詠唱の補助なしでもプログラムをイメージできるというものです。
っと言う設定です^^;
あー……本当説明へたくそですいません><;
ただ、何となくそういうイメージだということで解釈していただければ嬉しいです。
後書き長文失礼しました^^;