第十話 なんかまた現れた
なぜか急激にお気に入りが増えているっ!?
ちらっと日間ランキングをのぞいてみると、自分の小説が載っていて、ものすごくうれしかったですっ!
皆さんありがとうございますっ!
――――キーンコーンカーンコーン
聞きなれたチャイムの音がする。俺は伏せた顔をゆっくりと持ち上げて大きく伸びをした。
どうやら授業の途中で寝てしまっていたらしい。
俺は大きな欠伸をすると、ふとおかしなことに気付く。
今、教室では休み時間になると聞こえてくる特有の騒がしい活気がなく、シンと静まり返っている。
俺は周りをぐるりと見渡してみる。
「誰もいない……?」
さらにおかしなことに、窓の外が真っ暗で何も見えないし、教室にあるものすべてが白色になっていた。
「あーこれは、アレだな」
人が消えた白色の教室。真っ暗闇の窓の外。
このシチュエーションはまさしくアレである。
「俺、白内障になったんだな」
「むしろそっちのほうがありえないっ!?」
誰もいないはずの教室の俺の後ろから声が聞こえた。
振り向いてみるとそこには、絹のようなきれいな金髪の美少女、女神ペルセフォネが立っていた。
「久しぶり、ペルセフォネ。6年ぶりだね」
「6年経ってもあまり変わらないのねあなたは…。ボケキャラになる気? それともそれが素なの?」
「それで本日はどのような御用件で?」
「スルーっ!? そこスルーするの!?」
「人には触れてはいけない過去があるのさ……」
「そ、そうなの……って過去関係なくない!?」
「それで本日はどのような御用件で?」
「…………まあ、いいわ。今日はあなたに大事なことを伝えに来たの」
ツッコミモードから仕事モードに切り替わるペルセフォネ。しょうがない、今日はこのくらいにしてやるか。
だが、あと一つだけ。ペルセフォネが話を始める前に言いたいことがあった。
「そうなんだ。……でもなんでうちの高校の制服着てるの?」
そう。ペルセフォネは前回現れた時に来ていた白い衣ではなく、うちの高校の女子の制服を着用していたのだ。一般的なセーラー服に大きめのスカーフが特徴的な制服である。
「い、いやこれは……。ニンフがどうしても着ていけって言うから……」
「ニンフ?」
「そうよ。この前話した私の友人の女神」
「ほう……」
もしこれがアニメや漫画であったのならば、俺の目が『キラーン』と言う効果音とともに光ったであろう。
そうか、闇討ちの相手はニンフって名前なんだな。よしよし。
「……あなた何か企んでるわね?」
「いいえ、滅相もございません女神様」
「そういうのはニヤニヤを止めてから言いなさいよ……」
はぁ、とため息をつくペルセフォネ。
どうしたんだ? 仕事で疲れてるんじゃないか?
「とにかく大事な話っていうのは……」
「キャーッ! カワイィッ!」
ペルセフォネが話を切り出そうとしたその時、俺とペルセフォネしかいないはずのこの教室で、第3者の声が聞こえた。
俺は声のしたほうへ振り向く。するとそこにはペルセフォネと同じで俺の高校の制服を着た少女が立っていた。
ふんわりとした金色の巻き毛に、おっとりとした垂れ目。身長はペルセフォネより少し高いくらいか。興味津々と俺を見ているエメラルドグリーンの瞳が印象的な、ペルセフォネに劣ることのない美少女だ。ただ制服を押し上げる胸の威圧感がペルセフォネとは違っていたが……。
「この子がペルっちが話してたこーいちって子? お人形みたい! イヤーンカワイイ!」
まるでおもちゃ屋でかわいいぬいぐるみを見つけた現代日本風女子のような反応で俺のことを見てくる。
この人も女神なのか?
「ああもうっ! 話の途中だったのに! そうよニンフ、この子が今城幸一。私が選んだ、アルマータの救世主よ」
「やっぱり? なんか救世主っぽいオーラ出てると思ったんだよね~マジで」
「そうでしょ? やっぱ私の目に狂いはなかったわ」
どんなオーラだよ……。なんか2人で勝手に盛り上がっているみたいだけど俺は救世主になった覚えはない。
「はじめまして~、みんなのアイドルニンフちゃんで~す! よろしくね、こーいちっ!」
「は、はぁ~、こちらこそよろしく……」
妙にテンションの高い女神さまだな。おっと、いかんいかんっ! 相手のペースに惑わされるなっ! こいつは俺が闇討ちしようとしていた激軽女神ニンフじゃないかっ!
「ねぇねぇペルっち! こーいちちょーだいっ!」
「ダメよっ! コウイチは私のなんだからっ!」
ペルセフォネの物になった覚えはないのだが……。
「えぇ~。じゃあせめてモフモフするぅ~」
そういってニンフは俺に近づいてきて腕を俺の腕に巻きつかせてきた。って、えぇっ!?
「あぁ~、なんか癒されるって感じ? 救世主君がこんなにカワイイなんてチョーびっくりなんですけど」
「それは同感ね。転生した体は私がお願いした人間が用意してくれたらしいんだけど、私も予想外だったわ」
勝手に癒されないでほしい。そして、
「あ、あの…ニンフさん? あ、あた…あたってるんですけど……!?」
そう、ニンフの腕が巻きついた俺の腕に、ムニュっと柔らかい何かが……。
俺はかなりパニクっていた。前世では特に目立つこともなく、同世代の女の子に触られたことなどなかったからだ。しかもこんな美少女に。
「ふっふっふ~、この制服と同じくサービスだよ~。仮にも世界を救ってくれるかもだしね~。それにしても、焦ってるこーいちもまたたまりませんな~」
ギュッ
「~~~っ!?」
そういってさらに腕に力を込めるニンフ。俺は顔を真っ赤にしながら鼻血が出そうになるのを何とか抑える。制服を着ていたのはサービスだったのか。
や、闇討ち。そう俺は闇討ちを…………。
俺の男の決心はあっさり打ち砕かれてしまった。
「ニ、ニンフっ! コウイチで遊ばないでよね!」
ペルセフォネが助け船を出してくれる。しかし、
「ほ~らペルっちも一緒に、ね?」
「え? えぇ?」
ニンフが手招きするような動作をすると、ペルセフォネは体を浮かせて、ニンフと反対の俺の腕に腕を巻きつけてきた。
「ちょっ、ペルセフォネ!?」
「ち、違うのよ! これはニンフが勝手に!」
どうやらニンフがペルセフォネに何らかの力を使ったらしい。
やばい、なんか変な気分に。密着したため2人から香る女の子(女神だけど)特有の甘い香りが俺の思考を蝕む。
「ふふっ、どう? こーいち。両手に花、いえ女神を侍らせた気分は」
いや、どうって言われても……。
「そ、その……。ペルセフォネ。あ、あたってな――――」
「それ以上言ったら、分かってるわよね?」
ペルセフォネがにっこりと笑う。しかし目は笑っていない。
うん、言わない、もうこのネタはやめよう。俺はそう心に決めた。
「あたってな――ペ、ペルセフォネさんがかわいすぎて、マジ鼻血でそうです、はいっ!」
「……っ!? あっ! も、もうこんな時間! ニ、ニンフ帰るわよ!」
俺が変なことを言ったから怒っているのか、顔を真っ赤にしてあわてた様子でニンフを引っ張って教室のドアへ向かうペルセフォネ。
嫌われちゃったかな?
「えぇ~。じゃあまた今度ねこーいち」
引きずられながらウィンクするニンフ。
するとだんだん視界がぼやけてきた。どうやら夢は終わりを告げたらしい。
あれ? 大切な話は? まあ、また今度聞けばいいか。
そう思いながら、俺は目をつぶった。
ヴィロムスから出発して4日目。
予定より少し遅れてしまったが、俺たち一行はボニスの森へと足を踏み入れる。
ボニスの森とは、リリスの従者が言っていた王都に行くために通る大きな森で、通り抜けるために2日かかるらしい。
この森で出現するギルドで指定されている魔物のランクは最大Cで最低がEである。つまりCランクの冒険者が楽に通過できるレベルの森で、俺みたいなFランクのひよっこが手を出していい領域ではない。
しかしだからといって危険というわけでもない。
なぜなら俺たちが使う道には魔物はほとんど出現しないからだ。出たとして、精々低ランクの魔物が迷い込んだ程度だろう。高ランクの魔物は道をそれた森の奥に出没する。
このボニスの森の中央に走る1本の道は、農業が盛んなヴィロムスからの輸入品や、王都ノルンからの輸出品を出荷するために国で管理されている。定期的に国の騎士が道の周りに出現した魔物を掃除しているのだ。むしろ今まで通ってきた平原と比べたら比較的安全といえるだろう。
だが今の俺たち冒険者は護衛として雇われた身。何が起こるか分からないので、いつでも対応できるように気を緩めることはなかった。
それに森は鬱蒼と茂っていて、この人や馬車が通るために最低限整備された道以外死角が多い。だから低ランクの魔物しか出ないとしても気が抜けないのだ。
「うへ~、ホジョマジョさん。あそこに気持ち悪い虫がぁ~」
気が抜けないのだ……。
「もうっ! なんでこう森ってのはジメジメしてるの! せっかくセットした髪が台無しじゃない!」
気が抜けないはずだ。……がどうやら女子の皆さんはこの森が気に入らないみたいです。
「護衛中だ。集中しろ」
ほら怒られた。
そのように愚痴をこぼしていた女子たちはラングに注意される。
ラングは死角のない見渡しのよい平原でさえも常に周りを観察して、集中を乱すことなく自らに与えられた任務を全うしていた。ラングは護衛の鏡だよな。
しかし注意されたのが癪に障ったのかラナが言い返す。
「うるさいわね! 私が集中してないわけがないでしょう?」
「お前は敵に後ろをとられていたじゃないか」
「…っ! あ、あれはちょっと油断してただけよっ! て言うかなんであんた上から目線なわけ? 私とあなたのランクは同じだったはずよ!」
「お前がCランクとは世も末だな」
さらっと嫌味を言うラング。あれ? ラングってこういうキャラだったっけ?
「な、なんですってぇぇえ!」
怒りに顔を真っ赤にするラナ。すっかりラングの挑発に乗っている。ラナは技術は確かにあるようだが、どうも怒りっぽいところがある。
「まぁまぁ二人とも。クエスト中に喧嘩しないで。冷静になりましょう、ね?」
このままだとさらにヒートアップしそうだったので、仲介役に出てみる。
「あんたは黙ってて!」
諭す余地がない。どうやら焼け石に水だったらしい。
「み、皆さん。なんか怖いです~」
「大丈夫だよミレイヤちゃん。放っておけば治まるから」
ミレイヤが怖がっていたのでそう言ってはみたが、ラナとラングはお互いにらみ合ったまま動かない。なんだか険悪な雰囲気になってきたなと思って、再度2人に声をかけようとしたその時。
カサカサッ
補助魔法で強化された俺の耳が草と衣類が擦れる音を捉える。
魔物か? いやこの感じは……つけられているな。おそらく旅人を狙った賊、あるいはリリスを狙う者か?
察知できた人数は10人。俺が今まで気づかなかったということはかなり隠密に長けていると言っていいだろう。
みんなに伝えておいたほうがいいか? いや、下手に騒ぐと気付いたことがばれてしまうかもしれない。
『隠密念話』
俺はそう判断すると、念話の魔法を展開する。相手はリリス。状況を報告してどうするかを相談するためだ。
なぜリリスを選んだのかというと、一番冷静に判断してくれると思ったからだ。リリスはフィレンツ家の跡取りなので、おそらくこのように護衛されながらの移動に慣れているだろう。そして襲われた経験もあるはずだ。それに馬車の中に居るので表情に出ても悟られることはない。
(リリスさん、コウイチです。報告したいことがあります)
(……どうしたのだ?)
俺が急に念話したのにもかかわらず、いたって冷静に返答するリリス。さすがだ。
(僕たちをつけている者たちがいます。今確認できているのは10名、隠密に長けていて動作も訓練されているようです。)
(賊か……。皆には?)
(まだ知らせていません)
(そうか、賢明な判断だ。もしかしたら伏兵がいるとも考えられるからな。引き続き様子を見てくれ。何かあったら私に報告してほしい)
(了解)
やはりリリスを選んで正解だった。かなり状況慣れしているとみていいだろう。
「あ、あの、ホジョマジョさん。 どうしたんですか?」
ミレイヤが急に黙り込んでしまった俺を見て、心配してくれていたようだ。
「なんでもないよ。……おっと、今日の移動はここまでみたいだね」
リリスの従者の一人が、ある程度開けた場所で馬車をとめている。
「そういえば今日は僕が夕食担当だから、期待しててね」
「ホントですかっ! ウチは料理にうるさいですよ? 巷では『料理評論家のミレイヤ』として噂になっているかもしれないのですっ!」
なってるかもしれないだけかよ。
「ああ、まかしとけっ!」
この険悪な雰囲気を変えるために、元気になる料理を作るつもりだ。
自慢ではないが、俺は自分の料理の腕はかなりのものだと思う。いじめられて学校に行けなくなった妹を元気づけるために、毎日頑張って特訓したからである。
案の定、今日の移動は終わり俺たちは野営の準備に取り掛かる。
今夜の夜警は俺なので、注意を怠らないようにしなければ。と再度気を引き締めた。
友人に「ペルセフォネの友人かわいくね?」と言われたので出してみましたw
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あと、作者がテスト期間に入ってしまったため更新が遅れると思います;
申し訳ありません;;
編集 きっゃまださん Zzz...さん ありがとうございました!