関白から、最後の問い
世界を動かす力を手にしたジュンヤに、秀吉から最後の選択が届く
夜。
静かな部屋。
モニターの光だけが、浮かんでいる。
世界は、今日も動いている。
戦争。
為替。
資金。
すべてが、繋がっている。
ジュンヤは、それを見ていた。
何もせずに。
――ピロン。
メール。
差出人:秀吉
「うぃーす、あっ、ぎょい」
タップする。
本文は、短かった。
『選べ』
「御意」
それだけ。
数秒後。
もう一通、届く。
『このまま世界を動かし続けるか』
『それとも』
少し、間が空く。
『病気を治し』
『世間並みの、普通の男になるか』
ジュンヤは、画面を見つめる。
「……急だなあ」
小さく、笑う。
だが。
分かっていた。
(ずっと、これだった)
目を閉じる。
神崎の顔が、浮かぶ。
笑ってる顔。
怒ってる顔。
泣きそうな顔。
(……あのとき)
「私じゃダメなんですか」
胸が、少し痛む。
もう一度、画面を見る。
世界。
数字。
戦争。
全部、見える。
全部、触れる。
(このままいけば)
もっと上に行ける。
国家も。
戦争も。
全部。
(でも)
ジュンヤは、スマホを置く。
そして。
天井を見る。
「……疲れたな」
ぽつりと。
正直な言葉。
「……普通って、なんだろ」
少し考えて。
「……まあ、いいか」
スマホを手に取る。
返信を打つ。
指が、少しだけ止まる。
だが。
迷いはなかった。
送信。
『普通のほうで』
既読がつく。
すぐに、返信。
⸻
『うつけ者』
短い。
『まぁ、よかろう、』
一拍。
『普通が良いってか、わしからの褒美である』
ジュンヤは、少しだけ笑う。
「ありがたき幸せにございます。秀吉様」
その瞬間。
モニターの電源が落ちた。
世界が、消える。
部屋が、静かになる。
「おけ」
立ち上がる。
コートを羽織る。
外。
少し冷たい夜。
コンビニの明かり。
いつもと同じ景色。
「これが普通の男というやつなのか。あそこはもう少し大きくても良かったかな、まぁ、いいや背も伸びたし、イケメンだし」
少しだけ、笑う。
ポケットのスマホ。
もう、通知は来ない。
—
数ヶ月後。
小さな街。
「いらっしゃいませー」
間の抜けた声。
でも、太い声
コンビニのレジ。
ジュンヤが立っている。
「袋いりますか?」
普通の会話。
普通の毎日。
客が去る。
「……暇だな」
ぽつりと。
ドアが開く。
「いらっしゃいま――」
言葉が止まる。
そこにいたのは。
神崎レイナ。
ジュンヤ固まる。
しかし、彼女は、大人になったジュンヤに気がつかなかった
沈黙。
「……あの」
ジュンヤが言う。
「その……」
言葉が出ない。
「袋入りますか」
神崎が、一歩近づく。
「要らないわ」
要らない、か。
「……はい」
「ありがとうございました」
彼女からのら返事はない
世界は、今日も動いている。
だが。
彼は、もう触れない。
触れないけれど。
“選んだ”。
普通に生きられる人生
それだけで、十分だった。
秀吉様、ありがとう
ここまで読んで頂いてありがとうございます




