血で動く市場に、俺は値段をつけた
――戦争と、金と、神の視点
戦争の気配を察知したジュンヤは、原油・為替・軍需を同時に操る“史上最大のトレード”に踏み出す。
世界が、ざわついていた。
ニュースはまだ“緊張”としか言わない。
だが。
市場は、もう知っている。
「……来るな」
ジュンヤは、画面を見つめる。
点と点。
資金の流れ。
国境を越える違和感。
「原油、じわ上げ」
「為替、防衛ライン接近」
「軍需……先行してる」
誰もいない部屋で、独り言。
――ピロン。
『見えておるな』
「はい」
短く答える。
『では、どうする』
ジュンヤは、少しだけ考える。
数秒。
それだけで十分だった。
「全部、取ります」
沈黙。
そして。
『……ほう』
「原油はロング」
「有事通貨も買い」
「軍需株、入ります」
淡々と。
⸻
『欲張りじゃのう』
「連動してるんで」
当たり前のように言う。
「戦争って」
少しだけ間を置く。
「全部、繋がるんですよね」
ボタンを押す。
その瞬間。
世界のどこかで、誰かが決断を下した。
数時間後。
速報。
「国境付近で衝突」
「死傷者多数」
「緊張、一気に高まる」
市場が、暴れる。
原油――急騰。
コモディティ――逃避先。
軍需――爆発的上昇。
「……来た」
ジュンヤは、静かに呟く。
数字が、跳ねる。
増える。
増え続ける。
だが。
顔は、動かない。
「……これ」
ぽつりと。
「誰かが死んでるんですよね」
沈黙。
『そうじゃな』
秀吉は、否定しない。
「……」
ジュンヤは、画面を見る。
利益。
爆発的な利益。
「……俺、何やってるんだろ」
小さく、漏れる。
『遅いわ』
即答。
「……え?」
『おぬしは既に、その側じゃ』
言葉が、重く落ちる。
『世界はの』
静かに。
『昔から、そうやって回っておる』
「……」
『おぬしがやらずとも、誰かがやる』
否定できない。
「……でも」
ジュンヤは、食い下がる。
「じゃあ、俺がやる意味って何ですか」
ジュンヤの手が震える
少しの沈黙。
そして。
『選べるからじゃ』
「……選ぶ?」
『どこで入り、どこで降りるか』
ゆっくりと。
『どこまで壊し、どこで止めるか』
ジュンヤの目が、わずかに揺れる。
「……止める?」
『そうじゃ』
『おぬしは、“終わらせる側”にもなれる』
その言葉で。
空気が変わる。
ジュンヤは、画面を見る。
まだ上がる。
まだ取れる。
まだ儲かる。
だが。
「……ここか」
小さく言う。
ポジションを、閉じる。
「……え?」
自分でも驚く。
まだ、早い。
利益は最大じゃない。
『ほう』
秀吉が、笑う。
『欲を捨てたか』
「……違います」
ジュンヤは、首を振る。
「なんか……これ以上は」
言葉を探す。
「気持ち悪いんで」
沈黙。
そして。
『それでよい』
その瞬間。
市場は、さらに跳ねた。
「……あーあ」
ジュンヤが苦笑する。
「もっと取れましたね」
『頭とシッポはくれてやれ、じゃが』
「はい」
『おぬしは、“人でおった”』
静かに。
ジュンヤは、少しだけ笑う。
「……ギリギリ人ですね」
その日。
ジュンヤは、史上最大級の利益を出した。
だが。
“最大”ではなかった。
そして。
それが。
彼を“ただの怪物”にしなかった。
数日後。
世界は、まだ揺れていた。
だが。
市場には、新しい噂が流れる。
「見えないトレーダーがいる」
「利益より、“線”を引くやつだ」
「そいつは――」
名前も顔も知られていない。
だが。
確実に。
“世界のどこかで、ブレーキを踏んだ者”がいる。
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