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秀吉からのショートメールで人生逆転した俺、身長148cmから1兆円稼いだ話  作者: 暁柊


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11/13

3兆円のその先に、俺は何も持っていないと気付く

数ヶ月後。


神崎レイナの会社は――

“世界”に名を刻んでいた。


「今期利益、過去最高を更新しました」


「海外ファンドが追随できていません」


「為替市場にも影響が出ています」


報告が飛び交う。


だが。


その中心にいる男は。


「……えっと、これでいいんですか?」


相変わらずだった。



ジュンヤのトレードは、もはや異常ではなかった。


“現象”だった。


再現性のある奇跡。


神崎は、隣でモニターを見つめる。


(全部……教わった通り)


タイミング。


リスクの取り方。


そして。


“考えないこと”。


「……入ります」


クリック。


市場が動く。


それを見て、誰かが呟いた。


「まただ……」



夜。


オフィスは静まり返っていた。


神崎は、一人で残っていた。


机の上には、膨大なデータ。


だが。


見ているのは、そこじゃない。


「……いない」


ジュンヤの席。


空っぽ。


最近、増えていた。


ふといなくなる時間が。



その頃。


ジュンヤは、部屋にいた。


静かな部屋。


スマホが光る。


――ピロン。


『ようやったな』


「……ありがとうございます」


少しだけ、疲れた声。


『世界相手に勝つとはのう』


「勝ったっていうか……」


天井を見る。


「なんか、流れに乗っただけです」


『それが出来る者が、どれだけおると思う』



少しの沈黙。


そして。


『で』


秀吉の声が、少し変わる。


『何を悩んでおる』


「……」


ジュンヤは、目を閉じる。


「……分かります?」


『分からんと思うか?』


小さく、笑う気配。



「……俺」


言葉を選ぶ。


「多分、人として足りてないです」


『ほう』


「お金は、もうどうでもよくて」


正直な声。


「でも……それ以外が」


言葉が止まる。



『女のことか』


「……はい」


否定しない。


もう。


誤魔化さない。



「神崎さん……いい人なんです」


小さく言う。


「強いし、優しいし……ちゃんとしてるし」


『うむ』


「でも俺」


手を見る。


細い。


子供みたいな手。


「身体も、ちゃんとしてなくて」


『……』


「たぶん……普通に付き合っても」


声が少し震える。


「満足させられないです」


静寂。



『それで、逃げるか』


「逃げるっていうか……」


「壊したくないんです」


正直な本音。


「今のままの方が、きっと……」


言い切れない。



しばらく、沈黙。


そして。


『アホじゃな』


「……え?」


予想外の一言。



『おぬし、何を基準に“満足”を決めとる』


「え……」


『身体か?金か?』


「……」


『そんなもので決まるなら、世の中の夫婦は全て幸せじゃ』


言葉が、刺さる。



「でも……」


ジュンヤは、絞り出す。


「それでも、俺は」


『怖いだけじゃろう』


「……」


言い返せない。



『まあよい』


秀吉の声が、少し柔らぐ。


『選ぶのはおぬしじゃ』


「……はい」


『ただし一つ』


「はい」


『後悔する方を選べ』


「……え?」



『どちらを選んでも後悔する』


断言。


『ならば、より強く後悔する方を選べ』


静かに。


「それが、人の生き方じゃ」



通信が切れる。


部屋に、静寂が戻る。



翌日。


オフィス。


「おはようございます」


ジュンヤは、いつも通りだった。


神崎は、少しだけ安心する。


(……よかった)


だが。


何かが違う。


空気が。



「神崎さん」


「はい」


「少し、いいですか」


真面目な声。


初めてだった。


こんなトーン。



会議室。


二人きり。


「……どうしました?」


神崎が聞く。


少しだけ、不安。



「俺、辞めます」


「……え?」


理解が、追いつかない。


「もう、ここには来ません」


「ちょっと待ってください」


立ち上がる。


「なんでですか」


「やること、終わったので」


「終わってません!」


即答。


「まだこれから――」


「神崎さん」


遮られる。


優しく。


でも、強く。



「全部、もうできるじゃないですか」


言葉が、詰まる。


確かに。


できる。


彼に教わったことは、全部。



「だから、大丈夫です」


笑う。


いつもの、少し頼りない笑顔。



「……私じゃダメなんですか」


気づいたら、言っていた。


止められなかった。



ジュンヤは、少しだけ驚く。


そして。


目を逸らした。


「……ダメじゃないです」


「じゃあなんで!」


声が、震える。



「……俺が、ダメなんです」


静かに。



「ちゃんとした人じゃないから」


「何言ってるんですか」


「ちゃんと、できないから」


何を、とは言わない。


でも。


分かってしまう。



神崎は、数秒黙った。


そして。


「……そんなの」


一歩、近づく。


「関係ないです」


はっきりと。



ジュンヤは、笑った。


少しだけ、寂しそうに。


「関係あります」



沈黙。


重い沈黙。



「……さよならです」


その一言で。


全部、終わった。



ジュンヤは、振り返らなかった。



神崎は、立ち尽くす。


追えない。


足が、動かない。



(……なんで)


涙が、落ちる。


初めてだった。


こんな感情。



「……バカ」


小さく呟く。



だが。


その目は、まだ折れていなかった。


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