ワイン
打ち上げられた樽の首飾りは、綺麗な放物線を描きながらスタンドに入る弾道。小生も諦めかけたその時、またもやカラスがスタンドすれすれでスーパーキャッチをする。超ファインプレーだ。そしてその後全体を見渡しながら、その場を立ち去ろうとするカラス。それもそうだろう。カラスをいいと思っている人間は少なく、このまま近くにていても厄介もの扱いされてしまう。ただ、小生だけは違う感情が込み上げてきた。「待って。あなたが美樹なんだろ!」周りのリアクションのことすらお構い無しにワンワンと大きな鳴き声をいつのまにか発していたのだった。少し距離があり伝わっていないかもしれないが、カアカアと聞こえたのか「待たね。」と聞こえたのか小さな鳴き声のような声を残していった。小生はまだ泣きじゃくった後のせいか鼻がむず痒くクシャミをした。
その時、美樹との夕食の時によく飲んだ赤ワインで乾杯している映像が飛び込んできた。またもやハッとした。カラスの足にはワイン色のリストバンドのようなものが巻いてあった。ワイン樽の首飾り、ワイン色のリストバンド。これが何を意味しているのか小生がまた泣きじゃくるには充分なメッセージだった。これは今まででみた映像でもっとも忘れたくない最後の晩餐だった。




