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転機
小生は昔海人と呼ばれたもの。ゆくゆくはカイと名付けられる運命にあるものである。どれくらいの歳月がたったのだろうか。私はブリーダーに見守られながら、犬としてこの世に舞い戻ってきた。海人として歩んだ人生は、断片的ではあるが記憶が残っているようだ。まだ、生まれたばかりなので、この時点では気づいてはいないのだが、くしゃみをすると、寒気がするのをそう遠くない未来に味わうことになる。なぜ、自分が今この不思議な状況に直面しているか徐々に思い出してきたので、まずはそこを話さなければならない。それは神様との契約に関与していた。不慮の死を遂げた海人は神様に人間に戻るチャンスをもらう。ある一定の善行を積むと人間に戻れるという手が届きそうなノルマであった。それが小生を苦しめるなど、この時点では疑う余地すらなかった。