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第7章 マヤズメモリーズ 14

 ドリードックスの進撃状況については、レインボーバードの上空からの偵察に依って、内は随時、状況を把握していた。

 今回の内の作戦は、一方的に敗退を続けるドワーフ帝国への進撃を食い止める事に有った。

 ドリードックスの兵士達が油を敷き詰めた道に入った瞬間、ガルーダに火を吹いて貰うのだがこれは飽くまで囮だ。、その時には既に、奴等の退路には三千精のピクシー軍に依って、大量の油が上空から撒かれているのだ。

 そこにガルーダが再び火を吹いて辺りを火の海にした所で、八百隻のペガサスの天馬船が岩石を落として、七千精のピクシー軍が上空から、軽長弓を放つ段取りに成っていた。

 そして、それらの者の配置は既に完了していた。

 「マーヤ公女様、そろそろドリードックス軍が予定の場所に差し掛かります」

 「よし! マーシャル、狼煙を上げて! 作戦開始よ」

 「御意!」


 内も、久し振りに空を飛んで、戦況を見守った。

 「ガルーダ兵が火を吹きました」

 「そうね、ドリードックスの動きは?」

 「大半の兵は退却する道を選びましたが、三個小隊は退路が火の海なので、前方に逃走しています」

 「その3個小隊は、ユニコーン部隊が頼みの綱か……」

 打ち漏らした敵を掃討する為、内はユニコーン共和国にも応援を依頼していた。

 ユニコーン軍は「モガンテ」と呼ばれる戦車を所有して、射程は短いものの、威力が高い砲撃を相手に浴びせる事が出来る。

 但し、ドリードックス軍とは地上戦に成るので、ユニコーンの兵士達が激しい頭痛に見舞われる危険は有った。

 だが、ユニコーン共和国のアインバッハ大統領は、それを承知の上で二百両のモガンテを、この戦いの為に投入して呉れていた。


 「ご注進!ドリードックスの奴等は、ユニコーン部隊に頭痛を起こせない様です!今、次々と奴らはモガンテの砲撃で倒れています」

 「良かった。これでアインバッハ大統領を悲しませずに済む!後方に退却した敵は?」

 「未だ、連絡が有りません」

 「そう」

 ユニコーンの戦車部隊に頭痛を起こせないのなら、上空のペガサス軍とピクシア軍も安泰の筈だわ。

 内はこの戦いで、我が軍勢が余りひどい事には成らないと言う確信を得た。

 「ご注進!退却したドリードックス軍は、ペガサスと我がピクシア軍の攻撃で、約半数近くを倒した模様です」

 「ふ~、作戦は成功したみたいね」

 内は、ホッと胸を撫で下ろした。


 「此度このたびは、ピクシア王国様のご支援のお陰で、危機を免れる事が出来ました。ドワーフ帝国の国民を代表して心から御礼を申し上げます」

 そう言いながら、ビンセント、いや今はグレオゴール十二世ピクシア王国国王陛下に頭を下げたのは、ドワーフ帝国ダワコフ国丞大元帥だった。

 「いや、全てはここのマーヤ公女の作戦と指揮のお陰だと朕は思っている」

 「マーヤ公女様のご高名は、常々、マーシャル=スカラデン=サミルカンド侯爵様と我が妻から聞き及んであります」

 ダワコフは内に向かっても、一礼をした。

 「朕も即位した時までは知らなかったのだが、ダワコフ国丞大元帥がマーシャルの妹を娶って呉れていたとは」

 「私と、マーシャル様のジルベッフル家とは、以前からお付き合いがございまして、マーシャル様のお母上は今は亡き貴国の皇太子様と共に、ドワーフ帝国に長くご滞在に成られていたのです」

 「そうなのか? マーシャル?」

 「ええ、母は皇太子の侍女長としてドワーフ帝国に随行しました。母に同行した私も、半ばドワーフ帝国育ちの様な物です」

 「そうで有ったのか?それは良き縁で有ったな」


 ビンセントも、何時の間にか国王が身に染まって来たみたいだ。

 彼の受け答えに風格が増していた。

 「陛下、実は私の妹の方がダワコフ殿を一方的に慕って、半ば押し掛け女房の様な状態で・・・」

 「いえいえ、見初めていたのは私の方です」

 「コホン、夫婦間の惚気のろけ話は、独り身の朕には少しばかり辛いので、ダワコフ国丞大元帥は歓迎の宴の方にお進み下さい」

 「恐縮です」

 ダワコフは、ビンセントに深々と頭を下げた。

 ダワコフは、この後、ペガサス公国とユニコーン共和国にも、御礼の挨拶に行く予定だった。

 当然の事とは言え、それはダワコフの誠実さの表れで、マーシャルの妹がダワコフに惚れる気持ちは、内にも少しは分かる気がした。


 先のドリードックス軍との戦いは、そこの地名を取って、「ベルゼフの戦い」と呼ばれていた。

 ドリードックス軍の戦死者は約六千精。

 一方、我が軍勢は死傷者がゼロと言う圧勝だった。

 推定で十五万精だと思われるドリードックスだが、その中には老人や女子供も含まれるので、精鋭の兵士を6千精も失ったのは、奴等に取っても大きな痛手だった筈だ。

 その証拠に「ベルゼフの戦い」の後は、ドリードックスは自治区に引き篭もり、時折、色々な郷を襲って武具を手に入れる位に成っていた。

 常時、ペガサス軍やピクシア軍を配備させて置く訳にも行かないし、コボルト帝国では、奴等が来たら逃避する様に指示が成されているので、人的な被害も出ていない。

 更に、ドリードックスからの頭痛に悩まされていた者も、現在では大半が自然治癒している事も有って、奴らが郷を襲う事は大目に見て来た。

 だが、今でも武具を収集していると言う事は、今後も内等に抵抗する意志が有ると言う事だ。

 内は近々、大軍を率いてドリードックスは自治区に総攻撃を掛ける積りだった。

 早い時期に、奴等の戦闘意欲を断ち切らないと、奴等が持つ妖精達に頭痛を起こさせる能力は厄介だからだ。


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