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第7章 マヤズメモリーズ 11

 何故なぜ、コボルト帝国のバルバドスとドワーフ帝国のダワコフが裏で繋がる必要が有るのだろう?

 その前に何故、マーシャルはそんな事まで知っているのかしら?

 「マーシャル、興味が有る話だけど、抑々《そもそも》、貴方はコボルト帝国とドワーフ帝国の裏事情をどこで聞いたの?」

 「御尤ごもっともなご質問でございます。実は私の妹は、ドワーフ帝国の丞相総大臣ダワコフに嫁いでいるのです」

 「何ですって?マーシャル、貴方には確か姉上しかいなかった筈では?」

 「妹はドワーフ帝国と言う他国に嫁いだので、ピクシア王国には既に籍が無いのです。今回、公女様が王室メンバーを拡大する為にお調べに成られたのはピクシア王国の籍帳だけでしょう?」

 「確かに、ピクシア王国の籍帳だけだったわ!成程ね、それなら裏事情も知り得る訳ね。それにしても、貴方の妹がダワコフに嫁いでいるとは知らなかったわ」

 「ダワコフは今でこそ丞相総大臣ですが、妹が嫁いだ時は、只の参事官でしたからね。その後、ゼシーノ陛下から絶大な信頼を得て、またたく間に出世しました」

 内もその話は、エルカンドラのサラビス宮殿に住んでいた頃に耳にした事が有った。


 「実は、もうひとつ公女様のお耳に入れて置きたい重要な裏話が有るのです」

 「重要な裏話が?それは一体・・・?」

 「コボルト帝国皇帝ガバンとドワーフ帝国皇帝ゼシーノには密約が有って、ピクシア王国に割譲させた領土にドリー共和国を建設してから、所謂、三国同盟を結成して惑星パーリアに君臨すると言う物です」

 「まさか?」

 内はマーシャルの話に自分の耳を疑ったが、良く考えてみるとそれは有り得ない話では無かった。

 精口数第一位のコボルト王国が2800万、第4位のドワーフ王国の1500万で、合計で4300万。

 四大種族の内の二種族が同盟を組めば、これは侮れない。

 加えて、ドリードックス。


 ドリードックスの精口数は不明だ。

 銀河連盟のパトロール隊が分解処分をした宇宙船の数は24隻だったと伝え聞いている。

 仮に、ひとつの宇宙船に5000精が乗っていたとしても、その総数は僅か12万だ。

 その数だったら、コボルト帝国内のどこかの郷をドリードックスに与えれば済む話なのに、何故、ピクシア王国に領土を割譲させようとするのだろうか?

 若しかしたら、マーシャルだったらこの事について何かを知っている可能性が有る。

 彼の話を全て聞き終わってから、最後に質問してみようと内は思った。


 「公女様、少し長く成ると思いますが、コボルト帝国総棟梁バルバドスとドワーフ帝国丞相総大臣ダワコフが考える最善のシナリオについてお話します」

 彼らの考えるシナリオが分かれば、こちらもそのシナリオに協力すべき部分や、ブレーキを掛けたり止めさせたりする部分の判断が付くので、内に取っては有り難い事だった。

 「その前に両皇帝側の思惑ですが、彼等に取って喫緊の課題は、コボルト帝国の戦いにドワーフ帝国も共に戦う為の大儀名分をどうやって作るのか、なのです」

 「うん、うん」

 「ドワーフ帝国皇帝ゼシーノは、抑々《そもそも》、丞相総大臣ダワコフの薦めでこのキナ臭い世界情勢の中、全種族会議に出席してコボルト帝国に拉致されたのです。自分があれだけ可愛がったダワコフが自分の救出に動かない筈は無いと読んでいます」

 内は、ここまでの話は良く理解する事が出来た。

 ゼシーノから目を掛けられて丞相総大臣まで昇り詰めたのだから、ダワコフはゼシーノを救出したい筈なのに、何故、内の提案をあの時、断ったりしたのだろう?

 「だけど、ダワコフは内がゼシーノ陛下の救出を申し出た時、それに難色を示したわ」

 「それは、皇帝ゼシーノの思惑を外す為です」

 「えっ?」


 ビンセントは終始、頷いていたから、恐らくこの話はマーシャルから事前に聞いていた筈だ。

 その上で、内の耳にも入れて置くべきだと判断したのだろう。

 「例えば、公女様とダワコフがコボルト帝国に出向いて、ゼシーノ陛下の解放を要求したとしてもコボルト帝国は当然断りますよね。その事はお二人共織り込み済みなので、こう言われる筈です。『ゼシーノ陛下を解放しないの有れば、両国は重大な決意を持って貴国に対応する』と」

 「ええ、内はそう言う積りだったけど」

 「ドワーフ帝国皇帝ゼシーノは、その時を待っているのです」

 「・・・」

 「彼は言います。『朕はコボルト帝国の戦いにドワーフ帝国が協力しなければ朕を殺すと、コボルト帝国から脅されている。ついてはダワコフよ、朕の生命いのちを第一に考えて、国に戻り次第、直ちにドワーフ帝国の為の軍備を整えよ』と。そして公女様は、ドワーフ帝国皇帝ゼシーノの命令を聞いた証人にされるのです」

 「う~ん、う~ん」

 内はこれまで、自分の事を思慮深い妖精だと思っていた。

 だが、それはとんでもない勘違いで、内は浅知恵しか持たない馬鹿公女だったのだ。

 世界の最先端では、これだけの奥深い権謀術数がたくまれていたとは!


 「だから、ダワコフは公女様の申し出を断ったのです。そしてこれからが、総棟梁バルバドスと国丞総大臣ダワコフが考える最善のシナリオです」

 「マーシャル、話を続けて」

 「はっ!彼らは、公女様が両陛下と皇太子ご夫妻を殺害した事への謝罪と慰謝料の請求、それからゼシーノ陛下の解放を求める、全種族の要求書を手に入れられる事を望んでいます」 

 「それは、それ程難しくは無いとは思うけど・・・」

 「それから、これは兵の同行に賛同して呉れた国だけで構いません。その数も最大100精に限定します。その数でも十分だからです。その代わり、その兵達には各国に於ける正規の軍装と国旗を持参する事を義務付けるのです」

 「コボルト帝国に圧力を掛けるのね」

 「御意!」

 そうすれば、確かにコボルト帝国に圧力を掛ける事は出来るけど、どうせ奴らはその要求を拒絶するに決まっているし、その後で内に出来る事は?

 「全ての兵士達が揃い、公女様が要求書をコボルト帝国に手渡した時から、バルバドスとダワコフのシナリオに基づく具体的な行動が開始されます」

 「えっ?」

 「先ず、コボルト帝国総棟梁バルバドスがクーデターを起こします」

 「何ですって!クーデターを?」


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