第6章 アカシックな冒険 7
私が睨み付けようとした通関士は、身長は優に6mを超える巨躯の持ち主で赤ら顔だった。
更に、角が二本生えていたから、この通関士は誰が見ても「鬼」以外には見えなかった。
鬼って、地球だけに伝わっている架空の生物だよね?
「ふん、鬼か」
マヤが不敵な笑いを漏らしながら、そう言った。
地球以外にも、鬼伝説が有るのか?
「マヤ様、鬼ですね」
ハローズも、その通関士を鬼だと認識している様だ。
マヤとハローズの間で、この通関士を馬鹿にする雰囲気が一気に漂った。
特にマヤは、ふんと鼻で嘲笑うと、「此奴をからかうと面白そうだにゃ」と言った。
「マヤ、出掛けにリルジーナ様から、呉々も通関士の機嫌を損なわないようにと釘を刺されていたよね」
「分かってるって。 だけど、相手が鬼じゃ、揶揄わないと逆に失礼に成るだっしゃ」
「えっ?」
「俺様は卑怯な機械を使って、ここの関所を破らせない様にしているんだべ。 だからお前らもちゃんと口を使って俺様の質問に答えるのだぞなもし! 口頭試問って奴なのでごわす」
この鬼の日本語転換ソフトもかなり怪しそうだ。
「了解しました」
ハローズは、リルジーナからの訓戒を思い出したのか、丁寧な言葉でこの通関士に返答した。
「お前ら、これからゆっくり前進して、俺様が立っている透明の壁の前まで来やがれ!」
「かしこまりました」
ハローズは、どこまでもリルジーナの言葉には忠実なのだ。
ライラック号はゆっくりと前進した。
最初は、赤ら顔だと思ったのは照明のせいで、近付くとこの通関士の顔は、まるでお白粉で化粧をしているかの様に真っ白だった。
しかも鼻が拉げている。
赤鬼や青鬼の話は知っていたが、宇宙に白鬼が存在してる事を私は初めて知った。
てか、その顔は鬼と言うより、地球の「ブルドッグ」にそっくりだった。
ブル系白鬼?
「マヤ様、ここの通関士は、所謂、野蛮人みたいですね」
ハローズも率直な意見を述べた。
「キモーイ!キモ過ぎる」
マヤは鳥肌が立った様子だったが、羽根を持っていて一寸見は鳥にも見えるマヤが鳥肌が立てるとは、マヤの肌は今現在、一体どんな状態に成っているんだろう?
「通関士様、我々にご質問をどうぞ」
ハローズのリルージナに対する忠誠心は半端じゃない。
ハローズは、リルージナからの言い付けを守って、丁寧な口調で通関士に質問を促した。
私はその時、この通関士の事を「ブル白鬼ちゃん」と名付けた。
だが、それでは少しばかり長いので、彼の事を「ブ鬼ちゃん」と呼ぶ事に私は決めた。
「よろしい。お前らの運転手は良い奴だから、運転手への質問は免除してやろう」
「有難うございます」
ハローズは通関士に頭を下げた。
このブ鬼ちゃんは、「えこ贔屓」が激しい性格の様だった。
「お前らの先導役に命じる!ここに入る秘密の番号を入力では無く、お前の口で述べれ!」
マヤはしぶしぶパスワードを口頭で述べた。
「そこのちっこい奴、ちっこい癖に、お前は俺様に挑戦的な目をしてるぞなもし。 けしからん、らんらんらん、ランドセル」
「あっ、通関士様、それは誤解です。この先導役はいつもこんな目をしているのでございます」
私はハローズのその勇気に感動したが、後でマヤからどんな仕打ちを受けるのかを考えたたら、ハローズが気の毒に成った。
「運転手がそう言うのなら、それで良かろう。 次に記憶を取り出す者に尋ねる。 取り出した記憶の使用目的を述べれ!」
私は、ここは正直に話すべきだと考えて、記憶のリロードが私に取って如何に必要かについて話を始めた時、
「止めれ! 頭が痛くなる!」
ブ鬼ちゃんから、私は話す事を制止された
「難しい話を聴くと、俺様の頭が痛くなる。 それに記憶を取り出す者は、俺様のタイプだから使用目的の事は割愛する」
どうやら、私はブ鬼ちゃんの好みのタイプらしい。
「コ、コホン、それでは俺様からの最後の質問だ。 取り出す者が答えよ! 俺様の名前は何~んだ?」
「お前の名前なんかをユウカが知るか! アホかお前は?」
マヤがその質問に抗議した。
「こらこら、そこのチビ助に訊いているのでは無い。 取り出す者が答えろ! チャンスは3回だ」
ブル鬼からチビ助と呼ばれて、マヤの頭頂から湯気が立ち上り始めた。
ヤバい事に成らなければ良いが。
私はマヤが自制して呉れる事を祈った。
「う~ん、白鬼!」
私は答えた。
「うんうん、良い線を行ってるぞなもし」
こうして、私の「ブ鬼ちゃんとの名前当てクイズ」が始まったのだった。
「白鬼」は良い線を行っているのか?
じゃあ、ブ鬼ちゃんの名前は一体何?
私はブ鬼ちゃん、私的な正式名は「ブル白鬼ちゃん」だが、彼の名前を真剣に考えた。




