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第6章 アカシックな冒険 5

 「マザーは、入域に関する全手続きの完了を確認しました。皆さんの入域を許可します。但し、ドライバー存在階級が上位三次元の為、マザー内部での自主移動は低速飛行のみに制限されます」

 「了解!」

 今度は、ハローズが答えた。

 私達の入域審査が完了した様子だったが、私はマヤとハローズの母星の事が妙に気に成っていた。

 私がテラ、即ち地球だから、マヤの母星はパーリヤ、ハローズの母星はイベリーカと言う事だろう。

 どちらの星も美味しそうな響きの名前だと私は思った。

 そうか。マヤがパエリアでハローズはイベリコ豚なんだ。

 覚え易い星の名前だね!

 そうだ、ヴューイックに戻ったらリンドウに頼んで、パエリアのバレンシア風とイベリコ豚のボルシチが出てくるボタンを作って貰おう!

 私がそんな呑気な事を考えている間に、ポート234の内部全体がライトアップされた。

 おっと、今は食べ物の事を考えている場合では無い。

 このミッションに、私はもっと全神経を集中させないと!

 私は気を引き締めた。


 「マザーより貴艇に連絡!事前に申請されているゼノンの記憶エリアの入域ポイントまではマザー側で自動誘導しますので、貴艇はマザーの内部に入ったら飛行を停止して下さい」

 「了解しました」

 ハローズが答えた。

 ハローズはこの宇宙船のドライバーなので、飛行に関する事はハローズが答えなければ成らなかった。

 「ところでハローズ、ドライバーとパイロットは何処どこが違うの?」

 私は、今は関係が無い疑問を訊ねてしまった。

 「宇宙船はシップなのでパイロットと言う言葉は使いません。シップは女性名詞なので、正しくは航海士、即ちナビゲーターが本来の呼び方なのです」

 「ナビゲーターって、確か・・・」

 「そうです。マヤ様のような航路案内士もナビゲーターと呼びますので何かと紛らわしい。そこでライラック号の様な小型宇宙船の航海士の事は、ドライバーと言う用語で統一されている訳です」

 「成程!本当に紛らわしいわね」

 この忙しい時に、私の質問に丁寧に答えて呉れるハローズは、どこまでも優しい青年だった。

 

 「皆さん、マザーにようこそ!」

 やがて、ポート234の前面を塞いでいた巨大な扉が開いた。

 この扉の先からが、マザーだと言う事ね。

 低速飛行中、私が眺めたマザーの内部は、私の期待を裏切り、何の変哲も無い無機質な空間だった。

 暫くすると、機体はマザーの自動誘導に切り替わり高速で移動し始めたので、私はマザー内部の景色を確認する事が出来無く成った。

 「こちらマザー、ここのゲートで入域手続きを済ませて下さい。マザーのサポートはここまでです」

 マザーからの通信が途絶えた。

 「こちらエリアゼノンの記憶、入域用パスワードの入力を要求します」

 「了解!」

 マヤは、パネルボードを操作してパスワードを送信した。

 流石に、手続きの数が多いね。

 私は少しうんざりして来ていたが、ゼノンの記憶の入域手続きはそれだけだった。

 幾つかの注意事項が私達に伝えられ、ゼノンの記憶の扉は開いた。


 「わあ、綺麗!」

 私は思わず大声を上げた。

 セノンの記憶の内部には、果てしない海の上に、日本の灯篭と言うより東南アジアで見掛けるランタンに似た灯りが無数に浮かんでいた。

 ゼノンの記憶の海、その全面に、赤味がかったオレンジ色のランタンが浮いている眺望は、美しい一言ひとことだった。

 私は息を吞み込んだ。

 「マヤ様、どうやらあの灯り一つ一つが、異なった記憶ゾーンへの入り口なのでは?」

 「多分、そうかもね?」

 マヤがハローズに答えた。


 「えっ、ええっー?あんた達、まさかマザーの中に入るのが、今回が初めてとか言わないよね!」

 私は真顔に成ってマヤを見詰めた。

 「アンタ、あ~ほ?ウチのような上位四次元存在が、サラフィーリア様から指名を受けてる今度の様な事が無い限り、マザーに入るなんて出来っこ無いでしょ」

 「ハローズは?」

 私は、藁にも縋る気持ちでハローズを見た。

 「自分は、上位三次元の存在ですから、当然、初めてです」

 「ひえっー!マジ~?」

 二人共、自信満々の様子だったので、てっきり二人はマザーに入った経験が有ると私は勝手に思い込んでいたのだ。

 「この先、大丈夫か?この二人で!」

 私は、急に不安に成ったが、ここまで来た以上、腹を据えるしか無かった。

 女は糞、糞、糞、糞度胸!!!

 ポイントビューイックに来てから、単なる糞度胸を含めて、私が腹を据えるのはこれで一体何度目だろう!

 「大丈夫、ウチはここの亜次元には来た事が有るから」

 「ええ、大丈夫ですよ。自分も、亜次元探査航海士の資格を持っていますから、ここの亜次元の事も或る程度は知っていますから」

 二人は同時に胸を張ったが、恐らくこの問題の本質はそこでは無い筈だった。


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