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第6章 アカシックな冒険 4

「ハローズ、次元の裂け目は13時03分18秒の方向よ。ここからの距離は15万3213km」

 マヤがハローズに伝えた。

 ワームホールの中は完全な闇に包まれたトンネル空間だったが、このワームホールの中に入って未だ15分も経っていないのに、早くもマヤは次元の裂け目を発見した様子だった。

「了解です! マヤ様、自分も裂け目を確認しました、今から亜次元への次元突破を試みます」

「今だっしゃ~! ハローズ、次元突破用のエネルーギータンク009から032までを全開!」

「ラジャ!」

 ハローズは次元を超えるべく、23個のエネルーギータンクを全開させて、ライラック号を突進させた。

 ガ、ガガガ!

 私が座っている座席に揺れは感じなかったが、ライラック号が何かから激しい抵抗を受けている事は確かだった。


「ライラック号、次元突破!」

 ハローズは嬉しそうな声を上げた。

「ライラック号は亜次元専用探索機だから、ワームホールの中の次元の壁位、突き抜けて当然なの」

「それはそうですが……」

 ハローズはマヤの言葉で、少しばかり気勢を削がれたみたいだ。

「まあまあ、二人共。 皆さんは頑張った訳だし……だけど、亜次元専用探索機って凄いのね?」

 私は頑張った2人をフォローした。

「例えば敵の戦闘艇100機から追われたとしても、亜次元専用探索機で亜次元に入ったら、どの戦闘艇もお手上げです」

「戦闘艇は2回位はショートワープが出来るけど、ワームホールの中の次元の壁を突き抜ける程の出力は出せないからね」

 ハローズの説明に、マヤが捕捉した。

「故に、亜次元専用探索機が敵から撃墜されたら大変ですから、専用探索機には強固で貴重なバリアとシールドが装備されているのです」

「それは逆を返せば、若し亜次元専用探索機が敵から捕獲でもされたら、その軍に取っては大損失に成るのだチン」

 

 私も、戦闘についてはこれまで色々と聞かされて来たから、彼らが何を言っているのかは理解が出来た。

「今度の全面戦争は、敵艦隊の戦力を捕獲するのでは無くて、お互いが破壊する戦闘に成ると言うのよね?」

「ええ、そうで無ければ、フライズ軍がここまでの大軍を投入したりはしませんから」

「双方共、戦闘艦や戦闘艇の損失は覚悟の上って事なのね」

「だから、今回はライラック号は戦闘には参加しない。 若し出番が有るとすれば、余程の要人を逃がす時だけなのだチンチン」

「でも、あのガーリックトーストって元帥だけはライラック号に乗せちゃ駄目! 戦況が不利に成ったら、彼奴あいつは自分だけさっさと亜次元に逃げ込みそうだから」

「ユウカ様、良くお分かりで」

 ハローズは心底、私に敬服したと言う表情で、そう言った。

 

「あっ!ユウカ様、マヤ様、ほらあそこ!」

 ハローズが指差した方角に眼を遣ると、中世のシャトーを思わせる、天空を彷徨う巨大な建造物が見えた。

「アカシックレコードが見えました!我々は遂にマザーと遭遇しましたね!」

「マザー?」

「ええ、アカシックレコードの事は、古くは記憶の箱舟と称されていましたが、今では一般的な呼び名はマザーです」

「そうだったの?」

 ハローズが使ったマザーと言う言葉を聞いて、私は少しリラックスした気分に成った。

 お母さんなら、そんなにひどい事を私にはしないだろう。

 だって、私の母親は口癖の様に「あの人は貴女の容姿を中の中だと言うけど、由佳、そんな事は決して無いのよ。貴女の容姿は中の上なのよ」と言って、私を慰めて呉れたのだから。


「良し!行くでぇ~! 総員、準備せよ!」

 マヤはマザーの姿を見て張り切ってそう言ったけど、総員は3名だけなんですけど……。

「こちらは、オリオン大艦隊所属、東オリオン守備艦隊のライラック号です。 マザーに係留許可を求めます」

 マヤが、マザーに係留許可を求めた。

「Continue talking,please」

「こちらは閲覧許可申請者並びに閲覧主催者はサラフィーリア・ベルファーラ。 存在階級は上位5次元、女神属性、閲覧申請ナンバーはHGZ91658907SPです」

 マヤが落ち着いてライラックの係留許可を求めた。

「マザーは、閲覧申請ナンバーの照合が完了しました。 ポート234への係留を許可します」

「了解!」

 どうやら、無事に係留許可が下りた様だ。

 私はマヤが、「係留許可をちゃぶ台! ウチらはマヤとその仲間達だチン」とか言ったらどうしようかと思っていたが、それは杞憂に終わった。

 私はてっきりマヤの自動翻訳機が故障しているとばかり思っていたのでが、どうやらそれはマヤの茶目っ気が言わせていた様だ。

 何処までも面倒臭い妖精だ!!!


「こちらマザー、ポート234での船内待機を要請します」

「了解!本艇はマザーポート234に係留、その後、船内待機します」

 自信に満ちた顔付きで、適確に対応して行くマヤが、私にはとても心強かったし、マヤを大いに見直した。

 愈々《いよいよ》、私が過去世の記憶を取り戻す為の、マザーでの活動が始まったのだ。

「マザー、本艇の係留及び船内待機が完了しました」

「こちらマザー、我々のガーディアンに向けて、全搭乗員の存在認識番号の入力を要請します」

「了解、入力が完了しました」

「マザーは、存在認識番号の確認を完了しました」

 私達がマザーの内部で活動を行う為の手続きが始まった。


「こちらはマザー、皆さんがマザーから出域時に同一存在で有る事を確認する為に、声紋採取を行います。全搭乗員は口頭で各自のヒエラルキーを述べる事を求めます」

「了解!こちらナビゲーターのマヤ・ミルドレン、存在階級は上位四次元、パーリヤ星所属、妖精」

「こちらドライバーのハローズ・オプトマイヤー、存在階級は上位三次元、イベリーカ星所属、人類」

 「存在階級が三次元の方は、星系の申告が必要です」

 マザーから、ハローズに追加の質問が有った。

「失礼しました。自分の所属星系はバーナード星系です」

「了解。次の方」

 愈々、私の番に成った。


「ユウカ、貴女は照会主体者で上位三次元存在。出身は太陽系旧テラ現地球、種族は人類、そう伝えなさい!」

 マヤが私にそう伝えた。

 あんた達は何時もそうなんだから!

 大切な事はもっと早めに言えっちゅーの!

「こちら照会主体者のユウカ・サマー、存在階級は上位三次元、出身は太陽系旧テラ現地球、人類」


 私はユウカ・キクチと言う訳にも行かないから、思わず何時も呼ばれているユウカ・サマーって言っちゃたけど、大丈夫かな?

 そうか!サラフィーリアの姓をマヤは確かベルファーラって言っていたから、私が

サラフィーリアの娘だと言う事は、私の名前はユウカ・ベルファーラ?

 いやいや、姓は普通、父方の姓を名乗るからベルファーラじゃないよね。

 ところで私の父親って、一体、誰よ?

 

「女神宗家のユウカ様でしたか?当マザーは、サラフィーリア様の使いの方から事前連絡を受けておりますので、声紋採取だけで後の手続きは不要です。但しマザー内部では一切の優遇措置は有りませんので、予め申し添えます」


「勿論です!」

 私はそう答えながら、サラフィーリアが私の事を気遣って呉れていた事が嬉しくて仕方が無かった。

「マザーは、搭乗員全員の声紋採取を完了しました」

 それからマヤとハローズは、ヒエラルキーコードだのパスワードなどと、色々な事をマザーから尋ねられて忙しそうだったけど、私は余裕で後部座席でラッキーシェイクをちゅるちゅると啜っていた。

 マヤが「ちぇ」と言葉を吐き捨てたのを、私は聞き逃さなかった。


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