第6章 アカシックな冒険 2
私は、マビちゃんの施術のお陰で、二日酔いの方は完璧に治っていた。
後の問題は、私が糞、糞、糞度胸を発揮出来るのか?の一点だけだった。
ここまで来たら、私はやるしか無い!
女は糞、糞、糞度胸!
ミーテュングルームには、今回の搭乗員で有るマヤとハローズが、私よりも先に入室していた。
更に艦長のエルドラルド、リルジーナ、リンドウが待機していて、私の到着で関係者が全員、揃った。
「ユウカ様のアカシックレコードへのご出発は、今夜の、2200時の予定です」
先ず、リンドウが口火を切った。
「それでは、アカシックレコードから、ユウカ様のご記憶をリロードする為に必要な物をマヤに渡しますね」
そう言うとリルージーナは、握り拳より少し大きい物体をマヤに手渡した。
あれ、それって若しかして「モリヤの笛」じゃ?
しかし、その物体の大きさは「モリヤの笛」の半分位しか無かった。
「リルジーナ様が事前に申請されていた閲覧照会ナンバーと、存在認識番号、ヒエラルキーコード、探索許可エリアと進行許可ルート、そしてパスワードがアカシックレコードからから送られて来ました」
リンドウが、その旨を皆に伝えた。
アカシックレコードとは、事前に連絡を取り合えるのか?
それだったら、アカシックレコードは私が思い描いていた程、得体が知れない恐怖に満ちた場所では無なさそうだ。
私は、リンドウの言葉を聞いて大いに安心した。
「これらの情報は、先程、リルジーナ様がマヤに手渡したモリヤの雫の中に記録されていますので・・・」
リンドウが、私に説明した。
「モリヤの雫?」
私は思わず叫んでしまった。
「ユウカ様、どうかされましたか?」
リルジーナが怪訝そうな顔で、私の方を見た。
「あ、いや、そのモリヤの雫、私がモリヤの笛って名前を付けた物と余りにも形がそっくりだったから」
「まあ、ユウカ様はモリヤの笛に、モリヤの笛と名前をお付けに成られたのですか? それはまた何と言う奇遇! ユウカ様とリンドウにはやはりご縁が有るのですね」
リルジーナはそう言うと、彼女にしては珍しく大きく愛想を崩した。
リンドウは困惑した表情を見せていた。
モリヤの笛って、若しかしたら正式名称だったの?
「そう言えば、ユウカ様をこの船にお連れしたにはモリヤの笛でしたね。これはリンドウの祖父が地球に転生していた頃に発明した物で、その直ぐ後に大銀河連盟が、これらの技術を使用する物を製造禁止にしたので、これは今ではとても貴重な物なのです」
リンドウの「お爺ちゃん」は、かつて地球に転生していたんだ。
「リルジーナ様、そのお話はもう・・・」
「リンドウ、何を照れてるの?この事はユウカ様もご存知の方が何かと良いでしょう?」
「それはそうですが・・・」
リンドウは煮え切らない返事をした。
「モリヤシリーズは、元々、全部で7種類が有ったのだけど、色々な事が起きて現存しているモリヤシリーズは全部で4種類だけ」
「まあ、その4種類は全て僕が保管しているんだけどね」
先程まで、煮え切らない表情をしていたリンドウが、今は誇らしげな表情に見えた。
精霊の感情変化って、地球人類には予測をするのが難しいね。
「ユウカ様、これはモリヤの雫と呼ばれていて、アカシックレコードからダウンロードされた記憶をコピー出来る唯一の器具なのです」
ほ~、聞いただけで何だか凄そうだけど、でも、その「ひいおじいちゃん」の発明を大銀河連盟が製造禁止にするなんて、少し大袈裟過ぎる気がするんだけどなぁ。
「コホン、何れにしても、事前にライラック号のマザーボードに情報をコピーして置いて下さい。モリヤの雫は記憶のコピーが必要だと判断された時だけに使うと、ここでお約束をお願いします」
「マヤ、聞いていますか?」
リルジーナから名指しでそう言われたので、マヤは少し剝れた表情に成って、
「そんなん、言われ無くても分かってるって!」
と、リルジーナに言い返した。
リルジーナの顔には、あんたが一番心配なのよ!と書かれていた。
「モリヤの雫にもこの情報は記載されていますが、念の為に口頭でもお伝えして置きますね」
リンドウは又、何時もの冷静なリンドウに戻っていた。
「アカシックレコードでのリロードまでのルートは、先ずゼノンの記憶エリアに向い、そこからゾーンマトリ経由でニューロンニホンに入って、ユウカ様の記憶をリロードします」
「了解!」
マヤとハローズが同時に答えた。
「二人も知っている通り、ゾーンブンドまでは機械認証だけど、肝心のニューロンレベルはハッキング防止の為に、低位四次元物理空間に棲むリアルな生命体が通関士に成っているから、呉々も通関士の機嫌を損ねては駄目よ」
リルジーナが注意事項を述べた。
「大丈夫、ウチに任せとき!」
マヤのその言葉を聞いて、リルジーナの顔には、あんたが絶対的に一番心配なのよ! と、更に上書きがされていた。




