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第4章 不思議な訓練  12

 「ユウカ様は明後日の夕方までは自由時間です。自室やミヤビルーム、コクーン、バスルームなどでリラックスして、体調を整えて下さい」

 へなへなへな。

 「ユウカ様!大丈夫ですか?今夜は水分を十分に補給して下さいね。それから今夜だけは飲酒は控えて下さい」

 「ええ~っ、お酒を飲んじゃいけないの?」

 「チャクラのアクティベーションが定着するのに3日間が必要ですので、出来れば今夜の飲酒は控えられた方が良いかと」

 「あっ、出来ればなのね?私ね、今、ムッサムサ、落ち込んでるの!分かる?リンドウ」

 私は鬼気迫る顔付きで、リンドウの眼前に迫った。

 「な、何故なぜですか?」

 「何故って、私は直ぐに地球に帰れると思っていたの!」

 「まさか」 

 「まさかだって?ああ、リンドウじゃ話に成らん!兎に角、私はヤケ酒が飲みたい気分なの!だから部屋に戻ったら飲むの!若しその事をリルジーナにチクリでもしたら・・・」

 私の言葉にリンドウは思わず、ごくりと生唾を飲み込んだ。

 生唾?ああ、生ね。やっぱりビールは生でしょう。

 「そん時ゃあ~、アンタの生首を絞めてやるからね!」

 「ひっ」

 私は、リンドウに捨て科白せりふを吐いて、ヨタヨタとした足取りで自室の方に歩き始めた。


 このまま行けば、私が戦死する確率が幾何級数的に高まってしまう。

 ああ、リルジーナのアンポンタン!

 何で、私がユウカって娘の偽者だって気が付かないのよ!

 私は、菊池由佳なの!

 今の私は、まるで屠殺場に引かれる豚の様な気分に成っていた。

 これもアストラルで豚の鳴き真似をしたたたりね。

 それが冤罪えんざいだとは分かっていても、私は豚の鳴き真似をさせた八木沢をうらんだ。

 抑々《そもそも》、あんたが私を助けに来なかったのが諸悪の根源だっつうの!

 こう成ってしまった以上、そのアカシックレコード行きで、私が偽者だって事を証明する以外に方法は無い!

 アカシックレコードって、言葉としてはここで何度か聞いた覚えは有るけど、一体、何なの?

 そして、そこは簡単に行ける場所なの?


 私は自室に戻ると、真っ先に生ビールを一気に飲み干した。

 リルジーナがほどこした、私のチャクラに対するアクティベーションとかで、私の喉はヒリヒリの状態だったからだ。

 まあ、焦っても仕方が無い。

 アカシックレコード行きについては、その内、詳しい説明が有るだろう。

 それまでは、ジタバタはしないで置こう!

 ジタバタはしないと決めた時、先刻さっきはリンドウにひどい言い方をしてしまったかな?と私は反省した。

 相手は、属性の身分とは言え精霊様だ。

 「生首を絞めてやる」は、流石にまずかった!

 せめて、「わたしのこの柔らな手で、リンドウちゃんのお首をじっくり絞めてあげるわね」と言うべきだったか?

 いや、そっちの方がもっと怖いか?

 私はそれから、チーズと生ハムをまみにして、ウィスキーをロックで3杯飲んだ。

 今日のトレーニングで、一体、私が何時間眠ったのかは分からないが、眼が冴えて全く眠気は起きなかった。


 その時、誰かが私の部屋のドアをノックしている音が聞こえた。

 誰かしら?若しかしてリンドウ?

 私は彼に、先程の無礼を素直に謝ろうと誓った。

 私が入り口のドアを開けると、そこには羽搏はばたきしているマヤの姿が有った。

 「よっ!」

 マヤは遠慮の欠片かけらも無く、私の部屋の中に入って来た。

 「あれ~?アンタ、酒を飲んでたん?禁酒を命じられていたんじゃ?」

 「何で、マヤがそんな事まで知ってんのよ?」

 「あ~、やっぱり。これは早速、リルジーナとエルドラルドのおっさんにチクらなきゃ」

 ちっ、マヤの奴め!私に鎌をかけたのか?

 「ちょ、一寸、待て!あっ、いや、待って下さい。これには深い訳が・・・」


 「言い訳?ノンノンノン、アンタ、ウチがチクりのマヤって渾名あだなだって事、聞いて無いの?」

 「あっ、そう」

 私はマヤを捕まえると、無理矢理、マヤにウィスキーを飲ませた。

 「げほげほ!アンタ、何て事をすんのよ!」

 「私から羽根をむしり取られなかったし、生首も絞められずに済んだんだから、私に感謝しなさい!これであんたも酔っ払いのお仲間って訳ね」

 私はマヤに勝ち誇った様な表情を見せた。

 「地球人は野蛮人だと聞いていたけど、それは本当だったね」

 「誰が野蛮人じゃ!」


 「フッフッフッのヒ!野蛮人のユウカよ、アンタは甘い!禁酒を命じられてるのはアンタでウチじゃ無いって事を忘れたの?」

 「ヒッヒッヒッのフ!甘いのはあんたの方よ。君は砂糖水よりももっと甘い!」

 「???」

 「私は、あんたから無理に酒を飲まされったって言うに決まってるでしょう!」

 「何で?」

 「日頃から言動が悪いあんたと、淑女の如き私。しかも私はあんた達のこれからの命運を握る女神宗家の血筋の存在。彼らはどちらの言葉を信じるかしら?」

 「こ、姑息な!」

 「それにリンドウからも、少しだったら飲んでも良いって言われているのよ」

 

 どうやら、マヤとの飲酒を巡る戦いは、私の全面勝利で終わった模様だ。

 「わ、分かったぜよ。今回はチクらずに置いてやるきぃ」

 あんた、何時から竜馬りょうまに成ったのよ?

 人には個性や感情が有るから、翻訳機が翻訳した通りには言わない事は理解が出来た。

 「アイラブユー」を知らない人はいないと思うけど、仮に知らない人がいたと仮定して、AIが「私はあなたを愛しています」と翻訳しても、その通りに言う人は稀だろう。

 例えば、「私、あなたの事が嫌いって言う訳じゃないのよ」とか、その時の状況や自分の気分などに合わせて、言い方をアレンジする筈だ。

 だから、マヤの場合もそれと同じだとは思うけど、まさか土佐弁だとは・・・」

 「アンタは、知りんしゃれんばってん・・・」

 えっ?今度は何処の言葉よ?

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