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第4章 不思議な訓練  11

 「気が付かれましたか?ユウカ様」

 「ああ、リンドウ?私、眠ってたのかな?」

 私の両腕を後ろから支えて呉れていたのは、恐らくリンドウだったのだろう。

 この狭い部屋を見渡して見ると、リルジーナの姿は既に無かった。

 「お疲れ様でした。ご気分は如何です?」

 「ご気分?」

 ご気分は最悪に決まっているでしょう!と言おうとしたが、頭痛がしていると思っていた私の頭の中は、何故か冴え冴えとしていた。

 「あれれ?」

 「頭の中が冴え渡っているのでは?」

 そう言うとリンドウは天使の様な笑顔を私に向けた。

 正確には、それは精霊の笑顔だったのだろうが、私には天使の笑顔と精霊の笑顔の区別が付かなかった。


 「そうみたい。何でかな?深く眠ったから?」

 「それはリルジーナ様が、ご自身のアクティベーション能力を使われて、ユウカ様のチャクラが本格的に稼働する様に調整されたからです」

 「アクティベーションって?チャクラとは?」

 「う~ん・・・」

 リンドウは、私にどう答えようかと思案している感じに成った。

 これまでは私が理解不能な事についても、出来るだけ分かり易く説明をして呉れたリンドウだったが、それは単なる状況説明やハイテクの技術に関する説明だった。

 しかし今回のチャクラに関する質問は、私の身体に現実的に関わっている問題なので、リンドウが答えるのに慎重を期して呉れているのかも知れない。


 確かに、人の言葉を最近話せるように成った猿がいるとして、その猿から「夜なのに何故、この部屋は明るいのか?」と聞かれたら、私でも答えに窮するだろう。

 電気の話をしても猿には分からないだろうし、かと言って「これは魔法が使われている」と答えれば嘘を付いた事に成る。

 だが猿に取っては、完全に理解不能な電気の説明を受けるよりも、これは魔法だと言われる方が、そんな物かと納得が行くと言う現実も有る。

 私がそんな事を色々と考えていると、リンドウの顔がパッと明るく成った。

 どうやら、私に対する分かり易い説明を思い付いた様だ。


 「ええっと地球で言えば、そうですね、ラジオと言う機械を想像して見て下さい」

 「ラジオね?」

 私は大き目のラジオの方が良いだろうと思って、祖母の実家に帰った時に見掛けた卓上ラジオを思い浮かべた。

 「チャクラは生命体が生命活動を行う上で、様々な役割を果たしているのですが、ここではチャクラを、宇宙の生命体と交信する通信機だと考えて下さい」

 「宇宙の生命体と交信する通信機ね。え、ええっ~?」

 「ユウカ様の通信機、即ちチャクラは、想像されているそのラジオと一緒で、地上の放送を聞くべくそのアンテナは地上に向けられていますよね?」

 「うんうん、それで?」

 「それをリルジーナ様の能力で、ユウカ様のラジオのアンテナを宇宙の放送も聞ける様に、地上に加えて宇宙に向く双方向化をされたのです」

 リルジーナったら、私の許可も無くそんな大胆な事を!

 これからは、私の心の中ではリルジーナに「様付け」は無しじゃ!

 まあ、それだけこの戦争で、リルジーナ達は追い詰められてるって話よね。


 「宇宙は次元が重なり合っているので、ユウカ様が意識をフォーカスされたら、上位5次元の物音や声が聞こえる様に、そのアンテナの性能を幾何級数的に強化されました。」

 「キカキュウスウテキ?」

 あたしだって、フォーカスって言葉くらいは知っているわよ。

 カメラのピントを合わせる事よね。

 でも、リンドウは日本人でも無いのに、どうして幾何級数的なんて言葉を知っているのかしら?

 自動翻訳装置の機能が優れているのか、エンサイクロペディアジャポニカが凄いのか?


 「ああ、幾何級数的ですね。要するに、ユウカ様のチャクラがとんでも無くの高性能に成ったと言う事です」

 ちっ、リンドウの奴め、私を人の言葉を覚えたばかりの猿と同じ扱いをしやがったな!

 あたしだって日本人だから、幾何級数的が、一定の割合で増加していく様子を表す言葉だって事は知ってたの!

 リンドウの天使顔には似合わない言葉だったので、思わず聞き返しただけだったのに・・・。

 「そうしたリルジーナ様の、ユウカ様のチャクラを機能アップされた一連の作業の事をアクティベーションと呼んだのです」


 「分かった」

チャクラだかキャバクラだかは知らないけど、私の身体の一部を勝手に触る行為に対しては、私は決して愉快では無かった。

 「ところで、リルジーナ・・・様は、今は何処どこへ?」 

 「リルジーナ様は、エルドラルド船長の所に行っておられます」

 「船長室に?」

 よっしゃ~!やったー!遂に私が偽物だと言う事が分かったのね。

 これで地球の帰れる!これで私は戦死せずに済む!


 「リルジーナ様は、ユウカ様の中に眠っている女神宗家の血筋として、莫大な資質をお持ちだと言う事を確認されて、大きな驚きを隠せませんでした」

 リンドウは、そんな事はとっくの前から僕は知っていたよ!みたいな表情で、平然とそう言った。

 「何・・・ですって!!!そんな馬鹿な・・・」

 私は驚いて、茫然自失の状態に陥っていた。

 「何れにしても、リルジーナ様が覚醒可能なユウカ様の能力は、サラフィーリア様から許可を受けている範囲だけですから、その事実を踏まえてリルジーナ様は、今、ユウカ様のアカシックレコード行きについて船長と打ち合わせをされています」

 「・・・、・・・、・・・」

 「ユウカ様!大丈夫・・・ですか?」

 へなへなへな。

 「ご気分がお悪いので?」

 へなへなへな。


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