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第4章 不思議な訓練  10

 「そこで本官から、リルジーナ様とリンドウ様にご質問です。そのお答えを伺う為に、お二人にはここに来て戴きました」

 「艦長はわたくし達の切り札を、可能な限り早期に発動したいのですね?」

 リルジーナが、ガルバラスの質問に対応している。

 「ユウカ様は、今日、コクーンによるフェイズ1のトレーニングを終えられたばかりです」

 リルジーナが答えた。

 「ええ、その事は本官も承知しておりますが・・・」

 おいおい、本人を抜きにして勝手に話を進めるな!

 「ユウカ様は、この後、翌々日にわたくしとの対面トレーニングを2日間で2回行って戴いて、それから7日置いてから、愈々《いよいよ》、アカシックレコードに向かわれる予定です」

 リルジーナが、私のトレーニングの日程をエルドラルドに説明した。

 アカシックレコード?それって一体何?一体何処?

 「成程。ユウカ様とサラフィーリア様との邂逅は、アカシックレコードでの結果次第と言う訳ですか?」

 サラフィーリアとの邂逅?

 この人達は一体全体、何を考えているのよ!


 「リンドウ様、アカシックレコードへの出発までの日程を何とか短縮する事は出来ませんか?」

 ガルバラスは、今度はリンドウの方に向きを変えて、彼に質問した。

 「それは十分に可能です。今、リルジーナ様が仰られた日程は、ユウカ様の体調を最大限以上に配慮した日程です。ユウカ様は、『最新型コクーンのPGRX7マイノビア』を手懐てなずける程の才覚をお持ちの方ですから」

 ちょっと、リンドウ!私はマビちゃんを手懐けたんじゃ無くて、彼の方から私に弟子入りをして来ただけなの!

 「それでは、リンドウ様がお考えの最短のスケジュ-ルは?」

 ガルバラスが、リンドウの方に身を乗り出した。

 「ユウカ様には明日早速、リルジーナ様との対面トレーニング2日分を1日で受けて貰います」

 グラスの底に残っていたオレンジジュースをストローでずるずるとすすっていた私は、リンドウの言葉で思わず、口の中のオレンジジュースを床にこぼしそうに成った。

 こらこら、リンドウ。私の体調を第一に考えなさい!

 「元々、ここまではユウカ様の身体的にも精神的にも負荷がほぼ掛からないプロセスですので・・・そしてユウカ様ならメンタルボディまでのチャクラへのアクティベートが3日間で定着される事でしょう」

 リンドウが又、何やら意味不明の事を言い出したが、それをいちいち問いただす程の気力は、今の私には残っていなかった。

 「リルジーナ様も同じお考えと理解しても宜しいでしょうか?」

 「ユウカ様の能力の発動を早めたいので有れば、それは仕方が無いかと」

 ああ、リルジーナまで何て事を言うのよ!


 「お、おお!それは素晴らしい!」

 エルドラルドは歓喜の声を上げた。

 どうやら、当事者の意見は抜きで、私のトレーニングスケジュールが決まってしまった様だ。

 今更、私には無理です!と言えそうな雰囲気では無かった。

 それに良く考えたら、スケジュールが早まった分、私も早く地球に戻れるのだ。

 リンドウ達は確かに魅力的な人物では有るけど、人違いで連れて来られた挙句に戦死までしたら、流石に割に合った話じゃ無い!

 「ユウカ様!そのスケジュールで宜しいですな?」

 「皆さんがそれで大丈夫だと言うのなら・・・」

 「おお!素晴らしい、実に素晴らしい!このエルドラルド、皆様に厚く感謝を申し上げます」

 そう言うと、エルドラルドは私達に深々と頭を下げた。

 エルドラルドは、この巨大空母のクルー全員の生命いのちを預かっている身だから、切り札だと思っている能力に賭ける気持ちは私にも理解出来た。

 私が偽者だと知った時、エルドラルドがどれだけ悲しい顔をするのかを想像すると、私も少しばかり切ない気分に成った。

 「そうと決まれば、早速、我々はトレーニングルームに戻ります!ユウカ様には明日に備えて、予定外ですがコクーンに依る松果体のチューニングを受けて貰いますので」

 リンドウ、この薄情者めが!


 翌日、リルジーナから対面で受けたトレーングはとても不思議な物だった。

 私とリルジーナは、座布団みたいなマットの上に両脚を座禅状に組んで向き合った。

 リスジーナの指示で、私は背筋を伸ばしてから、肩の力を抜いて両目を閉じた。

 その狭い部屋に何かの音が聞こえて来た。

 最初、その音は金属音かと思ったが、そうでは無さそうだった。

 只、その音を聴いている内に、私はとても懐かしい気分に成った。

 やがて、私の脳裏に一人の女性が現れた。

 白いドレスの様な服を纏い、腰には細身のベルトを巻いていた。

 頭には花で編まれたティアラを被り、左手には杖を持っている。

 どうやら民衆達を何処どこかに避難させている様子だ。

 彼女の背後には、高く険しい火山が有って、そこから黒々とした噴煙が激しく上がっていて、大量の火砕流が流れ出していた。


 次の瞬間、その女性が洞窟の中の演台に上がって、民衆に何やら語り掛けていた。

 民衆はその女性の言葉が終わると、皆が一斉にオーッ!と言う雄叫びを上げた。

 それからその女性は、民衆の心が落ち着く様に、或る歌を唄い出した。

 その歌に、私は聞き覚えが有った。

 だが、それは今と成ってはとっくの昔に忘れ去った筈の歌。

 何の歌だったのだろう?

 私はその時、ハッと成った。

 あの女性は、若しかして私?

 そう感じたのと、激しい睡魔が私を襲ったのはどちらが早かっただろうか?

 誰かの手が、私の両腕を後ろから支えて呉れた事だけは、私にもおぼろげながら分かった。 


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