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第4章 不思議な訓練  6

 「現状、最大の問題点は、我々の主力艦隊で有るオリオンの腕連合大艦隊が、ペル|セウス渦状腕《Perseus Spiral Arm》での紛争を調停する為に出擊している事です」

 「じゃあ、主力艦隊は私達の近くにいないと?」

 「ええ、琴座のアンチャラブレーンが開く時期が間近に迫っている中での出擊に、我々は強く反対したのですが、阿呆のかたまりの、あっ、失礼!出世欲の塊の、いや、これも失礼、ベーリック元帥が断固として態度を変えず、出撃してしまいました」

 う~ん、ベーリック元帥と言うのは阿呆で自己中な強欲者なのか?

 あたしは明日、ガーリックトーストを食べる事を諦めた。

 「確かにペルセウス紛争を調停出来れば、天の川ロイヤルガーディアン勲章を受章出来るかも知れませんが、長年に亘って続いている紛争なので調停は簡単では有りません」

 「ふ~ん、それは困ったわね。彼等が戻るまで、ベテルギウス守備艦隊だけで応戦しなければいけないと言う訳ね」

 「御意!」

 リンドウは、急に私にひざまづいた。

 「な、何を?」

 「ですから、ここはユウカ様のお力が、絶対的に必要なのです」

 「そう言われても・・・」

 「悪意の勢力は、5次元と4次元、それから3次元の多次元複合艦隊ですが、その数はおよそ2000隻!」

 「2000隻なの?85隻対2000隻じゃ、全く勝負に成らないじゃん?」

 「仰る通り」

 「私に、仰る通りとか言われも困るんだけど・・・」

 「大丈夫です。ベーリック元帥は阿呆で強欲ですが、自身に関する損得勘定には天才的な能力を持っています。若し、アンチャラブレーンの開口に大艦隊の到着が間に合わなければ、ライトサイドの全勢力から痛烈なバッシングを受けてしまいますから」

 リンドウの表情には、真に迫る迫力が有った。


 「ライトサイドって、映画スターウォーズのライトサイドの事かしら?」

 「僕は映画スターウォーズを知りません。その映画でのライトサイドの定義は?」

 定義は?と問われて正確に答える事が出来る程、私はスターウォーズのファンでは無いし・・・。

 「多分だけど、慈悲心や無私無欲、癒しとかの穏やかな心から引き出される力を使う、光の守り手の事だったかも・・・」

 「おお、当たらずとも可成り正解に近い答えです!今はその理解で十分ですよ」

 「そうなの?」

 リンドウ達は、スターウォーズのライトサイドの勢力。

 って事は、若しかしてジェダイ?

 「我々は、多次元にわたるそのライトサイドの勢力の一員でして、ベーリック元帥が自身の最重要な任務を果たせなければ、彼の名声は完全に土に落ちてしまいます。下手をすれば軍法会議で厳罰を受けるかも知れません」

 ふーん、ライトサイドの勢力は多次元に亘っているのか?

 そう言えば、敵の悪意の勢力も多次元複合艦隊だと言っていたわね。

 と言う事は、敵はダークサイド?

 「成程ね。じゃあ、そのアンポンタン元帥は最後の場面では必ず現れると言う事ね?それまでどう敵の攻撃をしのぐかが問題な訳ね」

 「流石はユウカ様。ご理解が早い!」

 「リンドウ、私をおだてても何も出ないわよ」

  

 「実は・・・ここからが大切なお話なんですが、リルジーナ様は彼女の伯母上に当たるサラフィーリア様から既に啓示を受けられているのです」

 「リルジーナ様が啓示を?てか、サラフィーリアって人は、私のお母さんだって言ってたよね!」

 「その通りです」

 「その通りですって・・・」

 「要するに、ユウカ様とリルジーナ様は従姉妹の関係なのです」

 「ヴャハハ!この前、サラフィーリアって人が私のお母さんだと聞いた時には、とても笑える雰囲気じゃ無かったから我慢していたけど、流石にリルジーナ様が従姉だと言われたら笑うしか無いよね」

 リンドウは物悲しそうな瞳で私を見詰めたが、やがて諦めた様に、大きくかぶりを振った。

 「現時点では、ユウカ様に信じて貰うのは無理ですから、このお話はここまでにします。僕が大切だと言ったのは、その啓示の内容の方でして・・・」

 リンドウが、その顔をグッと私に近付けると身を乗り出して来た。

 コラ、リンドウ、止めなさい!余り私の眼前に近付くと、心臓がバクつくだろうが!

 リンドウの事は私は自分の召使いだと思っているので、素敵な男性だとは認めていても、私は彼に恋愛感情は持っていない。

 イケメンからウィンクやその顔を眼前に迫られると心臓がバクつくのは、私が完全では無いのが救いだが、限りなくパブロフの犬だからだ。

 要するに特定の状況に対して、私は勝手に条件反射をしているだけなのだ。

 その証拠に、捨てられたとは言え現時点で唯一愛している八木沢から、奴は絶対そんな事はしないが、仮にウィンクでもされたら、私は間違い無く「ぐっうぇー」と吐き気を催すに違い無い。

 故に、私の胸バクと恋愛感情とは別物なのだ。


 「サラフィーリア様の啓示は、ご自身がユウカ様が授ける力を使う事で、この戦争が無益な血を流す事無く終結する可能性が有ると・・・」

 「私に彼女の力が授けられるって言うの?」

 「ええ、サラフィーリア様は上位7次元に転生されていますので、上位3次元の存在で有るユウカ様との邂逅は、上位5次元で行われます」

 「行われますって、私がその上位5次元まで出向くって言う事?幾ら何でもそれは冗談が過ぎるわよ!だって26年間生きて来て、これまで一度も海外さえ行った事が無い私が、上位5次元とかに行ける訳が無いでしょう?」

 「いいえ、行けます!」

 コラ、コラ、リンドウ!それ以上、私に近付いたら蹴りを入れるよ。

 「その為に、これからトレーニングを積む訳ですから」

 今の段階で、リンドウに何を言っても無駄な事ね。

 私はこれ以上、この件でリンドウと言い争うのは止めにした。

 「信じられない話だけど、その内容自体は分かった事にして置くわ。私、何だか疲れちゃったから、今からは独りにして呉れる?」

 「ええ、かしこまりました。今日はトレーニングの初日でしたからね。ゆっくり過ごされて下さい」

 「うん、そうする」

 「トレーニングは、少し空腹位の方が効果が高いので、明日は午前11時にトレーニングルームでお会いしましょう」

 「分かった」

 リンドウは持参した器具とカップをダスターシュートに格納すると転送ボタンを押してから、この部屋を後にした。

 まさか私の名前が由佳で、ユウカと発音が近い為に私をそのユウカ様と間違える程、リルジーナ達は愚かでは無い。

 きっと、れなりの理由が有る筈だが、それを聞いても詮無せんなき事!

 それよりも、トレーニングの目的が信じられないハイレベルに設定されているお陰で、直ぐにでも私が偽物で有る事が判明する筈だ。

 私に幾ら、ド根性と糞度胸が備わっているからと言っても、それだけで上位5次元とかに行けたら笑っちゃう物ね。

 私は、地球の私のワンルームに送還される情景をまぶたに浮かべてホッと胸を撫で下ろした。


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