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カルデラ湖

作者: 奥野鷹弘

車を走らせて約どれくらい……、観光雑誌で観た湖がいま目の前にある。

 朝イチに満タンにしたはずのガソリンが

 もう半分になっている。


 車に乗り込む時に山から覗いていた太陽が

 今や頭上から嘲笑っている。


 洗濯でシワを伸ばしたはずのシャツが

 湖畔に着いたいまやクシャクシャになっている。


 山から湖面へ、湖面から俺の頬へ、

 ヒンヤリした風が撫でていく……

 そして風は木々を潜り抜け山を越えていく。



 俺はいま、カルデラ湖を目の前にして立っている──



『ここが、あの……、』



  ここに来た理由はいくつかあった。

  酔った勢いで帰り道のコンビニで観光雑誌と肉まんと何かを買った。その何かはレシートもなく憶えて無さすぎなのだが、必要以上に財布からお金が失くなってるから買ったのだろうと思ってる。それよりもここに来た理由…、それは、雑誌が「ここへ行け!」と言わんばかりに両開きで、この湖を紹介をしてきた。仕事の忙しさに翻弄され視界が狭くなっていたときの出来事だった。



 風に吹かれて鏡であるはずの湖面が揺らいでいる。


 峠を越えて落ち着いたばかりの両手の握りこぶしが汗を掴んでいる。


 さすが、カルデラ湖だけあって、沈木の一部が水面から顔を出していて心に訴えてくる。




 木々はさらに風で葉を散らしていく。

 そして、木枯らしとして俺の頬を撫で朱く染めてからかっていく……

 




  俺は、貯まっていたものが膨れ上がり爆発した。

  水辺に近付くにつれ抑えきれない本能に自分でも驚きながら、何度も砂利にで足止めされながら、そこの地面には溜まらない何かを落としながら、風を掻き分けた。



『この景色を綺麗だ』と、取材者はいう。


  俺はわからない。「どこが、()()なのだ?」




  背後で休んでいる愛車は、強いブレーキと無駄なエンジンの吹かしで熱を帯びてヒートしている。


  少しは休んでも良いよね?とばかりに、ついさっきまで頭上にいた太陽がここぞとばかりに姿をくらませようとしている。


  涙と裏腹に緊張しきった自律神経が背中の汗となってシャツを濡らしていく。



 ──俺はいま、カルデラ湖に自分を重ねている。



 

  もし誰かが俺の飛び出し話をしたとして、ここの湖の話になったときには、()()()()()を話そうと考えている

 

視界が鮮明になる眼鏡をつけたならば、エンジンを掛けて支笏湖を後にしよう………

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