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18.南の脅威

前回更新からだいぶ開いてしまいました。

申し訳ないです……

今日から毎日更新目指してがんばります。次章完結までは続けます!

 

『ワールドリング』の舞台となる大陸は円形に近い形をしている。

 大陸の中央には【聖王国】と呼ばれる大国が存在していて、文字通り政治的にも大陸の中心となっていたはずだ。

 そして、大陸の東側には【賢者の塔】と呼ばれる、大国に匹敵する権威を持つ研究機関があり、聖王国の西側には、【副都】と呼ばれるゲームではチュートリアルもかねている聖王国第二の中心地がある。


 ――さらにその西側、大陸の西三分の一は、既に影の軍勢の手に落ちた。


 つまり、この大陸は既に影の軍勢の手によって、かなり追い詰められている状態ということになる。

 はるか昔、影の軍勢が初めて出現したとき、連中は影に潜む特性も相まって急速に勢力を拡大し、かつて西側で栄えていた国々を瞬く間に滅ぼしたのだ。

 西側の国々がほとんど滅んだ時に、ようやく影の軍勢に対する情報が揃い、聖王国は影の軍勢の侵略を辛くも防ぐことに成功した。

 影の軍勢は影に潜む。

 その特性を知らないうちは、非常に恐ろしい存在で、簡単に人を殺せるし、簡単に逃げられた。

 逃げる人の影にひそめば、隠れた町や堅牢な砦の中に忍び込んで内側から崩すこともできる。

 まさしく、影の軍勢は人類の敵といってもよい存在だ。


「ほんと、この世界は怖くてしょうがない」


 俺も歩きながら、時折自分の影を剣で突き刺している。

 影の軍勢は影に潜むが、それは万能ではない。

 影に潜んでいる間は出る以外何もできず、その状態で攻撃されれば何もできずに塵になる。

 だから戦闘終了後や町を移動したときは、影を攻撃して安全を確かめるのだ。

 他にも光を当てて影を無くせば、影に潜んでいた兵士はしばらく悶えて無防備になるなど、知ってしまえば対策はとれる。

 この情報と対策のために、数え切れないほどの多くの命が犠牲になった。

 それでも、依然として脅威であることに違いはなく、戦闘の際に影の兵士同士の影に潜むことで数を誤認させられたり、戦闘中に突然奇襲される確率が高いため、影の軍勢が集団でいる時の危険度は非常に高い。

 もし今の状態で影の軍勢に出くわしたら、俺は間違いなく殺されるだろう。


「そもそも俺、今丸腰だしな」


 空を仰いで溜息を吐く。

 俺は今、小さな背負い袋しかもっていない。

 最低限のお金だけで、武器もなにもない。


「【氷雷】と【炎雷】があるから、多少の敵なら逃げるくらいはできるだろうけど、俺あんまり魔力ないしな」


 右手に青い雷【氷雷】、左手に赤い雷【炎雷】を纏う。

 元は【擬人竜】が使っていた魔法だが、さすがは竜種が使う魔法といったところか、消費魔力が多くてそう何度も使えない。

 これでは、長旅で不安が残る。

 マップにない無法地帯に行こうというのだから、当然武器とかが売ってそうな町や村に心当たりはない。

 そもそも買うお金ないけど。

 さて、大陸の中心から北側はさっき整理した通り、聖王国を中心とした勢力と影の軍勢の勢力が拮抗した状態だ。

 では、これからいく大陸の南側はどうなのか。

 南側に関する情報は少ないが、それでもわかっている抑えておくべき情報はある。

 それは、南側が聖王国の力が及ばない無法地帯となった原因であるとある国のこと。


「ソルナアース帝国。広大な大陸の南側三分の一を占めておきながら、百年以上沈黙を貫き続ける不気味な国」


 俗に帝国と呼ばれる強国。

 帝国はゲームでは、レオナルドが各国との絆を深めて条件を満たしたとき、突然大陸全土に宣戦布告してくる。

 そしてこの宣戦布告は、ゲームで特殊ルートに入るための最初のイベントだった。

 大陸中を旅してまわるレオナルドが唯一いけない国、それが帝国で、ゲームでレオナルドがいけなったから、当然俺も帝国についてよく知らない。

 唯一わかっているのは、その強大さだけ。

 帝国は非常に危険な国だ。

 特殊イベントが発生し、帝国が聖王諸国に宣戦布告をしたあと、聖王国側の国々は一様に帝国を警戒し、過剰といえるほどの戦力を持って帝国に対抗した。

 影の軍勢との大戦争に備えるために揃えた連合軍をすべて帝国へ向け、早急にケリをつけて本題の影の軍勢に戻ろうとしたのだ。

 だが――


「帝国の実力は、想像のはるか上を行っていた」


 帝国は聖王国を中心とした連合軍に食い下がるどころか、圧倒した。

 帝国は村落を問答無用で制圧し、あろうことか一部の都市すらも簡単に占領してみせた。

 密偵として帝国に送り出した精鋭部隊も一人として戻ってくることもなく、むしろ聖王国側は帝国の戦士になんなく首都まで攻め込まれることもある。

 俺も帝国と聖王国の開戦イベントを初めて見たときは、空いた口が塞がらなかった。

 俺だけでなく、ゲームをプレイした人たち全員が、帝国に対して同じことを思っただろう。

 ――登場するゲームを間違っている、と。

 桁外れの技術力と統率力、百年先のパラダイムを持つ帝国は、大陸中の国を敵に回してもなお圧倒して見せた。

 それどころか、影の軍勢すらもまったく意にも介さない。

 だが、一番の脅威は技術力や思想ではない。

 帝国の頂点に座する最強の皇帝と7人の直属の家臣たち。

 一人で一軍に匹敵するとされた家臣たちは、いずれもレオナルドの敵として立ちふさがり、全員もれなく超強いボスとして、プレイヤーたちに畏れられていた。

 そんな帝国を前に、聖王国側は瞬く間に窮地に陥った。


「不幸中の幸い、というべきか、帝国は影の軍勢も等しく殲滅したから、結果的に世界は一気に平和に近づくんだよな。代わりに人間同士の戦争が始まるけど」


 これだけでも嫌われる理由は十分すぎるが、百年以上沈黙を守ってきた帝国が他国に過剰なほどに嫌われているのは、もっと大きな理由がある。


「バラバラだった大陸諸国がようやく団結して影の軍勢に総攻撃をしようとしたところで、横っ面を叩くみたいに宣戦布告して水を差したんだから、そりゃ嫌われるよなぁ」


 レオナルドのおかげでようやくバラバラだった大陸の主要国が一つにまとまり、やっと訪れた千載一遇の好機を台無しにされたのだから、聖王国側の国々は帝国に対して猛り狂った。

 聖王国側からすれば、自分たちが一致団結してようやく勝てるかどうか、といった相手よりもはるかに強い敵が急に現れたようなものだ。

 出てくるタイミングもその実力も、聖王国諸国の危機感を煽るのに、これ以上ないほどの存在だった。


「南にいくとしても、帝国に近付くことだけは避けないとな。巻き込まれたら、たまったもんじゃない」


 戦いたくないから南に行くのに、そのせいで戦争に巻き込まれるなんて本末転倒だ。

 一度深呼吸をして、一路太陽が昇る南に向かった。


【MP】

精神力、魔力とも呼ばれる。

知力、信仰に比例して増加し、属性耐性も増加する。

病みたくなくば精神を鍛えよ。


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