07 貧困層出身のギャング・ブラッズ
ー前回の喧嘩から数時間後のブラド内バー&ホテルー
あの後しばらく俺たちはメモリーのことについて聞きまわったがそれらしき情報はなかった。逆に変なものを売られそうになったり、情報料を求める者もいて苦労していた。もう外は暗くなってきていたので今日はここで泊まることにした。宿の主人に話しかけようとすると主人は俺たちを見て言った
「いらっしゃい!あんたらカップルで旅行とかかい?面白いやつもいるもんだね~」
全く違う解釈をされて俺は呆れたがなぜかエミは少々顔を赤らめて言った
「ち、違いますよ!ただのビジネスパートナーです!」
「はは!そうかいそうかい!まあ気にしないでくれ。んで泊まりかい?部屋なら...」
「おい!ちょっと待ちな!」
宿の主人が部屋の説明をしようとしていた時だった。後ろから怒鳴り声が聞こえ振り向くとそこには多くのブラッズがいた。そして中心には服装はスケバンのような恰好をし、バイクヘルメットをかぶり、手には釘付きバットを構えている女がいた。俺はすぐに分かった。恐らくこいつが噂に聞いていたブラッズのボスのーーーだろう。だがエミは知らなかったようで
「えーと、もしかして誘拐されたんですか?」
「ンなわけあるか!馬鹿!あたしはブラッズのボスのーーーだよ!」
一種のギャグでも見せられている気がした俺はさっさと終わるのを待っていたがあるやつを見て目的に気付いた。
「あたしはとある奴を探してるんだ。」
「ある人?」
「そう。あたしの仲間が世話になったみたいでね?」
フレイが言い視線を向けるとそこにはボロボロのギャングが居た。おれが半殺しにしていた奴らだった。俺を見て気づいたようで
「姉貴!アイツです!あの野郎が俺の腕を折りやがったんです!」
「へー、そうかい。ならやることは一つだな。」
フレイはそう言うと手下に合図し、俺とエミの周りを囲み全員を武装させた。
「うちのが世話になった分の謝礼をしてやるよ。お前ら!やってや...」
「寄生生物の異常検知、テラーウイルスを活性化、テラースクリームを強制発動」
フレイが命令を下そうとし、エミが怖がったその時だった。突然機械的な声が聞こえた俺は本能的に生物とは思えない声で耳が張り裂けそうなくらい叫んだ。何人かが耳を塞ぎ、何人かが直接聞いた。
しばらくしてやけに静かになった、というよりは全員がやけに変な感じになっている。何が起きたのか俺にもわかっていなかったが突然一人のブラッズが叫んだ。
「一体何なんだ!近寄るな!」
周りにも伝染したかのように次々と異常者が出てきた。
「うわー!もう嫌だー!」
「どこにいやがる!出てこい!」
「うわあ、あぐあああ」
遂にブラッズは狂ったように同士討ちをはじめ、この様子にフレイは戸惑い、エミは不安になった
「一体どうしたんだお前ら!おい!」
「急に殺しあうなんて一体どうしちゃったの?」
何人か正気だったブラッズはすぐにフレイを守りに向かい
「姉貴、一回逃げましょう。このままだと俺たち全員死んじまいますよ!」
「こいつ、人間じゃないですよ姉貴!」
「仕方ない!お前ら撤退するぞ!野郎!覚えてろよ!」
フレイは何人かのブラッズを引き連れて逃げてしまった。俺たちの周りには同士討ちで死んだブラッズの死体で大量だ。エミはとても気持ち悪そうにしており、宿の主人は気をきかせた
「うう...気持ち悪い…倒れそう...」
「どうぞこの部屋へ!ここで休んでください。」
「ありがとうございます...うう」
「それじゃあ、この死体片づけますんで...」
宿の主人がそういうと後ろのドアから物置部屋に行ってしまった。
ー数時間後、宿の一部屋ー
さっきの騒ぎの後のわりにはエミは熟睡していたが、俺は睡眠不要なので眠ることはない。それよりもさっきの能力...機械の声...俺は一体どうしたんだ?まるで本能的に行動したような感覚だったが、過去にも同じようなことがあった気がしてならない。だが今このことを気にしている暇はない。誰よりも早くメモリーとモノを回収しなければならないのだ...
ーブラッズ本拠地内・保管庫ー
金品などで埋め尽くされたブラッズの略奪品に奇妙なものがあった。ケースに入ったUSBとBと書かれた試験管らしきものだ。そしてその試験管内の液体は何かに反応するかのように突然震え始め、光始めるのだった…