放課後
顔合わせとペア決めの初日を終えた美世は寮への帰り道を愛奈、灯夜と歩きなが大きな溜息をついた。
心ここに在らずの美世に、灯夜は首を傾げた。
「美世はどうしたんだ?」
「あーーー(い、言えない)」
問い掛けられた愛奈は視線を宙に彷徨わせ、言葉を詰まらせた。
「一回絞めるか・・・・・・」
「美世?」
ブツブツと言う美世は目を据わらせ物騒な言葉を呟いた。
そんな美世に灯夜は美世の顔を覗き込んだ。
「どうした?」
「あ、アイツが・・・」
優しく問い掛ける灯夜を見ると美世は、怒りに震えながら話し始めた。
「アイツ?」
「黒川柊斗!!アイツ教師を使って好き勝手やりやがって!!」
顔を顰める灯夜を他所に美世は爆発したように声を上げた。
「呼んだか?」
「げっ!!」
見計らった様に柊斗が声を掛けてきた。
美世は飛び上がり灯夜の後ろに隠れた。
「初めまして。黒川家、長男の柊斗です」
「・・・・・・玖蘭灯夜です」
柊斗は灯夜を敵意のある目で見やり握手を求めた。
灯夜は美世を背中で隠し、握手を無視して名乗った。
「美世とはどういうご関係で?」
「兄妹ですが?そちらは、ただのクラスメートでわ?」
「そうですか。美世とはペアなんですよ」
灯夜の服を掴んでる美世をチラ見すると柊斗は問い掛けた。
灯夜も負けじと睨み聞くと、柊斗は勝ち誇ったように【ペア】を強調して言った。
(言うなぁーーーー!!)
「ほぉー?」
愛奈は顔を青ざめて声にならない悲鳴を上げた。
灯夜は目を細め、地を這うような冷気が漂い始めた。
(か、帰りたい)
不穏な空気が立ち込める中で愛奈は切実に思った。
「あーーーー!」
「「美世?」」
沈黙が包み込む二人を他所に美世が何かを思い出しかの様にいきなり声を上げた。
驚く灯夜と柊斗が声をかけるが、美世は顔を青ざめながらあたふたしていた。
「灯夜ー時間・・・・・・」
「「あ・・・・・」」
涙目で言う美世に、灯夜と愛奈は時計を見て時が止まったように固まった。
「では、俺達はこれで失礼する」
「お、おい!」
灯夜は柊斗に声を掛けると、呼び声を無視して美世と愛奈を連れ忽然と姿を消した。
「転移魔法・・・・?」
柊斗は誰も居なくなった場所を見詰め、言葉を漏らした。