玖蘭兄妹
「灯夜、さっきはありがとう」
「いや、構わない」
美世は灯夜と廊下を歩きながら言った。
灯夜は何事も無かった様に言うと美世の頭を撫でた。
「ちょっと!学校では止めてよ!」
「あぁ、悪い。つい癖で」
美世は顔を赤くして抗議するが、灯夜は悪びれた様子も無く手を離した。
「所でアイツらに何言われたんだ?」
「特になにも。どうやって総代になったんだって聞かれたぐらいよ」
「アイツはプライドだけは一番高いからな」
灯夜は話しを変えると美世は髪を整えながら呆れた様に言った。
灯夜は納得すると溜息をついた。
「玖蘭君」
「「はい?」」
歩く二人を初老の男性が後ろから声を掛けた。
灯夜の苗字は美世と同じ【玖蘭】で二人は兄妹だった。
その為、玖蘭と呼ばれ二人とも振り返った。
「あぁ、美世君も入学したんだったな。
美世君入学おめでとう」
「理事長、ありがとうございます」
初老の男性はニコリと笑うと美世に握手を求め、美世は理事長と呼び手を出した。
「理事長。何かありましたか?」
「いや、夏目さんから聞いたものでな」
神妙な顔で問い掛ける灯夜に、理事長は目配せをしてたわいもないことを答えた。
「そうでしたか」
「灯夜、私先行くね」
理事長の目配せに気付いた美世は、二人に断りを入れるとその場を離れた。
「悪かったね」
「いえ、お気になさらず。でわ行きましょうか」
申し訳無さそうに謝る理事長に灯夜は首を振ると、場所を移す様に言った。
「で、何かありましたか?」
「キミも知っての通り今年はあの五色家が揃って入学した」
理事長室へと場所を移した二人はソファーに座ると、灯夜が話しを切り出した。
理事長は深刻そうに話し出した。
「えぇ。先程お目に掛かりましたよ。美世に絡んでましたね」
灯夜は頷くとさっきの出来事を話した。
「そうだったか・・・・」
「今年の任務も護衛と言うことですか?」
項垂れる理事長を気にする様子も無く灯夜は話しを続けた。
「後で正式にギルドにも依頼するが玖蘭君達にもフォローをお願いしたい」
「分かりました。あくまでも派遣されたギルド員が主体であることをお忘れ無く」
理事長は硬い表情で言うと頭を下げた。
灯夜は承諾すると席を立ち上がり、理事長室を後にした。