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第63話 侵食

俺とロモ、そしてマイルとその騎士達は操舵室を目指して鋼鉄の迷宮を捜索していた。

照明によって明るく照らされた狭い通路を警戒しながら歩いていく。

歩きながらマイル達は、ロミウル王国の転生者が設計したであろう近代的な船内に驚いてた。

「すごいですね、何という機能美・・・。これがあなたの世界の・・・。」

「広さはまずまずにゃね・・・。」


「軍艦だからな・・・電気・・・動力源が生きているのか・・。」

まるで巨大な迷宮に木霊する魔物の咆哮の様に、駆動する動力源が船内に低音を響かせている。

どうやらその船は、ものひろいで拾った当時のその状態を維持しているようであった。

当然この迷宮に住まう乗組員もいるはずだが・・・・。


「ロモ、どうだ?」

床に手を当てながら、しゃがみ込んでいた獣人が立ち上がる。

「人の気配は無いにゃ・・・。」


「まぁ、ものひろいで人は回収出来ないってことか・・・。」


「そのようにゃね。」


「ここか・・。」


俺達は入り組んだ迷宮を抜け、操舵室にたどり着いていた。

操縦席から全面ガラス張りの窓を通して見える湖の大パノラマは絶景であった。

そこはおそらく当時に使用されていたままの状態で多くの近代的な機材のモニターやボタンが点灯していた。


「使えそうだな。」


「そうにゃね。」


「コウ殿。報告の為、我々は一旦戻ります。」


「分かりました。マイルさん。」

当然俺は航海の経験も知識も全く無い。この時代にいる人物でそれに足る人材にも心当たりがなかったのである。

だが俺は鉄の塊に等しいこの船を唯一動かせるであろう手段を持っていた。


「知己、どうにかできそうか?」


「はい。マオ様から頂いた道具、及びハッキングツールを使えば私だけで艦内全体を掌握ドミネーションできそうです。」


「マオ・・・あの変わった魔王かにゃ?」


「そうらしいな。」


マオ・・・次空間を捻じ曲げ、時には色々と実力行使してくる文字通りの変態魔王である。

幼馴染を間違えて誘拐し、こちらが魔王城へわざわざ出向く羽目になった事件を起こすぐらいに、ちょっと抜けている所が前世では有名なハッカーであり実力は折り紙付きであった。


次の瞬間、小さな短刀が出現する。

「これは懐刀かにゃ?」

「知己、これは?」


「マオ様のハッキング用の道具です。それをこの艦の何処かに突き刺してください。」


「あの魔王・・・いつの間に・・・どこでも良いのか?」


「はい。」


「コンピュータすら探さなくていいとは、最強の懐刀ハッキングツールだな・・・。ロモ頼む。」


「分かったにゃ!」


獣人は懐刀を手に取り鞘から刀を引き抜くと床に突き刺した。

「刺さったにゃ・・・。」


「刺さったと言うか溶けた・・・禍々しいな・・・。」


刀の接触面が毒々しい紫色に変化していく。

まるで生物のように這いながら侵食していくような様からは何かおぞましさを感じた。


「接続確認しました。解析を開始します。」


タブレット端末の画面が切り替わり、こちらも侵食されていく。

ショッキングピンクの背景にあの魔王の魔法使い姿のイメージキャラクターが表示される。


「マオ☆マオ・・マジカルハッキングVer2.1・・・・何だこれ・・。」

「マオ様のハッキングアプリケーションのようです。」


「趣味全開にゃね・・・」


タブレット端末に大量の真っ黒な画面が表示され次々と消えていく。

「おいおい、まるでコンピュータウイルスだな・・・」


掌握ドミネーション完了しました。懐刀の能力により扉などの艦内の物体制御も可能です。」


「あの魔王・・・・アカネと同じ様に転生特典を改造したのか・・・」


「はい、転生者ではありますがアカネ様以上の腕を持っていると思われます。」


「やはりウィザード級の名前は伊達じゃないな・・・」


次の瞬間タブレット端末の画面が切り替わる。

「おい!何だこれ・・・」


「コウ専用マオの秘蔵画像集・・・・って書いてるにゃ・・・」


「やはりウイルスだな!!知己、アプリケーションを隔離!削除しろ!」


音声にノイズが入り乱れた後に、魔王の音声に切り替わった。

「さくじょ・・で・・。出来ないのじゃ!」


「こっちもハッキングされたか・・・」


「貴様の人工知能にワシの人格を移植した。まぁこの程度朝飯前じゃったのう!」


「ま、魔王の声にゃ!!」


「待て!知己の100TBテラバイトもある人格データを解析して書き換えたのか!?」


「そうじゃが??ほれほれ〜」


平然な態度を取りながらタブレット端末に映る少女はスカートをめくりパンツを見せてくる。


「あの魔王っ・・・!!」


「やばいにゃ・・・」


「と言っても貴様の大切な娘・・・人工知能の本体データには手を付けておらぬから安心せい。」


「まぁアプリケーションから出てこないから安心か・・・っておい!」


次の瞬間、壁から幼馴染に似た二つ結びの少女がゆっくりと現れる。

「魔王様にゃ!?」


「すでにアカネのナノマシンも掌握済みじゃ・・・」


「お前・・そこまで・・・。」


「まぁワシの本体は此処にはおらぬようじゃし、誘惑だけしておくかのう・・。」

セーラー服姿の少女はスカートをめくりパンツを見せてくるが、俺はその縞々模様の布を目の前に微妙な顔をした。

「無機物の分身体が誘惑しても無意味だろ・・・。」


「そうかのう?アカネがナノマシンは本人と同等の質感を表現すると言っておったが・・・」


「どういう・・・」


「つまり・・・・そういうことも可能じゃ!」


「変態だな・・・」

「変態にゃ・・・」


「そして聞いて驚くのじゃ!!此処はすでに支配内・・・つまりワシの体内と同じじゃ!」


「だから?」


「つまり、すでに!繋がっておっ・・!!」


次の瞬間、俺は電磁力でセーラー服姿の少女を壁に貼り付けにした。

そして勢い良く壁に叩きつけられた少女は嬉しそうに興奮していた。

「こっ、これが!!噂の・・・壁ドンと言うやつか!!」


「あぁ、そのままめり込んでいってくれ・・・」


ゆっくりと壁にめり込んで行っているのにも関わらず少女は平気な顔をしながら呟く。

「くっ・・・ま、待つのじゃコウ!ワシに何を・・・何人産ませるつもりじゃ!!」


「いや・・・沈めることにした!!」


「沈めるのかにゃ!?」

「沈めるじゃと!?快楽にか!?」


「やかましい!!」


そんな変態魔王のペースにこちらの調子が狂わされそうになっていた。

腐っても元ハッカーということなのだろうか。

そんな当人は嬉しそうな表情をしながらこちらに懇願する。

「い・・嫌じゃ!このまま、沈みとうない!!」

部屋の金属で出来た壁が大きく歪み少女を艦の外へと排出しようとしていた。

「魔王・・・いっそ、このまま湖の藻屑となってくれ・・・」


背後から別の少女が現れる。

「・・・・とでも言うと思ったか!」


「何っ!?なら・・このまま船ごとだな!!」


両手を壁に向けると周囲の壁がきしみ始める。

「くっ・・・・止む終えんな!」

少女は手を握った。

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