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第51話 最強の魔法使い

俺とナシェはすぐ後ろに居た、幼い特徴ある声の主に目を合わせた。

この場には不釣り合いな純白のローブと魔女帽子からかすかに幼い顔が垣間見える。

そしてその容姿と態度から、初等部の生徒でおそらく高い地位にいることだけはわかった。


「誰?」


「私を知らないなんて世間知らず!」


「何だこのガキ・・・・。」

「何?この子・・・・。」


「ふん、テウリアを救ったぐらいで調子に乗らないで!私なら伝説級モンスターを倒すぐらいの偉業を成し遂げてみせるんだから!」


「さっきの生徒会長・・様の話、聞いてたか・・・・?」


あからさまにテウリアの功績に対して対抗意識を燃やしている少女の様子に、俺とナシェは呆気にとられていた。

隣の机に居たリンがなにか言いたげなので耳をすませる。

「彼女は3人の魔法の始祖様の1人、最強の魔法使い様の子孫で、世界最大の複合ギルドのご令嬢ですよ・・・。」


その言葉を聞いて少女の仁王立ちが更にふんぞり返る。

「あら。よく知ってるわね。私こそ世界最大の複合ギルドRSCの社長の娘にして、最強の魔法使いの子孫リリィ・ウィッチザ・イル。その人よ!」


令嬢ということで、少女がふんぞり返っている理由がわかったが、魔法の始祖という点が引っかかる。


「そういうことか、どうりで・・・魔法の始祖?」


「この世界で魔法を使えるようにした人達の事です。」


異世界は当然、剣と魔法のファンタジーの世界なので出来て当たり前というのが現代人の認識だろう。

その認識と、この世界の成り立ちとは少々相違があるようだった。


「魔法って元々から使えたんじゃないのか?」


「そんなわけ無いでしょ!」


「俺はリンに聞いているんだが?」


「っ・・・何よ!私に聞きなさいよ!」


先程煽ってきた少女に皮肉を言った。

「最強の魔法使いの子孫であるご令嬢様の手を、煩わすわけにも行かないしなー。」


俺が面倒臭そうな顔をして少女を見つめていると、次第に彼女の体が震えだし、瞳に涙を浮かべていた。

「うぅ・・・・。」


そんな様子を見ていたリンが小さな声でこちらにささやく。

「コウさん。忖度、忖度ですよ。」


「まぁせっかくだし、偉大な子孫様に教えてもらうおうかな・・・。」


年齢的には数えるほどしか離れていないはずなのだが、精神的には未熟なようでその言葉を聞いた少女の顔から笑顔が溢れ出す。

「そ、そこまで言うなら教えてあげなくもないけど・・・」


おそらく少女は俗に言うツンデレだ。

「あぁ、お願いするよ。」


少女の話は30分ほど続いた。

要約すると段階を経て、転生者の特典でこの世界に魔法がもたらされたそうだ。

始めに、最高の魔法使いによって、もたらされた魔法は基礎の特殊な魔法ばかりだったそうで、ほとんど残っていないらしい。

2番目の最強の魔法使いによって、ゲームのような攻撃的な属性魔法が追加され、3番目の魔法使いによって持続力のある魔法が追加された。


要するにこの世界は神様によってアップデートされて機能追加されてきたわけだ。


「こんな感じで子孫の私は偉いの!!」


「なるほどなー(典型的な七光りか・・・・)」


その少女の友達らしき隣の人物が、必死に少女を止めようとしていた。

「リリィちゃん、そのぐらいにしたほうが・・・。」


「こほん。進めてよろしいでしょうか?」


「は、はい。ごめんなさい。」


「それではオブジェクトブレイカーの参加に意義がない方は手を上げてください。」


多数の手が上がる。

「賛成多数ということで進めさせていただきます。続いてスピードスターに移ります。」


これも同学年から5人ずつが選ばれるようだ。


「ちょっと待って頂戴!」


「はい、リリィさん。何でしょうか?」


「私は全種目参加するわ!」


「あなたはオブジェクトブレイカーだけでしたよね。」


「気が変わったの!そいつのせいで!」


そいつ呼ばわりする人物によって、周りの視線がこちらを向いていた。

俺は恐る恐る、後ろを付振り向くとその少女と目が合う。

「べー。」


「はぁ・・・。」


「最強の魔法使いの方がすべての種目を担当してくださるのはありがたいことですね。」


「感謝しなさい!」


「では代わりに抜けていいという方はいらっしゃいますか?」


最強の魔法使いが入るということもあり、数名が手を上げる。

「では組み直しましょう。いかがでしょうか会長。」


「良いんじゃないかしら。ありがとうアルク。」


スフィアサバイバルは何事もなく決まり選考会は終了する。


「それでは解散と致します。」


ぞろぞろと生徒たちが退出していった。

「疲れたな、ナシェ。」

「そうだねコウ君。」

「コウさん、モテモテでしたね。」


「どこがだよ・・・。ってモニカくっつくんじゃない。」

「良いじゃないですか。」


後ろから声が聞こえた。もちろん声の主はあの少女だ。

「噂通り、女の子に囲まれて幸せそうね。」


「あぁ、噂通り幸せだな。」


「煽ってるんだからもうちょっと悔しがりなさいよ!」


「こんなちびっ子に煽られてもなぁ・・・。」


頬を膨らませて少女は怒り出した。

「ちびっ子!?私はそんなのじゃない!もう許さないから!」


「許さないねぇ・・・。俺は忙しいから、じゃあな。」


「待って。私と勝負よ!」


「忙しいって言ってんだろ・・・」


「そうだよ。私と一緒に帰るんだから!」

「いや私とです!」

「そういう事だ。」


「ふん、逃げるの!?」


年甲斐もなく挑発に乗ってしまったが、最強の魔法使い様とやらの実力を見ておく良い機会だろうと思った。

「はぁ・・・勝負って内容は?」


「大会の順位で勝った方が相手の言うことを聞くのはどう?」


「まぁ良いよそれで。」


「ふん。余裕ね。」


「こっちは結構ギリギリなんだけどな・・・・」


「見てなさい!私の凄さを思い知らせてやるんだから!」


・・・・・


大会まで2ヶ月、せっかく出場するのだから優勝ぐらいはしたいものだ。

あの少女との約束もあるが、奪取者やら双子の件で問題が山積みなのでそれらの解決策をなんとしても手に入れたかった。

未知の魔法や他の学園都のつながり、コミュニティといった文化は特にインターネットのないここでは最重要となる。


無論それなりのレベルの情報を要求するのだ、こちらもそれに見合った情報を用意しなければならない。


俺は屋敷の庭で日課の魔法の特訓をしていた。

砂鉄の人形を同時に召喚し操っていたが、ヤツハシ亡き今、この魔法に限界を感じている。

3体目の人形を出したところで脳の処理が追いつけなくなるようで途中で魔法が解けてしまった。


そういった問題を抱えながらオブジェクトブレイカーの対策として電磁力を用いた新魔法を開発する必要がある。

様々な問題が頭を巡り、思うように集中出来なかった俺は練習を早めに切り上げタブレット端末を操作していた。

「知己、魔力を節約しながら強力な破壊力を出す魔法はあるか?」


「はい、闇系統の最上位魔法になりますが、工夫をすればコウ様でもそれと同等の効果を出すことが出来ます。」


「というのは?」


「これになります。」


俺は知己が提案したアイテムを見ていた。

「マジックガントレットねぇ・・・。」


「一応類似した魔法道具がアイテム欄に見つかりました。」


「型名MSG-FMJ・・・マジカルシャイニーガントレット・・・フルメタルジャケット・・・・変な名前だな・・・。」

俺はアイテム欄を開き、それを出現させた。

外見は篭手だが、見たこともない漆黒の金属で表面処理された特殊な武器だった。

「篭手と言う割には手を入れるところがないようだが・・・」


「おそらく磁力で浮かせて攻防一体の打撃を繰り出すものと推察します。他にもオプションで斬撃用の刃を装着したり、魔力を込めたスフィアで篭手から魔法を発動したりもできます。」


「その情報の出典はどこだ?」


「学園の秘蔵書の一冊、”異世界転生公式ガイドブック”になります。」


「公式とは・・・まぁ、先人の転生者様に感謝だな。」


何はともあれ、それを試してみることにする。

手をかざしそれを浮かすと、外見とは裏腹に思いのほか簡単に操作できた。

近くにあった木々に飛ばしてみると易易と幹を粉砕していった。


「魔力を磁力に変換して物理で殴るってことか・・・。」

「それが最も最善かと思われます。」


「特訓の成果もあるんだろうが、これ自体が電磁力の魔法専用に調整されているな・・・。」


少しの魔力で浮遊して、手のように篭手でタブレット端末を操作するといった精密作業も軽々とこなせる。

身軽なロモあたりなら載せて移動させれそうなぐらいには出力がありそうだった。

「魔法道具の開発も面白そうだな・・・。」


魔法もそうだが、人の力にはすぐさま限界が来る。

特に痛みを受けただけですぐに魔法の使用に制限がかかるのは大きな欠点だろう。

そこに道具、このガントレットのような物でその制約を容易に回避することができればさらなる可能性が見出せる。


無論やらない手はない、それにものひろいの能力によって金と物の制約がほぼない俺にとっては適材適所だった。


「知己、このガントレットを解析してくれ。」


「了解しました。」


10分後解析結果を見る。

「どうやら内部は複雑な構造になっているようです。」


「というと?」


「この道具には前世のパソコンと同等の微細技術が用いられています。」

タブレット端末に内部構造が表示される。

確かに復数のパーツが組み合わさり、明らかに前世からもたらされたであろう効率化と構造化技術が用いられていた。

「この世界でそんな馬鹿なことが・・・」

街から一歩でも出れば魔物に出会う文明レベルの異世界であるここでそれはオーバーテクノロジーであった。

もちろんアカネであれば出来なくはないが、驚くことにこれは前世の技術に魔法という概念を採り込みそれを昇華させている。

それはアカネと同等かそれ以上の技術を持った人間、おそらくは複製されたアカシックレコードのシステムを掌握している可能性のある人物だ。


あの魔王であればなにか知っていそうだが、おいそれと呼び出すことも出来ないので会う機会があれば聞くぐらいだろう。


「例のイージス艦といい・・・アカネの言っていたロミウル王国か。さっきから気になっているこの復数の板は何だ?」


「はい、スフィアを板状に変えたものだと推察されます。」


「目的は?」


「大気魔力の吸収効率向上のためだと思われます。」


「それをコアスフィアに貯めて使用者の補助に使っているわけか。」


「おそらくは。」


「復数の文献から魔力の特性を算出してくれ。」


「了解しました。」


「俺の推察通りだとすれば・・・。」


「魔力は前世でいうところの電気に近い特性を有しているものだと推察されます。」


「やはりか。だとすると使いようが広がったな。」


魔法をもたらしたのが転生者ということで、俺は何か引っかかっていたがこれのことだろう。

俺はタブレット端末を操作し、この場で思いついた物を資料にまとめていく。

それはおそらく現状で考えうる最も強力な魔法道具だ


「これをアカネと共有してくれ」


「かしこまりました。」


新魔法の開発の必要がなくなった俺は背伸びをして立ち上がる。

「さて、その間にこいつの練習も兼ねて、アカネの依頼をやっていくか。」

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