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「おい!うすのろ!」
森からの帰路、前から下品な言葉を投げかけてきたのは第三王子のアルバトロスだ
こいつの話は長いからおやつを食べながら聞こう
「こんな所で何やってるんだ?まあお前なんかが何やっても意味ないけどな!」
もぐもぐ
「まさかお前なんかが王太子になれるなんて思ってるんじゃないだろうな?」
むしゃむしゃ
「さっさと城から出て行けよ問題児!お兄様達の邪魔だ!」
しゃくしゃく
「お、おい!聞いてるのか!」
もっちゃもっちゃ
「え?草食べる?」
話半分に聞いていた俺はカバンから取り出した一握りの草を差し出す
今日はちょっと甘めな草が多い気がする
「いいいいらねぇよ!!お前と一緒にするな!」
いつもに増して大声で喚くアルバトロスに内心ため息をつきつつ
断られてしまった一握りのおやつを口に運ぶ
ぱりぱり
「とにかく!お前みたいなのがいると品位が下がるんだよ!品位が!品位なんて難しい言葉お前には早かったでちゅかね~?」
ハッと鼻で笑いながら見下してくる目の前の男児
旦那の浮気について延々愚痴や恨み言を聞かされ、いざ浮気の証拠が掴めたら何故か俺に逆切れしてくる客をいなしていた前世に比べればこの程度かわいいものだ
むぐむぐ
「だから聞いてんのかよお前!!」
「アハハハハ!!」
突然笑い出した俺に、アルバトロスはもちろんフレンや周りのお付きの者まで驚いている
何を隠そう俺自身も驚いていた
俺の意思とは関係なく勝手に笑い声が飛び出すのだ
「アハッ!アッハハハハハハハハハハハハハハアハハッ!!」
あ~
おやつの中にワライソウが入ってたのかな~
ワライソウとは子供用の薬なんかに少量使う薬草で、薬による不快感を和らげるのに用いられる
加熱すると効果が半減するので通常は加熱後に少量を調合するのだが、残念なことに俺は今しがた生で大量に食べた(ドンッ)
「アハハハハハハハ、ハハ!アッハハ!ふふっヒャーッハハハハハハハハ!」
笑いが止まらないのでこれ以上アルバトロスと話すのは無理だと判断し
自分の部屋に帰ろうと歩き出す
「なっ…なん!死んだ魚みたいな目で大笑いしながら近づいてくるなよぉお!!」
この国の第三王子は先ほどまでの勢いはどこに行ったのかと思うほど顔面蒼白で震えている
しかし死んだ魚の目とは大変失礼な奴だな
「ヒャハッ!ヒーッヒヒフッハハハハハハハアハハハハハ!」
こんな失礼な奴は同じ目にあわせてやろうか
俺はカバンの中の草を握りしめアルバトロスの口にねじ込んでやろうとにじり寄る
「うっ!く、くるな……ぅうわああぁぁぁぁああああああ!!!!!!」
脱兎のごとく撤退していく後姿を見ながら俺は笑い声を響かせた
「アーッハハハハハハハ!!ざまあみろ!ハッハッハッハ!」
けっしていい気味だなんて思っていない断じて思っていない
この笑い声はワライソウのせいだもん
「…………また伝説が増えた」
フレンの悲しいつぶやきが聞こえた気がしたが気のせいだろう