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そんなこんなで俺は3歳になった
例の暗殺者事件以降特に大きな事件もなくすくすくと育った俺は
母親に似て中世的なイケメンになった
自分で言うのもなんだが顔はいい
この3年で分かったことはこの世界には魔法があることと
ここヴィーデイマ王国が魔法の大国だということ
あとは両親が過保護だということ
全く泣かないからと医者や神父に治療させようとしたり
動けるようになった嬉しさで兄弟喧嘩したり、寒かったけど使用人を呼ぶのが面倒で手近にあったカーテンを毛布代わりに引きちぎったりしただけで夥しい数の護衛がつくようになった
中身が成人済みの弊害で、子供らしくないがために心配されているのかもしれない
「こんなに護衛いらないのにね」
俺は王宮のすぐ近くにある森へ護衛を引き連れ遊びに来ていた
城で出る食事は脂っこすぎて胃もたれがするので、この森でよく分からない草や木の実を食べて口直ししている
本来は薬草として使うようなものが多いらしく食べても危険はないが普通はそのまま食べたりしないらしい
「殿下…これは護衛ではなく監視……いえ、殿下はこの王国の大切な王族ですからね」
護衛隊長のフレンが何とも言えない表情で遠くを見つめていた
「隊長…なんで第四王子の護衛だけこんなに多いんですか?」
俺が植物採取に勤しんでいる間、少し離れた場所で護衛隊がこそこそと話をしているようだ
まあ仕事さえちゃんとしてくれれば多少の私語くらい多めに見よう
「お前、業務内容ちゃんと聞いていなかったのか?はあ…、明日の訓練倍にするからな」
「ええ!?そんなぁ~」
「これはな、護衛なんかじゃない。監視なんだよ」
「え?監視?継承権争いの関係ですか?」
「…そんな生易しいものじゃない。オウルフ殿下はな…王宮の問題児なんだっ!」
俺には何の話をしているのか聞こえないがフレンの表情からしてかなり深刻な話をしているようだ
王子の護衛隊長になれるくらいの実力があるあの男にあんな顔をさせるなんて、相当深刻な問題なんだろう
「んへ?問題児?…つまり問題をおこさないように監視してるってことですか?」
「あれはオウルフ殿下がまだ1歳だったころ…」
フレンが心配でちらっと横目で見てみたが、今度は全てを諦めた様な顔で遠くを見つめている
大丈夫かあの男は?このままでは若禿になるのでは?
まあいくら俺が王子といってもまだ3歳だ、大人の話を聞いて解決できるとも思えないので大人しく植物採取に勤しもう
「殿下はある日の夜中、どこをどう通ったのか城の地下に続く階段までお歩きになり…階下にある陛下の秘密貯蔵庫に文字通り転がり込んだのだ。ああ、階段の上から転がり落ちてその勢いのままドアをぶち破った」
「うわぁ」
「それで終われば警備担当のクビで済んだかもしれないが、なんと…殿下は倉庫にかけられていた温度湿度調節の魔方陣をぐちゃぐちゃにして、陛下秘蔵のお酒をことごとくだめにしてしまったんだっ…!」
「ひえ」
「しかも何故か殿下は無傷でな…ミステリー…。他にも第三王子様から心無いことを言われ涎をまき散らしながら嚙みついたりもしてたな」
「怖い。シンプルに怖い」
「昨年は…恐らく朝食で召し上がったと思われるプラの実の種を王妃様の庭園に植えて、王妃様を卒倒させていた」
「え…プラの実ってあの地下植えすると他を淘汰し無限に広がるという、あのプラの実?それを王妃様の庭園に???殺生な」
「そういえばカーテンにしがみついて振り子のように遊んで引きちぎったのも1回や2回じゃないなぁ…」
「隊長、帰ってきてください隊長!目がイッちゃってます!」
「とにかくあの方は目を離すと何をするかわからないんだ…」
「俺らの主君がかなりやべぇ方なのは理解しました」
ふぅ
持ってきた肩掛けバッグいっぱいにおやつ――もとい薬草――を獲得して俺は満足した
そろそろ帰ろうかと振り向けば、どうやらフレン達の話もひと段落付いたようなので声をかけ帰路につく