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9話 狂精会の魔の手、ノウェム&ラクリマ VS ベルク・ハーゲン

 




 ◆リッツバーグの街正門◆





「おい! 回復物資の量はこれで良いか!」

「素人の冒険者は全員援護に回れ」

「急げ! 俺達が突破されたら、街は壊滅するんだぞ!」


 各地で怒号やら色々な指示が飛び交っており、皆緊迫した表情で忙しなく動いていた。ベテランの冒険者達が素人の冒険者達に指示を出している。



「わんわん?《マリア、大丈夫か?》」

「フランちゃん……大丈夫かな?」


 マリアの事が心配だ。内心怖くて震えているのでは無いだろうか……俺とマリアは、白面班と呼ばれるノウェム率いる屈強な冒険者達が集うチームに属する事が決まった。白面班、A班、B班、C班と四つのチームに冒険者達は別れる事になる。


「マリア、心配するな。あたいが纏めて蹴散らしてやんよ! だから、あたいから離れるなよ!」

「ありがとうノウェムちゃん! 私も出来る限りの事はするね」


 この戦闘で俺も更に強くなってみせる! 今はこんな身体になってしまったが、これでもそれなりの暗殺者だったんだ。


「頼もしい白面殿も居る事だしな。俺達も頑張るぜ!」


 ノウェムとレイグがマリアを元気付ける為に豪快に笑った。


「マリアさん、共に頑張りましょう! この【 死を告げる大鎌(デス・サイズ)⠀】で魔物達に死を告げて見せます!」

「カルミナさん……」


 B級冒険者の【暗冷姫(あんれいき)】の異名を持つ、カルミナ・アストルム。大鎌の使い手であり、漆黒のドレスを着こなす可憐な女性だ。長い黒髪は、その名の通り暗い漆黒色をしている。



「ふっ、S級のオルトロス……俺の死線で八つ裂きにしてやる」


 A級冒険者の【死線】のバルフレア。忍者みたいな衣服を身に纏い敵を強固な糸で圧倒する使い手である。


「皆さん、お気遣いありがとうございます。私に出来る事を精一杯頑張ります!」

「わんわん!(マリアは俺に任せろ)」


 な、何だ……みんな俺を見る視線が、まるで赤ちゃんをあやすような暖かい視線だ。特に暗冷姫のお姉さん、目がハートになっていないか!? 


「では、各自準備は良いか? もう魔物達はすぐ近くまで迫って来ている。あたいが今回の作戦の指揮を執る。必ず生きて生還するんだ! 行くぞぉぉおおお!!」


 ノウェムが最後の一言を発した瞬間、正門付近に待機していた冒険者達の怒号が地響きを鳴らすように鳴り響いた。





 ―――――――――





「A班は白面班と共に魔物を殲滅。B班はC班を守りながら、街の防衛を頼む!」

「おい! 魔物達が見えて来たぞ!」

「皆、気張ってけよ! 力を合わせてこの困難な局面を乗り越えるのだ!」


 冒険者達と魔物達の戦いの火蓋が切られた。開幕の一撃に、白面のノウェムが魔法を魔物の群れに向けて叩き込む。


「跡形も無く、消し飛べ! 【 湾曲次元の特異点(ドーステッド・ヘルカ)⠀】!」


 ノウェムの魔法で空間が至る所で歪みヒビが入る。そして、空間が音を立て割れ、魔物達を粉々に打ち砕いて行く。冒険者達は皆ノウェムの魔法を見て唖然としていた。


「流石、白面殿だ!」

「俺達も続くぞ!」

「リッツバーグの街は俺達が守るんだ!」

「行くぞぉぉぉぉおおお!!」

「きぇぇえええええ!!」


 冒険者達と魔物達の竜攘虎搏(りゅうじょうこはく)の激戦となった。冒険者達は魔物を狩るプロでもある。冒険者達の街を守る思いは皆同じ、窮地に立たされた時の冒険者達の団結力は目を見張るものがある。


「1時の方向からマーダーウルフ、ソードマンティスが接近!」

「こっちからはゴブリンの群れが迫って来てるぞ!」

「焦るなよ! 冷静に対処するのだ!」


 極力魔力は温存して置きたい……俺はマリアを守るのが最優先なのだ。他の者達まで助ける余裕何てありはしない。全てを守る何て実質不可能に近い。どんなに力があったとしても、サラサラと砂のようにこの手のひらから零れ落ちて行く……


「おい、待て! 一匹見たことの無い魔物が居るぞ!」

「何だよあの魔物は!? S級のオルトロスだけでも強敵だと言うのに!」

「白面殿! あれは何と言う魔物なのですか!?」


 突き進んで行くと森の方から、オーガよりひと回り大きな青いマッチョのゴリラ? みたいな魔物が出て来たのだ。


「ありえない……あれはS級の中でも凶暴で、一匹居るだけで国の軍隊が出動する程の天災……S級のラウンズマウンテンだ。あいつは武器破壊の特殊効果と全属性の魔法に耐性がある厄介な魔物だ……同じS級のオルトロスと比較にならない程にな」

「ラウンズマウンテン……」

「そんなのに勝てるのかよ!? いくらスタンピードでもそんな……」

「やるしかねぇ、俺らがここで逃げたら街はどうなる!」


 しかし、俺には分かる。この匂い……近くにあいつも居るはずだ……狂精会、ベルクハーゲンの匂いがするのだ!


「わんわん!《ノウェム! 奴が近くに居るぞ!》」

「ほう、フランも気付いたか……」


 ノウェムは苦虫を噛み潰したような表情をする。流石にS級のオルトロス、S級のラウンズマウンテンも相手となるとこちら側の戦力は相当厳しい。冒険者達も他の魔物を抑えるのに精一杯だ。


「皆聞いてくれ! ラウンズマウンテンは、あたいが一人で押さえる!」

「白面殿!? それはいささか無理では……」

「大丈夫だ……お前達はオルトロスの方を頼む! フランとマリアはあたいから離れるなよ!」

「しかし……いや、了解した」


 マルグ達は唇を噛み締めながら背を向ける。そして、他の冒険者達へ指示を出し、冒険者達と共にオルトロスの方へと走って行った。


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」

「マリア! 出来る範囲で良い、後方支援を頼む! だが、無理だと思えば即時にフランと共に撤退してくれ!」

「は、はひ! が、がんばるね!」


 ラウンズマウンテンがノウェムに向かって、凄まじい勢いで突撃をして来た。ノウェムは己に体術強化魔法を掛けて応戦する。


「ふんっ!!」

「グルぉぉお!!」


 しかし、ノウェムと相手との間にかなりの体格差があった。俺も魔法で援護しようにもノウェムとラウンズマウンテンの肉弾戦が激し過ぎて、打つタイミングが全く見えねぇ……


「ぐはっ……クソ野郎が!!」

「ノウェムちゃん!【中級回復魔法(ライトヒール)】」


 ラウンズマウンテン……あんなデカイ身体であの速さ……これがS級クラスの魔物だと言うのかよ……俺、全然役に立たねぇじゃねえか。くそっ……何て無力なんだ……


「これでも喰らいやがれ!【湾曲次元の特異点(ドーステッド・ヘルカ)】!」


 ノウェムの魔法で、ラウンズマウンテンの動きが止まった。効いてはいるように見えるが、敵の猛攻はそれでも勢いは衰えないでいる。


「おやおや? 奇遇ですね。こんな所で再びお会いするとは」

「ベルク・ハーゲン!! 今回の黒幕は、やはりお前だったか!」

「くふふ……この街は滅びる運命なのです。そして、私の前にそこのエルフを連れて来てくれるとは……誠にありがとうございます」

「ふざけるな! お前の好き勝手にはさせねーよ!」


 森の奥からフードを被った男がこちらへと近寄って来る。今回の黒幕、狂精会ベルク・ハーゲン……顔は笑顔なのに、何処か不気味さを感じさせる男だ。


「2人相手か……良いぜ……かかって来なよ! 執行者の力、見せてやんよ!!」


 ノウェムの周りの空間が音を立てて、ガラスが割れるようにバキバキと崩れ去って行く。ノウェムの目が赤色に光り、髪の毛の色もオレンジ色から青色へと変化する。


「久しぶりだな、この感覚……フラン、マリア下がってろ……【 解除(リベレイト)刻の支配者(レイ・ドミニオン) 】」


 戦いが再び始まろうとした時だった。この戦場に新手と?思しき人物が現れる。ピエロの格好をしたエロそうな顔をした男が、怒気を放ちながら乱入して来たのである。


「え、ラクリマ!?」

「ふんっ。貧乳小娘一人では荷が重いと思ったのデネ。それに盟主様から直々の命令デス」

「ありがてえ……お前が居れば百人力だぜ!」

「さあ、あいつが私の部下をやってくれたバッドボーイなのデスネ? ぶち殺しマス!!」


 どうやらノウェムの仲間がこの窮地に駆け付けて来てくれたみたいだ。


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