2話 ステータス
「よし、小娘はあっちに行ったようだな」
俺はミルクを飲んだ後、ベッドの上で横になって休憩をしていると小娘は何かを言いながら部屋から出て行ってしまった。これは好都合だ。俺も気になってた事がいくつかあったからな。早速調べるとしよう。
「ふむふむ、この空中に浮かび上がっているステータスとはなんぞや? おっ!? 何じゃこれは!?」
俺がステータスと呟くと空中に透明なウィンドウが浮かび上がった。
◆ステータス◆
―――――――――――――――
【名前】フラン (名付け親・マリア)
【性別】♀
【種族】アイスウルフ
【年齢】0歳
【レベル】1
【称号】無し
【HP】12
【MP】389
【物理攻撃力】10
【物理防御力】13
【魔法攻撃力】220
【魔法防御力】189
【素早さ】20
【状態異常耐性】600
【魅力】386
【運気】29
【スキル】
氷神狼の御加護
万能言語
暗殺Lv6
成長率2倍
病魔耐性 Lv1
鑑定 Lv1
氷属性 Lv1
嗅覚向上Lv5
―――――――――――――――
何だこれは……ステータス? これ、多分俺のだよな? 種族がアイスウルフ? 名前がフラン? あの小娘が俺に名を与えてくれたのか? しかも、性別がメスだと……
「それにしても、フランって……俺には似合わない名前だな」
情報量が多くて頭が破裂しそうだ。誰かこのステータスと言うのを教えてくれ! スキルの所にもいくつか気になるのがあるが、この万能言語にオンとオフがあるな。もしかして、オンに切り替えたら言葉が分かるのか? お? 何かイメージが湧いてきたぞ!
「フランちゃん? ボッーとしてどうしたの?」
「わんわんっ!《おおっ!? いつの間に戻って来たのだ!?》」
「ん? 怖がらなくても大丈夫ですよぉ♪」
あれ? 相手の言葉は分かるけど、もしかして俺の言葉は通じて無いのか? これでは一方通行じゃん。万能言語とは一体……
「水浴びしてから一緒にお寝んねしますよ〜こっちにおいで♪」
「わわん!? 《水浴びだと!? おいおい、俺は男だぞ? 小娘と一緒に入るなんて》」
「フランちゃん……」
分かった……分かりましたよ! そんな泣きそうな顔をしないでくれ……もう好きにしてくれ。煮るなり焼くなりなんなりと!
「うふふ♪ じゃあ行きますよ〜♪」
俺は半ば強制的に小娘に抱かれながら水浴びの場所まで連れて行かれるのであった。
◆マリア視点
―――マリア家・お風呂場―――
「あ、やばい。水の魔導石が少ししかない……でも、お金が……」
現実は非情です。明日食べるご飯すら危ういと言うのに出費ばかりが嵩みます。女性に取ってお風呂で水浴びが出来ないのは死活問題です! 更に石鹸も最後の一つ……何か割の良い仕事は無いかしら。
「わふ?」
「あぁ、ごめんね。少し考え事してたの♪ 私も直ぐに服脱ぐからね♪」
「…………」
あら? フランちゃんそっぽ向いてどうしたのかな? もしかして私と一緒に入るのが恥ずかしいのかな? 別に私は気にしないのになぁ〜
「よいしょっと……フランちゃん、大人しくしててね?」
「わんわん!」
「あらあら、気持ち良い? お腹も洗いますよ〜ちょっと仰向けにするね」
もっと暴れるかなと思いましたが、フランちゃんは借りて来た猫のように大人しいです。こんな無防備な姿をさらけ出して……私を誘っているのかなぁ? うふふ♡ なら、こちらも遠慮はしませんよ♪
「わふっ!?」
「ぐふふ……フランちゃんのお腹ヒンヤリと冷たくて、更にもふもふして気持ち良い♡ スリスリ♡ ん〜♡」
「わん!? わんわん!」
「もぉ〜暴れたらミルク無しにしますよ?」
あれ? 言葉は通じて無い筈ですが、フランちゃんが再び大人しくなりましたね。では、モフモフタイムのお時間です♡ これはコミュニケーションの一環です。非常に大事な事なのです! お互い触れ合う事で絆を深め合い、更には家族の愛情を育む事も出来るので、毎日もふもふは継続して行きたいと思います!
「フランちゃん、大きくなったら私を背中に乗せてね♪ 私、ホワイトウルフの身体を枕にしてお昼寝するの少し憧れてたんだ♪」
「きゅ〜ん……」
「大丈夫だよ、今そんな事したらフランちゃんが潰れちゃうからしないよ〜私より大きくなったらのお話しだよ♪」
ホワイトウルフは獰猛な魔物ですが、毛並みはもふもふとしており貴族との間でも毛皮は高額で取り引きされる程です。まあ、フランちゃんは私の家族なのでそんな酷い事はしませんけどね。
「さてと、私も身体や頭洗ってそろそろ出ようかな。明日は気合い入れて仕事しないとお金が……」
「くぅ〜ん……?」
「あらあら、フランちゃん心配してくれてるの? ありがとね。私、頑張るよ!」
私とフランちゃんは水で洗い流した後に浴室を後にしました。
―――マリア家・寝室―――
「フランちゃん、そろそろお寝んねしますよ〜ムギュっ♡」
「わふっ!?」
「もう! 今日から私がフランちゃんのママですよ〜沢山甘えないとこちょこちょしちゃうよ?」
私はフランちゃんを抱いてベッドへ横になりました。ガッシリとフランちゃんを抱き締めました。尻尾もモフモフで最高♡ これは癖になりますね♪ 一つ分かった事は、フランちゃんは照れ屋さんなのか甘えるのが下手っぴです。これは私からアプローチをかけて行く必要があるかもしれません。いずれは、私に尻尾振って甘えて来るようになると嬉しいです♪ まだ出会ったばかりなので、これから時間を掛けてお互いに仲を深めて行きましょう♡
「可愛いあんよでちゅね♡ ぐふふ♡」
「わぷっ!?」
「うふふ♪ 逃がしませんよ〜大人しく私の抱き枕になるのです!」
ここは必殺技使うとしましょうか。フランちゃんは顎の下とお腹をなでなですると大人しくなるのです! 頭も優しく撫でて上げると目もトロンとして尊いのオンパレード♪
そしてフランちゃんの頭を撫で撫でしていたら、フランちゃんは目を閉じて気持ち良さそうに私の腕の中でお寝んねしてしまいました。フランちゃん案外ちょろいのかもしれませんね。
「フランちゃんおやすみ♪ チュッ♡」
明日は冒険者ギルドにテイマー登録しに行ってから、薬草採取のクエストです♪
―――――――――
(んんっ……ん? あれ、俺はいつの間に寝てたのだ?)
昨日の夜の事が思い出せぬ。俺は寝落ちしたのだろうか? いや、昨日の出来事全てが夢だったのかもしれないな。
「すぅ……すぅ……」
はい、夢ではありませんでした。身体を反対側に向けると丁度マリアが気持ち良さそうな表情をして爆睡してました。しかも、俺を抱き枕か何かと勘違いしていそうだな。
「わんわん!《おい、小娘。朝だぞ? そろそろ離してくれ》」
「むにゃむにゃ……すぅ……すぅ」
やれやれだ。しかし、小娘言うのも失礼だな。今後はマリアと呼ばせて頂こう。一応、俺にフランと言う名前をくれたのだからな。今まで俺は数字でしか呼ばれた事が無かったから、名前で呼ばれるのは何だか新鮮味がある。正直言うと少し嬉しい。
「ぐへへ……お肉だぁ♡ あむ」
「わふ!《ま、待て! 俺はお肉じゃないぞ!? おい、こら! ちょっと待て! 俺は食べ物じゃない!》」
ぺちぺちと小さな肉球の付いた俺の手で、マリアの頬っぺたを叩くとマリアは嬉しそうな顔をするだけでスヤスヤと熟睡して眠っている。もしかして、マリアは朝に弱いのか? しかも、よく見るとパンツ一丁でシャツ一枚と言う乙女にしては随分とズボラで無防備な格好をしておる。何だか俺にダメな娘が出来たような気分だ。これは俺がしっかりしないと行けないな。
「…………」
しかし、まぁ何と言うか。2つのたわわに実ったメロン並の大きさ……いや、それ以上かもしれん。正直何がとは言わないが俺の顔よりデカい。
「ふわぁあああ……ふぅ……ん? あら、フランちゃん起きたの?」
「わふん!《マリア、朝だぞ》」
「んんっ……後もう少しだけぇ……zzZ」
「わんわん!《寝るなぁっ……!!》」
「分かったよぉ〜起きるからぁ」
俺はマリアの腕の中からようやく解放されたので、床に落ちているマリアのパンツとニーソックス等を咥えてマリアの元へと持って行った。マリアは驚いた様な顔をしている。
「フランちゃん凄い……芸を仕込めば色々と覚えそうだね。ふむふむ、少し試して見ようかな。フランちゃん、お手して」
「わふ《あ、あかん。無意識に身体が反応してしまった》」
「フランちゃん……天才かっ!? うふふ♡ 肉球がぷにぷにしていて気持ち良いなぁ♪」
このままではマリアのおもちゃにされそうだったので、俺はベッドから早急に降りた。マリアも身体をぐ〜んと伸ばしてようやくお目覚めのようだ。この身体になってからまだ慣れないな……二足歩行から四足歩行へと生まれ変わったのだから仕方の無い事だけど。
(ちょっとステータス見てみるか。昨日と何か変わってるかな?)
◆ステータス◆
―――――――――――――――
【名前】フラン (名付け親・マリア)
【性別】♀
【種族】アイスウルフ
【年齢】0歳
【レベル】1
【称号】無し
【HP】13
【MP】389
【物理攻撃力】10
【物理防御力】13
【魔法攻撃】220
【魔法防御】189
【素早さ】20
【状態異常耐性】600
【魅力】386
【運気】29
【スキル】
氷神狼の御加護
万能言語
暗殺Lv6
成長率2倍
病魔耐性 Lv1
鑑定 Lv1
氷属性 Lv1
嗅覚向上Lv5
―――――――――――――――
ふむ、何も変化無しか……これは修行とかすればステータスが上がって行くのだろうか? と言うかステータス見ても良いのかどうか分からないな。この鑑定と言うスキルは何だろう? お、概要が出て来たぞ!
【鑑定Lv1】
・レベルが高ければ高い程、相手のステータスや道具等の情報を分析出来る。
試しにマリアのステータスを鑑定してみるか。何か情報が出るかもしれない。
(鑑定スキル発動!)
◆ステータス◆
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【名前】マリア・ステイシア
【性別】♀
【種族】???
【年齢】???
【レベル】???
【称号】???
【HP】???
【MP】???
【物理攻撃力】???
【物理防御力】???
【魔法攻撃】???
【魔法防御】???
【素早さ】???
【状態異常耐性】???
【魅力】???
【運気】0
【スキル】
???
???
???
???
???
???
???
―――――――――――――――
鑑定Lv1だと全然分からんな。ほとんどが???ばかりだ。修行と言っても何をしてたら良いのだろうか? しかし、マリアの運気の所数字0って……マリアが貧乏なのも運気の所が絡んで居るのかな?
「ああああああああぁぁぁっ……!?」
「わふっ!?《ど、どうしたんだマリア!?》」
「ブラの紐が……切れた……予備がもう無いよぉ」
びっくりした……何事かと思ったが、流石運気0の女性だ。ご愁傷さまとしか言えない。
◆マリア視点
「うぅっ……また胸少し大きくなったかな?」
ギルドに行くと男性の方達からの視線を良く感じます。エルフと言う容姿も絡んでるのかもしれないけど、一番の原因は恐らくこの胸だ。ボタンの付いた服を一度だけギルドに着て行った事があったけど、ボタンがはち切れてたまたま近くに居た男性冒険者のおでこに当たってしまい、気絶させてしまった事がありました。なので、それ以来ボタンが付いた服はなるべく着ないようにしています。
「ブラを買うお金が……今日は無しで行くしか無いか……」
マリアは身支度を済ませて、顔を洗いお芋を一つ食べてからフランちゃんにミルクを与えようとしていた。
「フランちゃん〜ご飯ですよ♪」
「わんわん!」
「あらあら、そんな嬉しそうに尻尾振って可愛いなぁ♡」
哺乳瓶にミルクを入れて、フランちゃんのお口へ持って行くとガブガブと美味しそうに飲んでいます♪ そして、このミルクも最後です。今日お金を稼がないと晩御飯がありません……
「慌てて飲んだらメッだよ? 落ち着いて飲んでね」
「ごくごくっ……」
フランちゃんを見てると今日も頑張ろうと言う気がモリモリと湧いてきます♪ 私はこの子のお母さんなのだから、もっと頑張らなくちゃね!
「フランちゃん、今日一緒に冒険者ギルドという所に行くんだよ〜そこでテイマー登録してから、依頼を受けるの♪」
「わんわん!」
恐らく言葉は通じないかもしれないですが、もしかしたら言葉を教えたらいつか喋れるようになるかもしれません。これからは、言語の勉強も教えるのもありかもしれないね♪
「フランちゃん、じゃあお出掛けに行きますよぉ♪」
マリアは家の戸締りをしっかりとしてから、フランちゃんを抱っこして冒険者ギルドへと向かった。
―――マグリウス共和国・リッツバーグの街―――
マグリウス共和国、文字通り君主を持たない政治体制の国である。アルカナと呼ばれる大陸の北東に位置する国で、自然豊かな美しい深緑に満ち溢れている国だ。リッツバーグの街は、マグリウス共和国の南に位置する国で、石畳の道に赤や茶色等、多種多様の煉瓦の建物が所狭しと並んだ人口の多い都市でもある。水運も活発で、建物の間には美しい小さな川がいくつも流れ、別名水の都とも呼ばれている。中世のヨーロッパのような街並みだ。
「フランちゃん、ここが私が住んでいる街だよ〜リッツバーグって言うの♪ 綺麗な建物が多いよね♪ でも、私の家は木造の築60年のボロ屋だけど……」
私も大金を稼いで、いつか素敵な家に住んでみたいものです。その為には冒険者になって一攫千金! と言う夢を見てた時期が私にもありました。現実はそんなに甘くはありません……私はエルフ族と言うのに、魔法の才能は皆無。晩年Fランクと言う駆け出しの冒険者なのです。トホホ……
「あら! マリアちゃんじゃないの! おはよう♪」
「おお! アレフのおばちゃんおはよ♪」
「今日は可愛らしい子を連れているのね〜あ、良かったらパンの耳 沢山あるんだけどいる?」
「私の新しい家族です♪ ええ!? ありがとうございます!」
アレフのおばちゃんはこの街でパン屋を経営していて、昔からの付き合いのあるおばちゃんです。食べ物等ちょくちょく頂けるので非常に助かっております。
「また夕方、お店の方に顔を出すね!」
「はいよ♪ お仕事頑張ってね!」
「うん! 行ってくる!」
冒険者ギルドに向かう途中に街の人達に声を掛けられました。私はこの街の人達が大好きです♪ 街の人達もフランちゃんの可愛さに虜になっていました。道行く人に頭を撫でられたり、おやつを貰ったりとフランちゃんも満足しているみたいです。
「もう少しで冒険者ギルドに着きますよ〜」
「わんわん!」
「何か良いお仕事があれば良いのだけど……」
◆冒険者ギルド協会・リッツバーグ支部◆
「フランちゃん着いたよ! ここが冒険者ギルド!」
「わふっ!?」
冒険者ギルド・リッツバーグ支部は、オシャレな白い煉瓦造りの建物で、何と3階建ての大きな建物である。屋根は赤色で貴族の住むような建物を連想させます。人口が多い都市もあって、ここには多数の冒険者が在籍して日々依頼をこなしている。
1階は総合受け付けや素材買い取りにクエスト掲示板
2階はカフェテリアと酒場に休憩スペース等
3階は会議室や貴賓室にギルドマスターの部屋等
今日用事があるのは1階です。登録関係は全て1階で手続きが出来ます。問題は手数料がいくらかかるか……私の今の手持ちは、銅貨9枚です。雀の涙しかありません……
通過については簡易的にですが、以下の通りです。
白金貨→金貨100枚
金貨1枚→銀貨100枚
銀貨1枚→銅貨100枚
フランちゃんを抱えながら、受け付けへと向かう途中に周りがヒソヒソとざわついていました。恐らく、ホワイトウルフの赤ちゃん……フランちゃんの事が気になるのでしょうね。一応テイマーはここのギルドに多数在籍していますが、ホワイトウルフをテイムしている人は見た事がありません。しかも、ホワイトウルフの赤ちゃんはめちゃくちゃプリティでもふもふです。一言で言うと癒しです♡
「お、おい。あれって……」
「相変わらずエロいエルフだよなぁ。彼氏居るのかな?」
「くそ、あのホワイトウルフ羨ましい! あんな美少女に抱かれて……場所変われよ!」
「まさか、ホワイトウルフの赤ちゃんか?」
「ホワイトウルフの赤ちゃん……か、可愛い……」
「あれは……リッツバーグの【文無しのマリア】やんけ!」
「おいおい、違ぇぞ?あの子の異名は【爆乳の聖母】マリアちゃんだろぉ!?」
「待てお前ら、あの子の異名は【絶対領域】で決まったやんけ!」
「マリアちゃん……ディフフ♡」
おい、誰が【文無しのマリア】ですか!? ごほんっ。まあ、否定出来ないので事実ですけどね! てか、私そんな風に呼ばれてるの!?
「わんわん!」
「あら、フランちゃん歩きたいの?」
フランちゃんがモゾモゾと動いていたので、私はフランちゃんを床に降ろしました。もふもふの尻尾をフリフリとさせてめちゃくちゃ可愛いです♡
「おい、ホワイトウルフの赤ちゃんが歩いたぞ!」
「おい、皆んな道を開けるんだ! ホワイトウルフの赤ちゃんが通るぞ!」
「はぅ♡ よちよち歩きめちゃくちゃ可愛いのですけど!?」
「あらあら、怯えてるのかしら?」
冒険者ギルドの人達は、ホワイトウルフの赤ちゃん事、フランちゃんの愛らしさに目をハートにさせていました。フランちゃんがよちよち歩きをすると大歓声が上がる程の熱狂ぶりです。全員が暖かい目で見守っています。
「マリアさん! この子なでなでしても良いですか!?」
「マリアさん! この赤ちゃん抱かせて!」
「マリアさん! 餌あげても良い?」
「マリアさん! 貴方の胸を揉みたいです!」
最後どなたが言ったのか分かりませんけど、私の胸は駄目です! それにしても、フランちゃんの人気は凄まじいですね♪