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1,000文字以下の短編

[短編]オーパーツの謎よりも神木先輩の謎の方が僕は気になって仕方がない

掲載日:2021/12/05



 オーパーツ。

 それは場違いな工芸品。


 水晶のドクロとか、ナスカの地上絵とか。

 この時代になんでこれが?という謎だ。


 それが、職場の倉庫から見つかった。

 この場所になんでこれが?という謎だ。




「…明日は、テレビ局が社長に取材予定です」

「対応は任せた」

「…電話もメールもたくさん来てます」

「返信は任せた」

「…先輩もやって」

「いや、海野に任せる」

「お願いしますよ、研究開発より対応業務をやって下さいよ!」


 唯一の女性社員の神木先輩に僕は泣きついた。


 先代社長が旅行先で買ってきた汚い布の塊が倉庫にあった。それを開いてみれば美しい飾りの何か。

 調べてみれば、縄文時代に作られた彫漆(ちょうしつ)の髪飾り。


 何年もずっと調査中ですっかり忘れた頃に出たとんでもない結果。

 おかげで、小さな会社はてんやわんやだ。


 発明バカの社長が思いつきを商品にして、なぜかヒットを繰り返して存続している小さな会社。

 研究開発員は神木先輩の1人だけ。

 1週間くらい手を止めても支障はない。


「もう手一杯なんですよ。先輩もメール返信手伝って下さいよ」

「大丈夫だ。海野なら、切り抜けられる」


 不敵な笑みを浮かべて僕を見上げる先輩。

 いつもこの笑みに背中を押されて僕は動いてしまう。






 営業成績が伸びない頃、商品と説明書と地図に囲まれて、1人残っていた夜。

 ふらりと白衣にサンダル姿で先輩がやってきた。


「改良機出来たから、試しに」

「…あ、はい。行きます」


 椅子から立ち上がろうとして、腹から盛大な空腹音。


「…ちょっと待て」


 怒った声で先輩は部屋から出て行った。

 何かやらかしたと僕は机に突っ伏した。



 近づくサンダルの足音と、ことん、がさりという音。


 机に伏せていた顔を上げると、


「飯を食え。それから、来い」


 甘い缶コーヒーと、コンビニのパン。

 そして、不敵に笑う先輩の顔。


 それを美しいと僕は思った。







 それから、困ると先輩に泣きつく癖がついた。

 別に先輩は助けてくれない。

 いつも話を聞いて、不敵に笑うだけだ。


「海野なら、大丈夫」


 その言葉と笑みだけで、僕はやる気を出すと知っているようだ。

 その通りなんですけどね。



 その不思議な現象の方が、オーパーツよりも僕にとっては長年の謎だ。

 いつか、その謎が解ける日がくるのだろうか。





「せめて一緒にメール返信だけでも。隣の机貸しますから」

「…1日だけ。ただし、海野が1日コーヒー淹れてくれるなら」

「本当ですか?もちろんです」


 先輩が助けてくれる。

 どうして急に?

 謎は深まるばかりだ。






〈補足〉

彫漆(ちょうしつ):漆を何十回も塗り重ねたものを彫り、立体感のある模様を作り出す技法。

中国の唐時代(約1,200年前)に始まったとされる。もちろん、日本の縄文遺跡から発見はされていない。



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― 新着の感想 ―
[良い点] いかん……先輩が好きすぎる!! しかも、おかやすさまの感想によって妄想がっ!?(*´艸`*) これは美味しい。
[一言] 先輩後輩おいしいですね。じゅるり。 神木先輩なら「なんとか、なるなる」にやり。 それだけで、心強いですね。 うちの榊先輩と気が合いそうです! もしや、ふふふ。
[良い点] 不敵な笑みの裏側で…… 「はわわわ、今日も海野が頑張ってる、はぁ、必死な顔、かわいいよぉ♪」 ……とかなってるのかなあ、と勝手に妄想しましたw
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