8/60
⑧高台へ
翌日、柴田たちはレンタカーを借りて、昨日見た高台に向かった。橋から回り込むと、未舗装ながら道があり車を進め、遠目に要塞跡が見える所まで近づけられた。そこからも、人が歩ける程の道がある。草木が刈り払われた跡があり、人の出入りが認められる。
「誰かが来ているんだね」
「そのようね」
奥に向かう。道の脇には、住居らしき建物の並びが雑木の中で朽ち果てていた。それから、河を望む最も奥に二階建ての建物があった。それはコンクリートではなく石、それも当時は真っ白であったろうと朽ちた石の欠片が示していた。
二階には、南国らしいテラスが張りだし、社交場となっていたようだ。
サッコが部屋のすみに転がる割れたビンを拾い上げた。
「確かに、ここにはアメリカ人がいたようだ」
バーボンのラベルを指して言う。
建物の奥は中通路を挟んで、部屋が並ぶ、扉はなくなり中は崩れた壁や天井の瓦礫で埋まっていた。
「手掛かりなど、見つけようがないな」
「どこから、手を付ける」
サッコが両手を拡げる。
「帰って考えよう」