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60 サモの畑で
柴田を認め、サモは作付け作業をしていた女を手招き、柴田に駆け寄る。
シバタ、いつ来た」
サモが言った。
「一週間位、前」
柴田が応える。
遅れて並ぶ女をさして、サモが言う。
「私のお嫁さん」
女は、はにかみながら小さく頭を下げた。
「シバタ、どうして来た?」
シバタは宝探しとも言えず、「何となく」と答えた。
「パームかい」と聞くと、サモは「そうだよ」と答えた。
「祖父さんの宝探しはどうしたんだい」
「考えない。結婚した」
「そうか」と、柴田は笑顔を返した。
「元気そうで、何よりだ」
サモは「はい」と応える
親に促されて、日本に来たサモ。爺ちゃん話は聞いているが、嫁さんをもらえば、夢物語である。国広報の情報も知らないだろう。
サモは家族と暮らす事に、一生懸命なのだ。日本で大金と云える額を手にして、パームを育てるヘクタールの土地を手にした。多分、地主となったのであれば、祖父の言葉は戯言であって、記憶の隅になるだろう。
「上手く、いっているようだね」
柴田がサモに言う。
「お嫁さんも貰った」サモは嬉しそうに言う。
「お嫁さんを大切に。また、ベトナム来たら来るよ」




