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⑤10月
⑤10月
サモがベトナムに帰る月が来た。サモから柴田には、よくメールが来る。
サモは、まだ若いが技能実習とは名ばかりで、日本人の成り手のない仕事だと気付いたようだ。来日した頃はSNSに、自慢気に自分の職を載せ日本人の彼女ができると思っていた。実状を知るにつれ、収入だけが目的に収斂している。仕送りで両親は農地を広げ、車も買っている。帰国(実習満了)に際して支払われる、60万円のインセンティブを楽しみにしている。少なくとも、二年は遊んで暮らせる。
柴田は日本の実情を知らぬ訳はない。柴田の会社でも、海外実習生を調べた事がある。
結論は運営会社を単なる営利企業と判断した。受け入れれば月々、その会社に支払う金銭が生じ、その他、いろいろな縛りがあった。派遣会社とそう大差ない。ただ、成り手がいない職種のために、国が推進しただけで、国が運営している訳ではない。
ただ、サモのように収入が目当てになっていく。