36 密林を行く
サッコを空港に迎えた柴田、タクシーで屋台に向かう。
「ミキに聞いたかい?」
柴田がサッコに聞く。
「うん、メールが送られてきた。何となくだが、わかるよ」
「その寺に、明日行く。千田のおやじも一緒に」
「そうなるよね」
屋台に着く。
千田が、片言のベトナム語で客寄せの口上をあげていた。
「嫁さんは?」
柴田が聞くと、
「体調が悪いと言いやがった」
「店は」
「若い衆」
「明日は、大丈夫かな」
「閉めたっていい」
柴田とサッコは、ホテルに戻った。
「明日、ミキの言う寺に行く。今も在るのか無いのか分からないが、行ってみよう」
「一日で分かるのかい」
「インターネットのマップを久々に一晩中視たよ。ソマリ以来だ。それらしきものを見つけた」
柴田は印刷した地形写真をサッコに見せた。
カンボジア国境近く、密林の中に開けた地があり、建築物が認められた。車が通れそうな道はなく、数キロは隔たっているが、線のように木のない筋が、そこからひかれていた。
「たぶん、数キロは歩く事になるだろうね。遠足気分で」
写真を見ていたサッコも頷いた。
「食べ物と水は必須だね」
「千田に頼んである。それと拳銃も」
「そうだね」
サッコは驚きもせずに応えた。
翌日、柴田とサッコは朝早く、屋台に行くと千田ががベトナム人の若者に大声で叫んでいた。
「今日の儲け、お前らのものだ。ただし、ごまかしたら、ただではすまねぇ。かあちゃんが付いているからな」
千田の嫁が、若者に話している。若者は、喜んでいるのか、大きく頷いている。
様子を見ていたサッコが千田に言う。
「そろそろ大丈夫?」
「おう、大丈夫だ。行くぞ」
千田は、嫁に「頼む」と言うと、歩き始めた柴田とサッコは後ろに連なる。
ごちゃごちゃした、屋台の並びの外れに白いランドクルーザーが止まっていた。運転席から、若いベトナム人が降りて、頭を下げた。真新しい車を、人々が囲んでいた。
三人は車に乗り込む。
柴田は、運転席の若者に目的地を印した地図を渡した。
「分かるか」
若者は「分かります」と日本語で応えた。200キロ近くあるだろう道程である。
「焼きそばとたこ焼きはいっぱいあるからよ」
助手席に座る千田が笑いながら言う。
「スタート。OK」
言う千田に後ろのせきから柴田は頷いた。
スタートして、10分程たった頃、
「柴田さん、俺の椅子の下の箱、開けてみて下さいや」
柴田は、頷き座席の下から箱を引出し蓋を開けた。サッコも覗きこむ。L字の黒い塊が二つ並んでいた。
柴田はそれを確認して「どうも」と言い、元に戻した。




